「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは、御難続きだ。韓国での不買運動の次は中国の肺炎だ。新型コロナウイルスによる肺炎の感染が中国全土に広がっていることを受け、感染者が多い武漢市のある中国湖北省を中心に約370店を休業した(2月7日現在)。中国のユニクロ店舗数は2019年12月時点で750店。休業対象の店舗は全体のほぼ半数に相当する。営業再開の見通しは立っていない。
韓国での不買運動が直撃、今期業績を下方修正
ファーストリテイリングは韓国での不買運動の直撃を受け、20年8月期の連結業績予想(国際会計基準)を下方修正した。売上高にあたる売上収益は、従来見通しに比べ600億円減の2兆3400億円、営業利益は同300億円減の2450億円、純利益は同100億円減の1650億円にそれぞれ下方修正した。4期ぶりに営業減益となる。
1月9日、日系ブランドの不買運動が続く韓国と、デモが長期化する香港での業績悪化が下方修正の理由だと明らかにした。新型肺炎が国内で表面化する以前のことだ。同時に発表した19年9~11月期の連結決算は、売上収益は前年同期比3%減の6234億円、営業利益は同12%減の916億円、四半期利益は同3%減の709億円だった。
同期間の海外ユニクロ事業の営業利益は同28%減の378億円と低迷した。足を引っ張ったのが店舗数で海外全体の1割強を占める韓国事業だった。ユニクロは韓国ロッテグループと組み05年に進出。19年11月末時点で186店舗を運営する。18年8月期の売上収益は1400億円と海外事業を牽引してきた。
日本政府によると、半導体材料の輸出管理の厳格化で日本製品の不買運動が始まった。日本製品の代表的ブランドであるユニクロは不買運動のターゲットになった。19年7月には、単月で売上高が7割減ったと韓国メディアが報じ、8月から10月にかけてAKプラザ九老本店、月渓店、鍾路3街店が次々と閉店に追い込まれた。
柳井正会長兼社長は「日経ビジネス」(日経BP社/19年10月14日号)で、「韓国の人が反日なのはわかる」「韓国にみんなが喧嘩腰なのも異常」と“韓国擁護”とも受け取れる発言をした。11月には韓国のユニクロでヒートテックの10万着の無料贈呈を行うなど関係の改善に努めてきたが、韓国での不買運動は収まる気配がない。
韓国事業の19年9~11月期の既存店売上は大幅に減少し、営業赤字に陥った。決算発表の席上、岡﨑健最高財務責任者(CFO)は「非常に厳しい環境にある」との見解を示した。
新型肺炎による中国での店舗の閉鎖
新型肺炎の影響による中国での店舗の閉鎖が追い打ちをかける。成長市場と位置付ける中国本土と香港、台湾の「グレーターチャイナ」の売上高は約4400億円。韓国事業の約1400億円よりはるかに大きい。
中国でのユニクロの店舗数は750店。「ZARA」を展開するアパレル最大手のインディテックスの約580店を上回る。19年8月期の中華圏のユニクロ事業の売上高営業利益率は17.7%と国内ユニクロ(11.7%)をしのぐ。有価証券報告書に「中国No.1アパレルブランド」と記すことからも中国事業の自信のほどがうかがえる。
それだけに新型肺炎は気がかりだ。中国でのユニクロ店舗の大量休業により、20年8月期の業績予想を再度、下方修正することを余儀なくされそうだ。
暖冬で国内ユニクロも変調
韓国での不買運動や中国の新型肺炎は、あくまでも外部要因。落ち着けば元に戻る。問題は内部要因だ。足元の国内ユニクロ事業が変調をきたしている。19年9~11月期の国内ユニクロ事業の売上収益は前年同期比5%減の2330億円、営業利益は2%増の385億円。売上収益、営業利益とも会社の期初計画を下回った。
ユニクロの20年1月の国内既存店売上高は前年同月に比べ7.9%減った。前年実績を下回るのは19年9月以降、5カ月連続。客数も同5.1%減と3カ月連続、客単価は2.9%減で7カ月連続でマイナスとなった。昨年秋から気温の高い日が続いたため、ダウンジャケットなど比較的単価の高い防寒衣料が伸び悩んだ。
ユニクロの主力製品は防寒や保温といった機能性が売り。ほかのアパレル企業に比べ流行の影響を受けにくい半面、ヒートテックのような大ヒットが出ないかぎり気温の変化に売り上げが大きく左右される。この弱点が露呈したかたちだ。地球温暖化は一段と進む。異常気象が日常のものになる。今後、暖冬に対応できる商品の開発が求められる。
海外のユニクロ事業に続き、国内のユニクロ事業も落ち込みは避けられない。韓国の不買、中国の新型肺炎、国内の暖冬のトリプルパンチに見舞われている。20年8月期の連結決算の再度の下方修正がどの程度になるのかに、市場の関心が集まる。
(文=編集部)