今月、米アップルは新型「iPhone」3機種を発売すると発表。日本の直営店などでの販売価格は「11」が7万4800円から、「11Pro」が10万6800円から、「11ProMax」が11万9800円から。なかでも「11」は、昨年発売された「XR」の価格(発売時)と比べて1万円下がることが話題を呼んでいる。
日本の家電量販店の実売データをまとめた「BCNランキング」(今年5月時点)によると、スマートフォン実売の1位はいまだ「iPhone 8」だが、6位にGoogleのAndroidスマホ「Pixel 3a」がランクイン。1位に「iPhone XR」がランクインしていないところを見ても、高騰を続けていたiPhoneブランドの人気の変化が見て取れる。
そこで今回は、スマホジャーナリストとして国内外のモバイル事情に精通する石川温氏のコメントを参考に、人気王者であるiPhoneと躍進を続けるPixelを、“日常使いで満足なライトユーザー”の目線で徹底比較した。ちなみに今回は、まだ発売前の「11Pro」「11ProMax」「11」は、比較の対象外とする。
廉価モデル同士でも、Pixel 3aのほうが約2万円安い
一口にiPhoneとPixelといっても、現在購入可能な機種は複数モデル存在する。そこで、まずはどのモデルで比較すべきかを石川氏に聞いた。
「比較的お手頃な価格帯で、機能的にも充実した最新機種というとiPhoneであれば『iPhone XR』、Pixelであれば『Pixel 3a』。iPhone XRはフラッグシップモデルだったiPhone Xの廉価モデルといったポジションの機種で、Pixel 3aは同じようにフラッグシップモデルのPixel 3の廉価モデルです。“日常使いで満足なライトユーザー”へのオススメとして考えると、この両モデルを比較するのが最適でしょう。
ストレージ容量は、iPhone XRは64GB、128GB、256GBの3種。ライトユーザーなら64GBあれば不自由はないでしょう。Pixel 3aは64GBモデルしかありませんが、Googleドライブといったクラウドサービスが充実しており、Pixelはそれらとの連携もスムーズなので、64GBというストレージ容量以上にゆったりと使える印象です。
そして肝心の価格ですが、iPhone XRの64GBモデルは6万4800円(税別)、Pixel 3aは4万8600円(税込)。Pixel 3aのほうがリーズナブルだという大きな価格差がありますが、この価格差がどれだけスペック差に出るかが、今回の比較のポイントとなってくるでしょう」(石川氏)
iPhone XR とPixel 3a、カテゴリーごとのスペック比較
まずはiPhoneのiOSとPixelのAndroid、OS(オペレーティングシステム)を比較。
「OSとはアプリやデバイスを起動させるための基本的なソフトウェアです。パソコンでいえばWindows OSとMac OSの違いですね。iPhoneが使用しているiOSは、iPhoneやiPadのためにアップルが独自に開発したもの。一方、Pixelが使用しているAndroidはグーグルが開発し、サムスン電子やソニーなどの数多くのメーカーも採用しています。以前はiOSのほうが直感的に使え、Androidがモッサリしているなんて言われることも多かったですが、それはiPhoneが起動の合間にアニメーションを挟むといったスムーズに感じるような技術に、OSもハードも自社製ゆえ長けていたからでしょう。実は、以前から実際の性能差は言うほどありませんでしたし、さらに最近はそうした差がほぼなくなっています」(同)
では、次にユーザーをサポートしてくれるAI機能をみてみよう。
「iPhoneにはSiri、PixelにはGoogle AssistantというAIがそれぞれ搭載されています。基本的な機能面ではほぼ遜色はないのですが、検索サイトであるグーグルが開発したGoogle Assistantのほうが、検索との連動は優れていると思います。一昔前だと直感的な語りかけ方や、他愛もない会話に対する満足度はSiriのほうが上と言われていましたが、近年はGoogle Assistantもそのあたりを改善してきています」(同)
ディスプレイの美しさに差はあるのだろうか。
「ディスプレイ面で言えば、iPhone XRが液晶なのに対し、Pixel 3aは有機ELを使用しているという違いがあります。一般的には有機ELのほうが美しく表現できると言われています。また、液晶はバックライトの上に細かなドットの集合体、さらに3原色を組み合わせたカラーフィルターを重ねて色を表現していますが、その重層構造ゆえに重量が増えてしまうもの。それに対し、有機ELはドットの集合体自体が発光する仕組みなので、色も強く出て、比較的軽量だというメリットがあります。
とはいえ、そこまで気になるほどの重量差があるわけではないですし、最近の液晶は充分にきれいな表現ができるようになっていますので、ライトユーザー目線で考えれば、ディスプレイ面でも大差はないでしょう」(同)
続いては、スマホ操作の要でもあるタッチパネルの感度・精度について。
「一昔前だと、Android系スマホのタッチパネルは、反応が遅くダメダメだったなんて声も多かったんです。けれど、ここ最近はそうした欠点も研究が重ねられたおかげで改善されており、現時点ではほぼ差がないと言っていいと思います。こうしたタッチパネルの快適さは、OSとハードの親和性による部分が大きく、iPhoneは当然OSもハードも自社製なのでスムーズでしたが、AndroidはOSとハードのメーカーが異なっているスマホが多く、一歩後れを取っている印象でした。ですが、先述した通りPixelもAndroidもグーグルが開発しており、そういう意味で条件はiPhoneと同じなので、差はないと言っていいですね」(同)
InstagramやFacebookなどのSNSユーザーにも不可欠な写真機能は、両者に差はあるのだろうか。
「iPhone XRとPixel 3aのどちらの機種も、撮った画像をAIで処理してきれいに見せる補正機能を搭載しているので、美しさの点ではほとんど同じでしょう。ただ、そうした補正機能のなかでも夜のシーンの撮影においては、Pixel 3aは非常に優れている部分があります。暗い場所でもはっきり写るようにAIが高度な画像処理をしてくれるのです」(同)
機能面で遜色なく低価格…コスパ最高のPixel 3aに軍配!
ここまで、さまざまな切り口で2機種のスペックを比較してきた。石川氏の解説によると細かな差異はあるものの、全体的にみて両モデルに大きな性能差はないように感じる。
だが、すでに紹介したとおり、64GBモデルのiPhone XRが6万4800円(税別)に対し、同じく64GBのPixel 3aは4万8600円(税込)と、価格差があるのだ。
「iPhoneは下取りサービスも行っているので、以前からiPhoneユーザーだった方には、実質的にもう少し安く購入できる感覚になります。とはいえ、約2万円の価格差を埋めるほどではないでしょう。
どうしてiPhone XRとさほど性能差がないPixel 3aが、4万8600円(税込)という価格を実現できているかというと、Pixelがスマホ業界において後発ブランドだったため、グーグルがシェア拡大のためにリーズナブルな価格設定にしたという事情があるのだと思います。ですからPixel 3aのコストパフォーマンスはかなり高いと言えますね。
また、そもそもiPhoneはブランドとして成熟しており、アップルファンからするとニューモデルを所持することがステータスという側面もあるため、強気の価格設定に出ているのでしょう」(同)
“日常使いで満足なライトユーザー”にはiPhone XRとPixel 3aのどちらがオススメかと考えた場合、機能面でiPhone XRにほぼ遜色がないにもかかわらず、価格面で約2万円もリーズナブルなPixel 3aに軍配を上げたい。
(文=A4studio)