ただ、このときアメリカから来日していたSurface開発責任者のパノス・パネイ氏は報道陣に向け、デザインを磨きながらも一貫性を保ち、継承していくことの大切さを語っています。これは本来なら、アップルが得意としていた方法論のはず。アップルはボヤボヤしているうちに、ライバルであるSurfaceにお株を奪われてしまったというわけです」(同)
マイクロソフトには、ハードウェアメーカーとしての地力があった?
井上氏は、Surfaceの売り出し方やマイクロソフトの企業姿勢も称賛する。
「近年のマイクロソフトの取り組みには、『Surface All Access』という月額制サブスクリプションの導入が挙げられます。これはSurface本体や『Office 365』のソフトが月額払いで利用できる制度で、金利はありません。モデル次第では約3000円から使えるため、若い人や学生にとっては助かることでしょう。アップルのように製品を店頭で売り切って終わりではない、新しい顧客とのかかわり方も、Surface及びマイクロソフトが好評を集める一因なのではないでしょうか。
それに、失敗したというイメージが強いマイクロソフトのモバイル事業も、Windows PhoneやWindows 10 Mobileを実際に使っていたユーザーのなかには、あのタイル型のインターフェイスも含め、使い勝手・性能ともに評価する人が大勢いました。
これらの開発が終了してしまったのは、アプリやゲームに良いものがない割に価格が中途半端に高く、単に売れなかったからですが、別れを惜しんでいるユーザーも決して少なくありません。マイクロソフトは目立たないながらも、以前からハードウェアの開発に尽力しており、それがようやく実を結んだのがSurfaceだったのです」(同)
なお、市場調査会社ガートナーが発表したアメリカ内でのパソコン出荷台数ランキング(※WindowsまたはmacOSの搭載マシンが集計対象)にてマイクロソフトは60万台を記録し、18年第3四半期の5位につけた。1位は453万台のヒューレッドパッカード(HP)、2位は383万台のデルで、マイクロソフトは上位陣に遠く及ばないが、同年第2四半期にはベスト5圏外だったことを考えると、Surfaceのおかげで再び存在感を示していると見てよさそうだ。
もちろんマイクロソフトのビジネスの柱はSurfaceだけではないし、今年2月で就任から丸5年がたった3代目CEOのサティア・ナデラ氏が推進するクラウド事業にも定評がある。マイクロソフトは今後、どこまで再成長を成し遂げられるのか。注目していきたい。
(文=A4studio)