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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

同じ質問に真逆の回答…武田総務相が携帯会社へ値下げ“恫喝”、ドコモも値下げ不可避

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
同じ質問に真逆の回答…武田総務相が携帯会社へ値下げ“恫喝”、ドコモも値下げ不可避の画像1
武田良太総務相(YouTube「総務省動画チャンネル」より)

「同じ質問に1カ月前とまったく正反対の答えをするなんて、武田良太総務相は予想通りまったく携帯電話料金のことを理解してないですね」――。

 ある携帯大手関係者はこう呆れる。

 問題となっているのは、ソフトバンクとKDDI(au)が先月提示した、サブブランドの「Y!mobile」と「UQ mobile」での通信容量20ギガバイトの4000円前後の料金プラン。これについての、武田氏の記者会見での同じ質問への答えが180度違うのだ。具体的に見てみよう。

 サブブランドでの値下げプランが発表された直後、10月30日の記者会見での受け答えは以下の通り。

Q:先日、ソフトバンクとKDDIが携帯料金の新プランを発表しました。政府の値下げ要請を受けたものですが、いずれもサブブランドを使ったもので、当初の値下げというイメージとは若干違うのかなというところもあるかと思います。大臣の受け止めと、これが国民の期待に応えるものになっているのかというお考えをお伺いさせてください。

A:事業者、ブランド問わず、利用者にとって魅力的な料金・サービスの選択肢が新たに出てくることは間違いないと思っています。今回、これを契機に、それぞれの利用者の皆さん方が、ご自身の携帯電話のプランその他をしっかりと見直していただいて、自らの求めに合った選択肢が非常に広がったということでは、大変な影響が出ているのではないかと思っております。

 武田氏の答えがプランに満足している様子が伺える。

 続いて、11月20日の会見での受け答えは以下の通り。

Q:NTTは、まだ方針を打ち出していませんけれども、これまでのKDDI、ソフトバンクを見ますと、サブブランドの新しい料金プランが出てきている一方で、メインのブランドでの対応がないことに対して、利用者の方から対応を求める声が出ていると思いますが、現状について大臣はどのように認識されているか、見解をお聞かせください。

A:今、コロナ禍において地域経済が低迷する中で、家計の負担を考えた時に、携帯電話料金の値段が下がった、安くなったということを、利用者の方々が実感していただかなくては、まったく意味がないと思うんですね。

 今回、「アクション・プラン」発表後、各社からサブブランドによる割安なプランが発表されて、確かに選択肢が増えたわけであります。我々としても自由な選択、自分の求めるものに合ったプラン、そして、値段を自由に選択できるように、いろいろな選択を阻害する、障害となるものを取り払うために、我々としてもいろいろな努力をしてまいったわけであります。

 一方、ほとんどの方と言ってもいいぐらいに、多くの利用者が契約しているメインブランドについては、まったくこれまで新しいプランは発表されていないんです。これが問題なんです。「羊頭狗肉」ということが適切かどうかわかりませんけれども、「いろんなプランができましたよ、つくりました。あとは利用者の方々次第ですよ」ということもわからんこともないけれども、それではあまりに不親切ではないか。

 どうだろうか。ほとんど同じ質問について、真逆の答えとなっており、「羊頭狗肉」というかなり強い言葉も使っている。大手証券アナリストの解説。

「要するに、携帯プランについて何もわかっていなかったということですよ。初めはとにかくソフトバンクとKDDIを屈服させたということで満足していたけど、よくよく報道を確認すると『サブブランドでの値下げの影響は限定的』という論調が強いと今さらになって認識した。総務省の事務方は、携帯企業サイドの『業績への影響が少ないサブブランドで少し様子を見させてほしい』という本音をしっかり理解していました。彼らは武⽥⽒もサブブランドでの値下げに満⾜していると考えていましたが、どうやら武田氏もその後ろに控える菅義偉首相もそうではなかった。それで1カ月も経過して携帯側に『だまされた』と怒りを露わにしたというわけです」。

ドコモにはメインブランドで下げろと圧力

 11月20日の会見での武田氏の態度豹変には布石があった。NTTによるNTTドコモの完全子会社化のための株式公開買い付けが成立した17日の直後だったことだ。ドコモは筆者が10月6日配信の記事で報じたように、フリーハンドの値下げが可能になった状態となった。武田氏はそれにかこつけて「ドコモは逃げずにメインブランドで値下げしろ」というメッセージをNTT側に送ったというわけだ。

 契約者が国内最大のドコモがメインブランドで値下げするとなれば、確かにインパクトは大きい。武田氏はこの会見で「特にお年寄りについては、もっとわかりやすい、丁寧なやり方を自ら考えて然るべきだ」と地方の高齢者の利用者が多いドコモへの当てつけとしてしか取れないような発言もしていることからも発言の意図は明らかだ。

 武田氏は「実質的に負担軽減が進んでいないような結果が出た時には、さらに一歩踏み込んだ『アクション・プラン』をつくる準備をいたしておるわけであります」と話し、「喧嘩師」との異名にふさわしく、携帯大手3社全体にぬかりなく圧力を掛けている。

 ドコモが他の大手2社と同様にサブブランドを新設するとの観測も出たが、この武田氏の剣幕に逆らえば、NTTを縛るNTT法の規制緩和にも影響が出ることにもなりかねない。NTTは12月から年明けにかけて、メインブランドのドコモでの値下げプランの提示に踏み切らざるを得ないだろう。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

松岡久蔵/ジャーナリスト

松岡久蔵/ジャーナリスト

 記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。
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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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