
微細化競争からインテルが脱落
世界最大のプロセッサーメーカーであるインテルは2016年、最先端の微細化を14nmから10nmへ進めることに失敗した。その後、何度も「今年は立ち上がる」という発表を繰り返してきたが、その期待は裏切られ続けた。現在も、充分に10nmでプロセッサを量産しているとはいいがたい。
そして、7月末に開催された2020年第2四半期の決算発表で、インテルのボブ・スワンCEOは、次世代7nmが1年以上遅延していることを認めた上で、「プロセッサ生産の外部委託を検討している」と述べた。実際、インテルは画像プロセッサ(GPU)を台湾TSMCに生産委託したという報道がある。委託された生産量は12インチウエハで18万枚であり、6nmプロセスで製造される見込みである。それだけでなく、インテルは、同社の基幹ビジネスであるPC用やサーバー用プロセッサについても、5nmおよび3nmでの生産委託をTSMCに打診している模様である。
もしこれが事実なら、長らく半導体業界の盟主として君臨してきたインテルが、微細化競争から脱落することになる。その結果、半導体の微細化競争は、TSMCとサムスン電子の2社に絞られるということになろう。
本稿では、この2社の微細化競争の勝敗が、最先端露光装置EUVの分捕り合戦によって決まることを論じる。しかしその前に、微細加工の原理と露光装置の歴史について解説する。
微細加工の原理
半導体の微細加工の原理を図1に示す。微細加工は、大まかに、リソグラフィ工程とエッチング工程の二つに分けられる。
リソグラフィ工程では、まず加工したい膜の上に感光性材料のレジストをスピンコートする。次に、回路パタンの原板(レチクル)を介して光を照射する。すると、光照射されたレジストが化学反応を起こして溶解性になる。その後、現像液を塗布すると、光照射された部分が溶解し、微細なレジストパタンが形成される。これはポジ型と呼ばれるレジストで、逆に光照射された部分が不溶性になるネガ型のレジストもある。
リソグラフィ工程の後は、プラズマを用いて、実際にエッチングを行う。エッチング後は、不要なレジストを酸素プラズマによるアッシングによって除去する。リソグラフィ工程では、いかに微細なレジストパタンを形成するかが重要であり、エッチング工程では、いかにまっすぐ加工するかが重要となる。
露光装置の歴史
リソグラフィ工程のうち、光を照射する露光においては、次に示すレイリーの式によって、レジストパタンの微細性Rが決まる。
R=K1・λ/NA
ここで、K1は比例定数、λは光の波長、NAは露光装置におけるレンズの開口数である。この式から、より微細なレジストパタンRを形成するには、光の波長λを短くする、または、レンズの開口数NAを大きくすれば良いことがわかる。