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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

世界の航空業界、秩序崩壊…大半の航空会社破綻との予測、中国が供給席数で世界1位に

文=新井俊郎/航空経営研究所主席研究員
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ヴァージン・オーストラリア航空のエアバスA330型機(「Wikipedia」より/File Upload Bot)

 ようやく日本でも緊急事態宣言が解除され、経済活動の再開へ動き出した。しかし多くの企業はまさに未曾有の難題に見舞われており、航空業界も例外ではない。全世界で国境の閉鎖が行われ、人々の往来を足止めすることが新型コロナウイルス感染拡大の阻止に必要とはいえ、史上空前の好調に沸いていた航空業界にとって大きな問題となった。

 豪州に本部を置くCAPA(Centre for Aviation)は世界有数の航空関係のシンクタンクだが、3月16日に「世界の航空会社のほとんどは、5月末までには倒産するだろう」との分析を発表している。その論旨は以下のとおり。

1.新型コロナにより5月末までには世界のほとんどの航空会社は倒産する

2.各国政府は協働に失敗する

3.「協力」より「自国の利益」優先は、航空業界にとって脅威

4.新型コロナ後の世界では航空業界で特異な時が始まる

5.航空地政学上の対立

6.政府間の協調が不可欠

7.未来のために協調ができなければ、保護主義に陥り、競争が激減

 現在の状況をみると、2カ月前のCAPAの予見はかなり正確だったといえる。

1.5月末までには世界のほとんどの航空会社は倒産する

 世界中で現実のものとなりつつある。すでに倒産、経営破綻に至ったのがヴァージン・オーストラリア航空アビアンカ航空、タイ航空であり、アリタリア航空は再国有化話が出ている。これ以外にもキャッシュの枯渇を目の当たりにしている航空会社は数多い。

2.各国政府は協働に失敗

 米国のトランプ大統領は、自国民を守るために欧州諸国への渡航禁止を発表したとき、相手国に事前に通知しなかった。米国以外の政府も同様で、EUも協働どころでなく、窮地に陥ったイタリアを救済しなかったことをフォンデアライエン欧州委員長が正式に謝罪した。イギリスのEU離脱同様にイタリアでも離脱の声が広がり、EUも存亡の危機に近づいてしまった。

3.「協力」より「自国の利益」優先は航空業界にとって脅威である

 倒産、経営破綻などで崩壊したエアラインシステムの再構築のなかで国家の利己主義が蔓延し、世界のコミュニケーションと交易にとって致命的な事態になりかねない。これまで世界の航空業界で中心的役割を担っていたのはICAO(国際民間航空機関)であった。これは世界中の政府が将来の世界平和と繁栄のために完全に機能するエアラインシステムが必須であるとの考えの下、第二次世界大戦終戦直前の1944年に締結された条約に基づきつくられた。そのICAOも各国の保護主義を抑えきることは不可能だった。そしてこのコロナ禍がやって来た。

 ICAOは今や七十余歳になるが、航空会社が国境を越えて合併・統合することは依然として不可能なままである。外国企業による航空会社の所有には強い抵抗があり、国内のみの輸送を他国の航空会社が担う「カボタージュ」は世界的に禁止されている。その結果、業界は細分化され、脆弱なものとなっている。

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