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菅官房長官にも健康不安説が取り沙汰、総裁選が混沌…安倍首相辞任の裏で飛び交う噂

文=小川裕夫/フリーランスライター
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28日、首相退任会見時の菅長官

 8月29日、安倍晋三首相が官邸で記者会見を開き、辞任を表明した。これで、7年8カ月にもわたる長期政権が幕をおろす。

 安倍首相が会見で口にした辞任理由は、持病である潰瘍性大腸炎が再発し、体調悪化により新型コロナウイルス感染対応などで迅速かつ正確な判断が下せない状況にあるためとした。安倍首相が持病の潰瘍性大腸炎を抱えながら公務にあたっていたことは、第一次政権のときから周知の事実だった。7月末頃から体調不安がメディアでも報道されるようになり、8月に報道が本格化した。

 一国の宰相が激務であることはいうまでもないが、首相を横で支える側近たちも、それは同様。安倍政権の立役者ともいわれる菅義偉官房長官も、その一人だ。政権発足以来、菅長官も休みなく仕事を続けてきた。政権の顔として矢面に立つポジションであるため、多忙というだけではなく精神的な負担は重い。そして過去の安倍首相の会見時、首相よりも苦悶の表情を見せていたのが、ほかならぬ菅長官だった。

 従来、首相会見では首相より前に官房長官と官房副長官が入室して演壇の横に立ち、待機しているところに首相が入室。演壇に上がり、報道陣による写真撮影後に首相の発言が始まる。これまでは首相の冒頭発言が終わるまで、官房長官と官房副長官は起立をしたまま首相の発言を聞くのが一般的な流れになっていた。

 しかし、2012年12月26日の第2次安倍政権発足時の記者会見で、首相発言中に杉田和博官房副長官が体調不良で卒倒するハプニングが起こり、大事には至らなかったが、以降の会見から首相が冒頭発言前に目配せなどをするのに応じて、官房長官と官房副長官が着席することが慣例になっていた。今回の辞任会見では、安倍首相が目配せする前に菅長官が早々と着席し、隣に立っていた3人の官房副長官も着席。そのタイミングは、通常よりも早かった。

 立っているのが辛そうな表情を浮かべていた菅長官は、着席後も顔色は冴えず、辛そうな表情を何度も見せた。会見後、記者たちからも「安倍首相より、菅長官のほうが体調は悪そうに見えた」と指摘する声が相次ぎ、ジャーナリストの江川紹子氏も菅長官の体調を心配するツイートをしている。

政策に通じ、官邸職員の人心を掌握

 今のところ、菅長官の体調を案じる新聞・テレビは見当たらないが、「安倍政権のキーマン」「安倍政権の隠れた権力者」などとも形容されてきただけに、安倍首相と同じぐらい菅長官の体調も政局を大きく左右する。

 菅長官は“モリ・カケ・サクラ”といった安倍政権の危機においても、「そうした批判はあたらない」と繰り返して、記者の追及をかわしてきた。菅長官の木で鼻をくくるような答弁は、鉄壁な防御だった。これは“菅話法”とも形容された。

 そんな政権の守護神でもある菅長官が、安倍政権を支えてきた。菅長官の熟練味がなければ、早々に安倍政権は崩壊していただろうと考える記者は少なくない。「夜間学校や民間企業勤務、市会議員などを経験してきた苦労人なので、スタッフへの気配りができ、頼れる存在」と慕う官邸職員もいる。

 政策に通じ、官邸職員の人心を掌握して内閣を一手に差配してきた菅長官だけに永田町関係者からは「安倍内閣を影で支えてきた長官の体調が悪化し、それに伴って鉄壁の防御が弱まれば、安倍内閣を守りきれない」という読みも広がる。だからこそ、「安倍さんの体調が悪いのは事実だろうが、辞任するほどではないのではないか。実のところ、菅長官の体調が悪化して安倍政権を支えられなくなっているのが、結果的に安倍辞任につながったのではないか」といった憶測まで飛び交う。

菅内閣の実現を支持する自民党議員も

 そして、安倍政権の肝いり政策を推進してきたのも菅長官だった。政権中枢から菅長官が退けば、安倍政権が進めてきた政策が大きく転換する可能性もある。特にカジノを中心としたIRは、菅長官が推進役を務めてきた。そのため、IRの候補地は菅長官のお膝元である神奈川県横浜市、そして大阪市の2市が有力候補地と目されてきた。

 大阪市はIRを実現させるべく、たびたび菅長官を訪問して会談を重ねてきた。ここで菅長官が政権中枢から外れてしまったら、大阪の吉村洋文府知事、松井一郎市長、橋下徹前大阪市長の苦労は水の泡になってしまう。

 さまざまな不安が漂うなか、「安倍首相辞任のドタバタで心労が蓄積しただけではないか。少し休めば回復するのではないか」と心労を一時的なものと見る記者もいる。しかし、菅長官は御年71歳。無理のできる年齢とはいいがたい。

 次の自民党総裁選候補には、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、菅長官のほか、たくさんの名前が取り沙汰されているが、3人は横一線の情勢で、誰が総裁に選出されてもおかしくない。菅長官は新元号「令和」を発表し、世間から “令和おじさん”として世間から注目を浴びた。そして安倍政権で影の実力者として隠然たる実力を持ってきた。

 安倍政権を支えてきたという実績や路線踏襲という理由で、菅内閣の実現を支持する自民党議員も少なくないだろう。それだけに、安倍政権後の動向や去就はもとより、菅長官の体調にも注目が集まっている。

(文=小川裕夫/フリーランスライター)

小川裕夫/フリーライター

小川裕夫/フリーライター

行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

Twitter:@ogawahiro

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