
中国の今年1~3月期(第1四半期)の国内総生産(GDP)は、前年同期比でマイナス6.8%となった。前の3カ月を12.8ポイント下回る。四半期ごとの統計が公表されている1992年以降、初めてマイナスに陥った。この原因は新型コロナウイルスの感染拡大で湖北省武漢市が都市封鎖され、北京、上海、深センなどの大都市圏も事実上の都市封鎖措置が敷かれたためだ。
欧米や日本の統計手法と同じ「前期比」では、マイナス9.8%。これが1年続いた場合に換算した「年率」では、マイナス30%を超える水準になる。
中国はこれまで、数々の危機に直面してもプラス成長を維持。2003年に「重症急性呼吸器症候群(SARS)」が拡大した際、成長率が最も落ち込んだ第2四半期でもプラス9.1%だった。また、08年のリーマンショックのあとは、09年第1四半期にプラス6.4%まで落ち込んだあと、10年にかけてV字回復を果たしている。四半期のデータがない1991年以前でも、通年の成長率がマイナスになったのは76年までさかのぼる。この年は中国の社会・経済に大混乱をもたらした文化大革命の最後の年だったことから考えても、今回のマイナス成長は極めて異例だ。
中国大陸の経済的影響を強く受けている香港も深刻だ。ポール・チャン財務長官は4月下旬、立法評議会(議会に相当)で、香港特別行政区政府の予算の最新の進捗状況を報告し、「香港経済は新型コロナウイルス大流行による深刻で持続的な影響のために、2月の予想よりもさらに悪化し、4〜7%の間で縮小する可能性がある」ことを明らかにした。
チャン氏は今年2月、今年のGDPは前年比1.5%の下落か、成長しても0.5%程度だと述べていたが、今回の報告で予想を修正した。チャン氏は「第1四半期の香港の景気後退の大きさは、2008年の世界経済の停滞、または1999年のアジア金融危機よりも悪化する可能性がある」と指摘している。
「大恐慌以来の経済悪化」の危険
一方、日本はどうか。日本経済研究センターが民間エコノミストの予測を集計したESPフォーキャスト調査(回答期間:4月6~8日)によると、コロナ禍以前の元の水準に戻るまでの期間は2年という。
日本政府は4月の月例経済報告で景気の基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある」と分析。「悪化」の表現が使われたのはリーマンショックで世界経済が停滞していた09年5月以来、約11年ぶりとなる。