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LIXIL、創業家一派を完全放逐へ…抗争再燃の火種、“持ち株会社体制解消”の荒業

文=編集部
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LIXILグループの瀬戸欣哉CEO(写真:日刊現代/アフロ)

 LIXILグループは持ち株会社体制の解消に向けて動きだした。完全子会社である事業会社LIXILを合併する計画だ。今後プロジェクトチームを設置し、合併の方法や完了時期、合併後の体制について検討を進める。2001年、INAXトステム・ホールディングスとして持ち株会社制を導入。11年に住設建材会社、トステム、INAX、サンウエーブ工業、新日軽、東洋エクステリアの5社が経営統合しLIXILが発足した後も、持ち株会社制度を継続してきた。現在はLIXILの取締役会での決議後、持ち株会社であるLIXILグループでも決議することがあり、合併によって1社で済むようにする。

 14人のLIXILグループの取締役のうち9人が社外取締役だが、LIXILは10人の取締役全員が社内。総務や人事、経理の面でも両社は重複部分があり、合併で経営体制を簡素化し経営の透明性を高める。運営コストを削減し、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を図るというのが謳い文句だ。

14人の取締役を5~9人に減らす

 LIXILグループで18年秋以降、トップ人事をめぐり混乱が起きた。瀬戸欣哉氏がCEOを解任され、創業家出身の潮田洋一郎会長が後任のCEOに就いた。投資家から批判が噴き出し、潮田氏は19年4月に会長退任を表明。19年6月の株主総会で瀬戸氏が社長兼CEOに返り咲いた。

 19年の株主総会の最大の争点は、潮田会長兼CEOの“院政”の是非だったといっていい。当初は瀬戸氏側が劣勢と見られていたが、国内の機関投資家の一部が株主側の役員候補だった瀬戸氏に賛成票を投じ、かろうじて過半数の支持を得た。会社側の候補への支持が広がらなかったのは、潮田氏の影響力が残る指名委員会が選んだ候補者が信用されなかったからだろう。潮田氏が院政をしくための都合の良い布陣と見なされた。

 瀬戸氏は総会後、「今日からワンリクシル、ノーサイドで進めていきたい」と語った。しかし、抗争が残した爪痕は深い。そう簡単に“シャンシャン”手打ちとはいきそうにない。瀬戸氏は経営権を奪い返しCEOに返り咲いたとはいえ、薄氷を踏む思いの勝利だった。権力基盤は脆弱だ。14人の取締役のうち、瀬戸氏と対立した「会社側」が推した取締役が6人入っている。

 瀬戸氏は「14人の取締役会で質の高い議論ができるわけがない。来年(20年)以降、会社の提案として取締役を5~9人に絞らなければいけない」と、全国紙のインタビューで述べている。現在14人の経営陣を5~9人に絞るとなると、波風が立つのは必至。抗争の新しい“火種”として残る。

 今回、持ち株会社体制を解消し、事業会社LIXILとの合併計画を打ち出した狙いははっきりしている。瀬戸体制を強固にし、潮田派を完全に一掃することを企図している。潮田氏は現在も3%程度の株式を保有する大株主と見られるが、周囲には「学究と趣味に生きたい」と話しているそうだ。しかし、潮田氏がこのまま隠居すると見る向きは皆無。そう簡単に引き下がらないだろう。持ち株会社体制の解消、事業会社との合併をめぐって、一波乱起きるかもしれない。

消費増税は駆け込み需要より反動のほうが大きかった

 LIXILグループの19年4~12月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益は前年同期比1%増の1兆3964億円、営業利益に相当する事業利益は39%増の517億円、純利益が14.4倍の306億円だった。ドアや窓の建材事業やトイレなどの水回りは国内向けが好調で、米国やアジアの低迷を補った。

 それでも、国内事業では消費増税の影響が出た。会見した瀬戸CEOは「駆け込み需要より反動のほうが大きかった」と分析した。消費増税後の10~12月期3カ月の国内事業は、売上収益が前年同期比4%減の3417億円、事業利益は20%減の226億円だった。20年3月期通期の業績予想は据え置いた。先行きについては新型肺炎など不透明要素が多いためという。売上収益は前期比1%増の1兆8500億円、最終損益は150億円の黒字(19年3月期は521億円の赤字)を見込む。

 瀬戸氏追い落としの口実を与えないためにも、大幅な黒字転換を成し遂げなければならない。6月の定時株主総会に向け、瀬戸CEOと潮田前CEOの最終決戦が始まろうとしている。

(文=編集部)

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