
LIXILグループは2019年10月31日、ガバナンス(企業統治)に関わる問題の検証結果を公表した。瀬戸欣哉氏が最高経営責任者(CEO)を解任された件について、「創業家の潮田洋一郎氏に権力が集中し忖度する状況だった」と結論づけた。再発防止のため、ガバナンス委員会を常設化する。
混乱が始まったのは18年10月。瀬戸氏がCEOを解任され、潮田氏が後任に就いた。しかし投資家から批判が噴出し、潮田氏は19年4月に退任を表明。19年6月25日の株主総会で会社と対立した瀬戸氏が勝利。再び経営の先頭の立つことになった。
CEOに復帰した瀬戸氏は、直ちにガバナンス委員会を設置。あずさ監査法人元副理事長の鈴木輝夫・社外取締役を委員長とし、社外取締役4人、社内取締役1人で構成した。焦点となったのは、19年4月9日に会社が公表した、瀬戸氏解任の経緯に関する「調査報告書」へのガバナンス委員会の評価だった。
瀬戸氏は、自分が解任された経緯に関する調査報告書の説明に対して、「公平性を欠くもの」と繰り返し主張してきた。復帰後、ガバナンス委員会をつくり、解任の経緯の再検証を求めたのは、瀬戸氏の強い不満の表れだった。ガバナンス委員会は、第三者による調査報告書の内容については「不合理な点はない」と結論づけた。ただ、委員長の鈴木氏は、「ガバナンスの体制は整っているが、運用自体が独立性を保たれなければ、客観性や公平性が欠如する」と説明した。
LIXILグループは社外取締役中心の指名委員会が経営トップを選ぶ制度をいち早く取り入れ、かつては「ガバナンスの優等生」とも呼ばれた。だが、仏つくって魂入れず。創業家の潮田氏の顔色を伺う「忖度」が生じる状況だったということが露わになった。日本企業に共通するガバナンスの限界だろう。
取締役を選任する指名委員会は瀬戸氏側が過半数を占める
市場関係者が注目しているのが、人事をめぐる混乱が収束した後、ガバナンスが機能するかどうかだ。8カ月間の混乱による傷痕は深い。人材の流出やブランドイメージの毀損が深刻な上に、経営陣そのものの間に横たわる溝をどう克服するか、という困難な課題を抱えている。「ノーサイド」と、CEOに復帰した瀬戸氏は総会後の記者会見で融和を呼びかけた。だが、そう簡単に、“シャンシャン”と手打ちとはいきそうにはない。
瀬戸氏が経営権を奪い返し、CEOに返り咲いたとはいえ、賛成率52.71%。薄氷を踏む思いの勝利。圧勝したわけではなく権力基盤は脆弱だ。総会では瀬戸氏ら株主側が提案した取締役候補8人全員が選ばれ、会社側が提案した6人が選任された。瀬戸氏は「14人の取締役会では質の高い議論ができるわけがない。来年以降、会社の提案として取締役を5~9人に絞らなければならない」(19年6月28日付日本経済新聞)と述べている。