7月5日の東京株式市場でソニー株が5日続伸した。一時、前日比81円高の5976円まで上昇し、年初来高値を更新した。終値は55円高の5950円で、売買代金は前日比15%増えた。週明けの8日は一時、6070円と2018年12月13日以来の6000円台を奪回した。
米ヘッジファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)が5日、日本経済新聞の記事内で「株価が下がれば、買い増すかもしれない」と言及した。これを受けて、サード・ポイントの買い増しを期待した買い注文が入ったようだ。
これまでもローブ氏は日経新聞の紙面を上手に利用してきたが、今回も同様だ。
サード・ポイントは6月13日、投資家向けの書簡を公開。「ソニー株を15億ドル(約1600億円)分保有している」とし、ソニーに半導体部門の分離・独立(スピンオフ)を要求した。
半導体の分離のほか、金融子会社のソニーフィナンシャルホールディングスや、製薬会社の営業支援を手がけるエムスリー、医療機器のオリンパス、ニューヨーク証券取引所とNASDAQに上場している音楽配信サービスのスポティファィ・テクノロジーの保有株の売却を検討するよう求めた。
ローブ氏は日経新聞の取材で、半導体事業の分離・独立について「検討や分析に6カ月以上や1年もかけるべきではない」と話した。
「半導体(スマートフォン向け画像センサー)の売り先は中国・華為技術(ファーウェイ)、米アップル、韓国サムスン電子だ」と指摘、ソニーが説明する半導体とエレクトロニクスの相乗効果は「誇張されている」と批判した。
ローブ氏とソニーの吉田憲一郎社長兼CEOは6月に米国で会談。ローブ氏は「(吉田氏は)オープンマインドで話を聞いてくれた」と述べたという。
半導体と金融は連結営業利益の34%を稼ぐ
ソニーの19年3月期の連結決算(米国会計基準)は、売上高が前期比1%増の8兆6657億円、営業利益は同22%増の8942億円。2年連続で営業最高益を更新した。
ソニーの事業は大きく8つに分かれる。従来はテレビ、カメラなどでエレクトロニクスが中心だったが、近年はゲームや音楽、半導体などが収益の柱になった。
サード・ポイントが分離・独立を求める半導体事業の売上高は同3%増の8793億円、営業利益は同12%減の1439億円。連結売り上げの10%、連結営業利益の16%を占める。金融事業(金融ビジネス)収入は同4%増の1兆2825億円、営業利益は同10%減の1615億円。連結売り上げの15%、連結営業利益の18%を稼ぎ出している。合算すると売り上げの25%、営業利益の34%を稼ぎ出している半導体と金融を切り離せと、サード・ポイントは要求しているわけだ。