菅義偉内閣は発足わずか3カ月で支持率が大幅急落。一部の世論調査では30%台に突入してしまい、足元グラグラのなかで新年を迎えた。菅首相にとって今年は「菅降ろし」との攻防の年になりそうだ。
衆議院議員は10月21日で任期満了。それまでに必ず総選挙が行われる。急速に国民の“菅離れ”が進むなか、自民党内では「菅総裁では選挙の顔になり得ない」との声がどんどん高まっている。「野党が弱すぎるので総選挙の結果、政権を失うことはないだろうが、普通にやっても10~20議席減。下手したら40~50議席減もある」(自民党ベテラン議員)という最悪のシナリオを想定すれば、落選危機の議員らは気が気じゃない。
「新型コロナウイルス感染をどこまで収束させられるか、予算委員会の答弁をうまく乗り切れるか次第ではあるが、支持率下落に歯止めがかからなかった場合、『菅降ろし』に屈して菅首相が辞任する最も早いタイミングとしては、3月の新年度予算成立後が考えられる」(自民党ベテラン議員)
その時、ポスト菅はどうなるのか。菅首相がある程度の求心力を残して身を引くかたちなら、後継指名が可能だ。菅首相の念頭にあるのは河野太郎行革担当相だと見られている。ともに神奈川県選出で関係は良好。菅首相はかねてより河野氏のことを「将来の首相候補」と公言してきた。同じく神奈川県選出の小泉進次郎環境相も河野支持で連携する可能性が高い。
しかし、河野氏が所属する麻生派は河野氏を派閥の総裁候補とはみなしていない。
「河野氏が『ポスト菅』の総裁選に出馬するならば、派閥を飛び出して、自力で20人の推薦人を集めるしかない。麻生派内は甘利明自民党税制調査会長ら幹部連中が河野嫌い。領袖の麻生太郎財務相が『河野で行く』と言えば従う可能性はあるものの、麻生氏も河野氏をあまり評価していない。むしろ麻生派は岸田文雄前政調会長を担ぐことになるのではないか」(麻生派関係者)
入り乱れる“ポスト菅”候補
安倍晋三前首相の出身派閥である細田派も岸田氏に乗るのかどうかだが、派閥内には「ポスト菅」を狙う人が複数存在する。
「下村博文政調会長は次の総裁選に出馬するつもりで準備を進めている。西村康稔経済財政担当相も色気がある。推薦人が集まるかどうかは別として、稲田朋美元防衛相もやりたがっているし、萩生田光一文科相も候補になり得る。細田派には突出した総裁候補がいないだけに、一本化すること自体が大変です」(細田派関係者)
竹下派は茂木敏充外相と加藤勝信官房長官が意欲を示している。もっとも派閥の長老たちは、「いつかは小渕優子元経産相を総理に」というつもりでいるようなのだが――。
「問題は二階派でしょう。二階俊博幹事長は菅政権誕生の立役者ですが、菅氏がダメなら別の人に乗り換える。ダークホースは二階氏の下で幹事長代行を務めている野田聖子氏か。石破茂元幹事長という選択肢もある」(自民党関係者)
一方、菅首相が「菅降ろし」を突っぱねるならば、新年度予算成立後に「破れかぶれ解散」に踏み切る可能性が出てくる。その場合は4月25日投開票が有力。この日にはすでに収賄疑惑の吉川貴盛元農水相の辞職に伴う衆議院北海道2区の補欠選挙が予定されている。さらに、立憲民主党の羽田雄一郎参院議員の死去によって、参議院長野選挙区でも補欠選挙が行われる。
4月25日は、どちらにしても補欠選挙があるわけで、特に北海道2区は自民党の苦戦が必至のうえ、「政治とカネ」がクローズアップされる。だったら総選挙にしてしまえ、ということだ。
令和3年。激動政局の幕が上がった。
(文=編集部)