日本時間の昨年11月27日、アメリカ株式市場でマイクロソフトが時価総額8129億6000万ドルを記録し、アップルに3000万ドルの差をつけてトップに躍り出たというニュースが世界をかけめぐった。
アップルは首位の座を即座に奪い返したものの、一瞬でもマイクロソフトに時価総額で抜かれたのは、実に2010年以来のこと。当時を振り返ってみれば、アップルはiPhoneシリーズの第4世代モデル(iPhone 4)を6月に発売しているが、片やマイクロソフトはWindows Phoneシリーズの初代モデル(Windows Phone 7)を9月にようやく完成させている。
かつてマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は「すべてのデスクとすべての家庭に1台のコンピュータを」というビジョンを掲げ、見事に実現させた。しかし今、時代の主流はパソコンからスマートフォンにすっかりと移り変わっているのは、いうまでもないだろう。
iPhoneが現在進行形でアップデートされている一方、Windows Phoneの開発は実質的に打ち切られており、後継機のWindows 10 Mobileも今年12月にはサポート終了となる見込み。世の中にパソコンを普及させた功績がどれだけ大きくても、スマートフォンの波に乗り切れなかったマイクロソフトに対し、“堕ちた古豪”だという印象を持っている人々も多いのではないか。
事実、マイクロソフトの2代目CEO(最高経営責任者)を00年1月から14年2月まで務めたスティーブ・バルマー氏は、退任前年の13年9月というタイミングに開かれたアナリスト会議で、「携帯電話という新しいデバイスに有能な人材を振り分けられなかったことが最大の後悔」だという旨を語っている。
しかし先述したとおり、マイクロソフトは一時的にではあるが、時価総額の1位に返り咲いてみせた。アップルだけでなくグーグルやアマゾン、フェイスブックといった強豪企業と、今なお熾烈な争いを繰り広げているのだ。
そこで今回はITジャーナリストの井上トシユキ氏に、マイクロソフト復調の背景を推察してもらった。