
かねてより話題となっていたアップルの新型iPhone SE(第2世代)が発売され、アップルファンはもちろんのこと、その低価格・高性能な仕上がりに、Android系スマホユーザーからも高い注目が集まっている。
そこで今回は、2016年発売の第1世代からおよそ4年ぶりに登場した新型iPhone SEのスペックや、今SEの新型を出したアップルのビジネス戦略に関して、ITジャーナリストの山口健太氏に話を聞いた。
シェア率で大敗…スマホ業界におけるアップルの現在地
そもそも現在のスマホ業界において、アップルはどのような立ち位置なのだろうか。
「現在のスマホシェアはサムスン、ファーウェイ、アップルが世界トップ3。その下に中国のOPPO、シャオミがいます。台数ベースでは、アップルのシェアは15%弱に過ぎません。サムスンやファーウェイは300ドルを切るような格安スマホを多くさばいているのが大きいです。
ですが、利益ベースの世界シェアではアップルが圧倒的。全体の60~70%を占めています。アップル製品はハイエンド機種ばかりで、個々の端末の利益率がずば抜けて高いからです」(山口氏)
台数ベースのシェアで見劣りしても、経営面ではそれほどアップルはダメージを受けていないようだ。また、「アップルには根強いファンがいることも強み」と山口氏は続ける。
「OSの違いに関しても、AndroidではスマホメーカーがグーグルのOSを苦労してチューニングしているのに対し、アップルのiOSは最初からiPhoneに合わせてつくられています。ゆえに使い勝手が良くスムーズ。これこそ、iPhoneファンを生んだ大きな一因ですし、有料アプリや利益率の高いLightning用アクセサリなどの購買にもつなげられます。アップルがいまだ利益ベースで見たときに市場の60%以上を確保している要因は、こうしたブランド戦略が大きいでしょうね」(山口氏)
最高コスパの新型iPhone SE、そのスペックと発売意図
そんなアップルが発売した新型iPhone SE、どういった端末なのだろうか。
「第1世代の初代SEはiPhone 5の設計を流用していたのに対して、今回の第2世代の新型SEはiPhone 8を基本設計としています。最近のiPhoneは画面の大型化が進んでいる中で、新型SEは4.7インチと小さいのですが、普及しているモデルの設計を流用してコストを下げるという手法は初代SEと共通です」(山口氏)
そして、最大の特徴は「圧倒的なプロセッサ(CPU)のパワー」だという。
「新型SEは、ハイエンドのiPhone 11 Proとまったく同じプロセッサを使用しています。これは同価格帯の格安スマホではあり得ないやり方です。一般のスマホメーカーはクアルコムなどの半導体メーカーからプロセッサを買い付けるため、格安スマホには必然的に低価格のプロセッサしか載せられません。しかし、アップルは自社でプロセッサを開発しているので、低価格の新型SEに最新プロセッサを搭載するという離れ業ができるのです」(山口氏)