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松本人志さん収入途絶、文春が数億円の損害賠償の可能性も…名誉棄損成立の条件

文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
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吉本興業のHPより

 先月発売の「週刊文春」(文藝春秋)によって女性への問題行為が報じられていたタレントの松本人志さん(ダウンタウン)は8日、芸能活動休止を発表した。松本さんは「文春」発行元との裁判に注力する意向を示しており、判決が確定するまでには数年を要する可能性があるが、もし裁判で報道内容が事実であると認められなかった場合、松本さんは本来であれば得られていた収入を「文春」報道が原因で得られなかったとして、発行元に億単位の金額の「休業補償」を請求できるのではないかという見方が一部で広まっている。果たしてそのような「補償」を発行元から得られる可能性はあるのか。専門家の見解も交えて追ってみたい。

 第一報は、先月27日発売の「文春」記事だった。記事内では松本さんから加害を受けたという女性の証言が紹介されたが、所属する吉本興業は同日、「当該事実は一切なく、タレントの社会的評価を著しく低下させ、名誉を毀損するものです」とするコメントを発表。松本さんも自身のX(旧Twitter)上で、

<いつ辞めても良いと思ってたんやけど…やる気が出てきたなぁ〜>(12月28日)

<事実無根なので闘いまーす。それも含めワイドナショー出まーす>(1月8日)

などと投稿し、報道を否定。松本さんを起用しているテレビ各局はニュース番組で、吉本興業が報道を否定したというかたちで一斉に報じていた。

 松本さんがレギュラー出演する番組は、『人志松本の酒のツマミになる話』『まつもtoなかい』(ともにフジテレビ系)、『クレイジージャーニー』『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』『ダウンタウンDX』(ともに日本テレビ系)、『探偵!ナイトスクープ』(テレビ朝日系/ABC制作)の計7本。このほか、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)、『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)、『キングオブコント』(TBS系)などの特番に出演するほか、くら寿司のテレビCMにも出演。これらのレギュラー番組は「文春」報道後も予定どおり放送されていたが、今月4日放送の『ダウンタウンDX』では提供クレジットが表示されず、一部CMがACジャパンのものに差し替わるなど影響も出始めていた。

「裁判に注力したい旨の申入れがございました」

 そんななか、8日に吉本興業は、以下内容の文書で松本さんの芸能活動休止を発表した。

<当社及び松本だけでなく、お取引先を含めた関係者の皆様に対しても問い合わせ等が相次ぎ、松本のテレビ出演を巡る記事が度々掲載されるなどしておりますところ、このたび、松本から、まずは様々な記事と対峙して、裁判に注力したい旨の申入れがございました>

<そして、このまま芸能活動を継続すれば、さらに多くの関係者や共演者の皆様に多大なご迷惑とご負担をお掛けすることになる一方で、裁判との同時並行ではこれまでのようにお笑いに全力を傾けることができなくなってしまうため、当面の間活動を休止したい旨の強い意志が示されたことから、 当社としましても、様々な事情を考慮し、本人の意志を尊重することといたしました>

 テレビ局関係者はいう。

「番組のスポンサー企業としては、報道内容が事実であるかどうかにかかわらず、女性への加害が報じられている人物がメインキャストとして出演する番組に提供社として名を連ねることは難しく、テレビ局は対応を求められる。逆にいえば、松本さんひとりが降板すればテレビ局もスポンサー企業も番組を継続することができる。特に松本さんが出演する番組はゴールデンタイムのものが大半で、一つの番組にかかわる利害関係者の数は多い。要は『自分がいると大勢の人に迷惑がかかる』との判断でひとまず活動を休止するという選択をしたのだろう」

裁判の行方

 松本さんが「文春」発行元に対して、名誉棄損だとして損害賠償を求めて裁判を起こし和解などが成立しなかった場合、判決が確定するまでには数年を要する可能性がある。もし仮に松本さんの訴えが裁判で認められた場合、松本さんは事実無根の報道のせいで活動休止をやむなくされ、その間に得られたはずの収入を得られなかったということになる。松本さんが「休業補償」のような意味合いで、その億単位に上るとみられる金額を発行元に請求することはできるのだろうか。一般的に休業補償とは、労働者が業務上の負傷や疾病などにより休業した場合に勤務先の企業から支給されるものだが、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「ポイントは芸能活動休止を“余儀なくされた”かどうかです。もし、名誉毀損が認められた場合、この後、損害との因果関係を判断するのですが、損害は“風が吹けば桶屋が儲かる”的に認められるものではなく、相当な範囲の因果関係までしか認められません。テレビ局など、松本さんに出演を依頼しているほうから『出演お断り』とされたのであれば、『記事によって出演料をもらえなくなった』という関係が成り立ちます。しかし、『騒ぎが収まるまで出演をやめる』という程度であれば、自らの判断となりますので因果関係は認められにくくなります。要するに、他事的な理由により、芸能活動休止を“余儀なくされた”かどうかが重要なわけです。

 名誉毀損が認められるかどうかですが、報道されている『LINE履歴』だけでは難しいでしょう。被害者の具体的な証言が必要となりますので、おそらく『証人尋問』と、その証言の信用性が“勝負”になると思います。裁判所が証言の信用性を認め、かつ、松本さんが芸能活動休止を“余儀なくされた”と判断した場合、億単位の損害賠償も認められることでしょう」

 松本さんの活動休止発表を受け「文春」編集部は「一連の報道には十分に自信を持っており、現在も小誌には情報提供が多数寄せられています。今後も報じるべき事柄があれば、慎重に取材を尽くしたうえで報じてまいります」とのコメントを発表している。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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