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大阪府民を欺く関電を全力で守る“ヤメ検弁護士”のお歴々…大阪地検の刑事起訴を絶対阻止

写真と文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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関電相手に株主らが提訴 6月23日 大阪地裁(撮影=筆者)

 1987年頃から約30年にわたり、関西電力の幹部ら75人が原発の立地する福井県高浜町の森山栄治元助役(故人)から巨額の金品を受けていた問題で、関電は6月16日、八木誠前会長、岩根茂樹前社長ら旧経営陣5人に対し総額19億3600万円の損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こした。

 現役経営陣がOB経営陣を提訴する異例の事態ではあるが、電気料金を支払う消費者のためなどではない。6月25日に開かれる株主総会対策の「馴れ合いパフォーマンス」だ。これを見越した株主5人が23日、旧現経営陣と監査役計22人に対し、約92億円の損害賠償を関電に支払うよう求める株主代表訴訟を起こした。関電が訴えた被告5人に加え、現在の森本孝社長や八嶋康博常任監査役ら17人。

 訴状によると、旧経営陣らは森山氏から多額の金品を受領した問題を放置、福島第一原発事故の影響で原発稼働が停止して経営悪化し、減額した役員の報酬を秘密裏に補填し、会社の信用を損ない、損害を与えたとしている。

 大阪市内で記者会見した原告弁護団の河合弘之弁護士は「秘密補填などを知っていた現経営陣の責任も免れない。5人では責任追及の範囲が不十分。馴れ合いの和解を防ぐためにも提訴に踏み切った。責任を厳しく追及したい」などと語った。

株主に大嘘通知

 こうしたなか、注目したいのは朝日新聞のスクープである。社外取締役に就任予定の佐々木茂夫弁護士について関電が「事前にはこれらの問題(筆者注・森山氏からの金品授受)を認識しておりませんでした」と株主に虚偽の通知をしていたと報じた。実際には18年2月に金沢国税局に関電が税務調査された際、関電の社外監査役就任直前だった佐々木氏は、課税処分や刑事訴追の可能性について相談を受けていた。朝日新聞の指摘を受けて関電は「佐々木氏に関しても、(中略)その一端を知る立場にありました」と修正通知した。朝日新聞に対し佐々木氏は「全然相談を受けていないなどということは言わない」などと語っている。

 関電が森山問題を元大阪高検検事長の大物検察OBで社外監査役に就任予定だった佐々木氏に相談しないはずはない。そもそも大企業が「ヤメ検弁護士」に高給を与えて重宝するのは、こうした「有事」で働いてもらいたいからだ。それが佐々木氏について株主にシャアシャアと大嘘をついていた。

刑事起訴を阻止するために関電が敷いた布陣

 昨年秋に発覚した「ドン森山氏」による関電の金品授受問題。振り返ってみれば、最初に内部調査の報告書をつくったのは、関電のコンプライアンス委員で調査委員会の委員長だった小林敬弁護士だった。小林氏は厚労省幹部だった村木厚子氏が郵便不正の冤罪で大阪地検特捜部に起訴された際の同地検検事正である。

 関電は当初、この報告書すら黒塗りだらけにして公表し、世論の怒りを買い、当時の八木会長や岩根社長が改めて会見したが、森山氏の「強圧的な人格」に帰せしめて逃げていた。

 そして同問題の第三者委員会の委員長に関電は但木敬一元検事総長を据えた。但木氏は「第三者」の独立性を強調、今年3月の最終報告で「内向き体質」とか「コンプライアンス違反」などと糾弾して見せたが、刑事告発は見送った。しかし筆者には、もともとが刑事告発させないための第三者委員会に見えた。そして今回の佐々木氏。すべて「森山問題」で大阪地検による刑事起訴を阻止するために関電が敷いた布陣としか思えない。

 関電が提訴にあたり請求している賠償額19億円には、金品を受けた経営幹部が森山氏のかかわっていた会社へ随意に発注した工事費などについて、競争入札した場合の安い受注額との差額分が考慮されていない。関電は「算出できなかった」などとごまかしているが、これこそがもっとも重要な部分のはずだ。あえて算出しないのは、これが会社法の背任罪や贈収賄など刑事事案にかかわる根幹部分だからである。ちなみに関電幹部らは同罪で市民団体に大阪地検へ刑事告発されている。

馬鹿を見る大阪市民

 さて、関西電力の筆頭株主は大阪市である。大阪市民から見れば、福島第一原発事故で原発が停止し、値上がりした電気代を払わされ、さらに納めた市民税は関電の株購入のためにも多く使われていた。「役員報酬はカットするから値上がりにご理解を」など真っ赤なウソだった。元副社長の豊松秀己氏は退任後、エグゼクティブ・フェローとして月490万円を密かに受けていた。

 会見後、大物ヤメ検について河合弁護士は筆者に「東京電力でも経産省OBなどは組み込んでいるが、検察OBはいないのでは。関電は検察OBがよほど好きなのでしょうが、明らかに癒着というしかない」と話してくれた。

「伏魔殿・関西電力」を守り続けるのは「大物ヤメ検」たちなのだ。

粟野仁雄/ジャーナリスト

粟野仁雄/ジャーナリスト

1956年生まれ。兵庫県西宮市出身。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)を経て、82年から2001年まで共同通信社記者。翌年からフリーランスとなる。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌などに執筆。
『サハリンに残されて−領土交渉の谷間に棄てられた残留日本人』『瓦礫の中の群像−阪神大震災 故郷を駆けた記者と被災者の声』『ナホトカ号重油事故−福井県三国の人々とボランティア』『あの日、東海村でなにが起こったか』『そして、遺されたもの−哀悼 尼崎脱線事故』『戦艦大和 最後の乗組員の遺言』『アスベスト禍−国家的不作為のツケ』『「この人、痴漢!」と言われたら』『検察に、殺される』など著書多数。神戸市在住。

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