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高級「ザ・トースター」世界販売100万台に…バルミューダ上場、異色家電ベンチャーの秘密

文=編集部
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「バルミューダ HP」より

 高級家電ベンチャーのバルミューダ(東京都武蔵野市)が12月16日に東証マザーズに上場した。初値は3150円。公募・売り出し価格(1930円)を1220円(63.2%)上回った。公募は123万5000株、売り出し20万株のほか、オーバーアロットメントによる売り出しが最大で21万5200株。

 公募で38.9億円の資金を調達した。売り出す20万株はすべて、発行済み株式の92.3%を保有する寺尾玄社長の分で、上場後も株式の7割強を持つ。売り出しで寺尾社長は6.3億円、追加売り出し分を加算すると13億円のキャッシュを手にする。新規上場するオーナー企業家の醍醐味だ。

 新規公開で手に入れた資金は広告宣伝費や新製品の研究開発、金型への投資、デザイナーや技術者の増員に充てる。当面は成長投資を優先し、無配を続ける予定だ。

スチームトースターの販売台数は100万台を超えた

「窯で焼き立てパンの味を再現する」。スチームトースター「ザ・トースター」は、そんなうたい文句でヒットした。上部にある給水口に少量の水を入れ、水蒸気を使って温度を制御する独自の技術を採用。パンの表面だけを焼き、パンの中に含まれる水分はそのまま残すことで、表面はさっくりしていながら、中はふっくらした食感を残すトーストに仕上がる。

 店頭価格は2万円超で通常のトースターの4~5倍程度と高額だ。2015年の発売以来、着実に販売台数を伸ばしてきた。新型コロナウイルスの巣ごもり需要を追い風に4月から8月にかけて月別で過去最高の販売台数を記録。累計販売台数は世界で100万台を超えた。

 バルミューダは元ミュージシャンの寺尾社長が設立した。1973年5月、茨城県龍ヶ崎市の洋ラン栽培農家に生まれた。17歳で高校を中退、スペイン、イタリア、モロッコなど地中海沿岸の各国を約1年かけて放浪。帰国後、約10年間、音楽活動に携わる。大手レコード会社と契約したがCDを1枚も出せずに断念した。

 2001年、バンド解散後、ものづくりの道を志す。町工場で働きながら独学で設計と製造技術を学んだ。03年、有限会社バルミューダデザインを設立。11年にバルミューダ株式会社へ社名を変更した。

 開発思想は一風変わっている。大事にするのは「自分が欲しいかどうか」だ。リーマン・ショックで倒産の危機に陥ったが、10年に発売した二重構造の扇風機「グリーンファン」で家電業界の注目を集めた。首振りの範囲を150度の超広角に広げて空気をゆっくり移動させることによって、自然界のような風を再現した。

 そして、15年に発売した「ザ・トースター」が大ヒット。家電量販店の調理家電売り場では、予約しないと手に入らない超人気商品に化け、15年度グッドデザイン賞金賞を受賞した。

 音楽に合わせ室内の光の量などを調節するワイヤレススピーカーや、ヘッドを360度回転できる掃除機などユニークな商品の品揃えを増やした。ポータブルLED(発光ダイオード)ランタンなども世に出している。空気清浄機などが韓国を中心に人気で、海外売上高比率は3割に達する。

 2020年12月期業績予想の売上高は前期比13.7%増の123.3億円、 純利益は30.6%増の8.2億円と増収増益の見通し。20年4月から北米で販売を開始した。現在100人あまりの社員の約半数が開発要員だが、新製品を出し続けるには人員を増やす必要がある。上場して株式市場から資金を調達する狙いのひとつが人材の確保にある。

上場会社になった後の経営課題は品質管理

 嗜好性が強いオーディオ機器やカメラと違って、家電製品は家事の負担を軽減したり、料理の手間を省いたりといった実用性が重視されてきた。国内の白物家電市場では、特定分野に強い専業が存在感を高めてきた。ロボット掃除機「ルンバ」の米アイロボットは5割強のシェアを持つ。英ダイソンは掃除機で、首位パナソニックに次ぐシェア(約19%)を握っている。

 こうした新しい潮流の中から台頭してきたのがバルミューダだ。その「家電業界の風雲児」が直面しているのが品質問題だ。加湿器や掃除機を商品化する過程で表面化した。現在、生産は中国メーカーなどに委託している。

 バルミューダは生産設備を持たず、製品を外部の企業に委託するファブレス企業だ。初期投資が少なくて済むビジネスモデルだが、品質を自社で徹底的にチェックできないという難点がある。17年2月、扇風機「グリーンファン」のリコール(自主回収・無償交換)を実施した。18年10月、最大のヒット商品である「ザ・トースター」をリコールした。19年6月にはオープンレンジの「ザ・レンジ」のリコールも発表した。

 上場で事業を拡大する。企業規模を拡大しなければつくれない製品があるのは確かだが、独創性や高い品質の確保を両立できるのか。今後も、万人受けは考えず、特定のユーザーを念頭に置いた製品作りにどこまで特化できるか、である。

 株式を上場後も、とんがった企業の良さを維持できるか。高級家電ベンチャーの経営手腕が問われることになる。

(文=編集部)

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