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iPhone、“ダサくなった”背景に有力デザイナー大量退社か…アップルの岐路

文=A4studio
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アップル「iPhone11」販売開始 中国・上海(写真:Imaginechina/アフロ)

「iPhone」や「iPad」「MacBook」を筆頭に大勢のユーザーを抱えるアップル製品。今年9月に発売された最新機種「iPhone 11 Pro」には3つのカメラが搭載され(同時発売の標準モデル「iPhone 11」には2つ)、スマートフォンでありながらも一眼レフ並みの写真・動画撮影を可能とするなど、驚異的な進化を遂げている。

 しかし「iPhone 11 Pro」のデザインについては、「ダサい」と一刀両断する意見も決して少なくない。たとえば、3つのカメラは本体背面の左上に設けられた正方形の土台に、黒い丸(レンズ)がトライアングル状に並べられている。これを国内外のネットユーザーたちは「タピオカカメラ」と皮肉ったのをはじめとして、3口コンロや電気シェーバーに見立てるなど、まるで大喜利を楽しんでいるかのようだったのである。

 アップル製品がここまで多くのファンを獲得してきた背景には、性能面はもちろん、そのスタイリッシュなデザインが大いに寄与していたことに疑いの余地はないだろう。しかし、アップルファンの間では知られている通り、「iPhone 11(Pro)」の開発に、これまで「iPhone」シリーズのデザインを手がけてきたジョナサン・アイブは携わっていない。アップルのCDO(最高デザイン責任者)だった彼は今年退社し、独立したからである。

 アップル創業者の故スティーブ・ジョブズに初代「iMac」(1998年発売)のデザインを任せられたアイブは、その後もジョブズの右腕として活躍。人々がアップル製品と聞いて連想する簡素で美しいデザインは、いずれもアイブの“作品”と呼ぶべきものだった。

「アイブが退社したせいでアップル製品の魅力が落ちた」とすぐに結びつけるのは短絡的だろうが、米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、アップルではアイブ以外にもベテランデザイナーたちの退社が相次いでいるとのこと。果たしてアップルは今、どのような状況にあるのだろうか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に話を聞いた。

むしろアップル側が同一スタッフへの依存を恐れているのか

「WSJでは、こうしたデザイナーたちの退社についてアップルの“政権交代”という表現をしていましたが、私は単純に“世代交代”が起きているのではないかと考えています。かつてガラケーがスマートフォンに置き換わったように、世の中は現在、スマートフォンからウェアラブル端末へと移行しつつある過渡期です。2007年に初代『iPhone』がリリースされてからもう10年以上がたつわけですが、アップルは今のところ『アップル Watch』しか、ウェアラブル端末の形態を提案できていないといえるでしょう。

 もちろん、形やユーザーインターフェースを含めたデザインの使い勝手のよさ、格好よさはアップル製品のコアコンピタンスですから、そこを蔑ろにするわけにはいきません。デザインチームの顔ぶれを変え、発想を変え、アウトプットを変え……というスタンスでないと、次の革新的な製品を生み出すことはできない。ジョブズの薫陶を受けている、現最高経営責任者(CEO)のティム・クック以下の経営陣には、そのような思いがあるはずです。

 だからこそ近年のアップルは、スポーツ用品大手である『NIKE』のような異業種からの転入者をも呼び込んで世代交代を図り、組織に新たなダイナミズムをもたらそうとしているのではないでしょうか」(井上氏)

 アイブたちデザイナー陣の退社はアップルの求心力の低下を示すのではなく、経営陣にとっても想定内であり、克服するべき課題だということか。

 そして井上氏は、「アップルは産みの苦しみを味わっている最中なのでしょう」と指摘した。

「これはアップルに限らず、グーグルやマイクロソフトにも当てはまる話だと思うのですが、『iPhone』をはじめとする今のスマートフォンは、ウェアラブル端末という次のステージになかなか進めないがために、仕方なくアップデートを繰り返している“おためごかしの残骸”でしかありません。新製品を開発しても、それはユーザーのためではなく、あくまでも会社の利益のためにしかなっていないということです。

 最近は中韓メーカーが画面の曲がるスマートフォンなどを発売していますが、それも所詮は『iPhone』の形態から派生したもの。製品の見た目のみならず、コンセプトからユーザーインターフェースに至るまでアップルのマネだけをしてきた中韓メーカーには、本質的に新しい製品なんてまだまだ開発できるはずがないでしょう」(同)

やがて“デザイン”の力が、技術の限界を乗り越えていく?

 熱心なファンにとっては、アップル製品を携帯することがファッションの一部になっているだろうし、冒頭で触れた「iPhone 11(Pro)」の例のように、デザインをめぐって大きな反響が巻き起こるのは自然だろう。

 だが井上氏は、デザインというもののあり方について問題提起する。

「スマートフォンのような通信端末は、もはや政治や経済といった生活のあらゆる場面に入り込んでいます。許容範囲内での遅延や不具合はあったとしても、基本的には24時間365日必ず繋がっていなければ意味がないものです。

 通信端末が本当に重要な社会インフラであるなら、世間で話題になるのは致命的な支障が発生したときだけでよく、そのデザインにあれこれと口を出すのは、本来おかしい話だといえるのではないでしょうか。水道の蛇口や電気のコンセントに、人はいちいちワクワク・ドキドキなんてしませんよね」(同)

 とはいえ将来的には、通信端末の軽量化や熱処理といった諸問題を、技術だけでなく、デザインの力によってカバーしなければならないケースも出てきそうだ。

 アップルを独立したアイブは「LoveFrom」というデザイン会社を設立し、その顧客第1号はアップルになるともいわれている。世代交代の進むアップルと、長年アップルを支えてきたデザイナーOBたちの関係はどうなっていくのか。やがてウェアラブル端末が主流になった未来で、アップルはどのような立ち位置にいるのか。今までアップルやアイブが打ち出してきたデザインの真価が問われるのは、これからなのかもしれない。
(文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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