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セブンの食品がコンパクト化している本当の理由…“上げ底容器”に隠された秘密とは

文=清談社
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セブン-イレブンの店舗

 最近、SNSなどを中心に、セブン-イレブンの弁当などの商品が、実際よりも中身が多く見えるようにつくられた「上げ底」仕様になっていることが話題となっている。

 値段は変えずに容量を減らす「ステルス値上げ」ではないかと批判の声が上がっているが、逆にいえば、原価や流通コストが上がっている中、おいしそうな見た目を生み出そうという「企業努力」ともいえる。ある意味で技術の結晶である「上げ底容器」や、芸術的な「盛り付け」が生み出されている事情に迫った。

 2020年9月から全国のセブンで発売されている「まんぷく!スパイシーカレー炒飯&チキン南蛮」(税込594円)は、たっぷりのカレー炒飯とチキン南蛮が蓋を押し出さんばかりに盛り付けられた、ビジュアルだけで満腹中枢が刺激されるような商品だ。

 開封して、チキン南蛮をつまんでみると、その下に少なからぬ量のパスタが姿を隠している。これに、ネット上では「チキン南蛮の下にパスタを敷き詰めることで、ボリュームをかさ増ししているのではないか?」という声が上がっているのだ。さらに、このパスタを食べ進めていくと、容器の底面が緩やかに突起しており、傾斜状になっている。容器にも仕掛けが施されているのだ。

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 この「上げ底テクニック」は形を変えて、他の商品でも活用されている。セブンの「洋食屋のナポリタン」(税込399円)は容器の中央部分が盛り上がっており、容器だけを見るとドーム型の形状になっている。程度の差こそあれ、このような商品は昔から存在はしていた。

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「一番だしで炊いた鶏の炊き込みご飯」(税込453円)は、竹の子をはじめ9種類の具材が炊き込みご飯の上に乗った、色鮮やかで見た目が美しい商品だ。ボリュームもたっぷりに見えるが、真横から見ると印象はガラッと変わる。こちらの容器はすり鉢状に底がキュッと絞られており、ご飯が収納されている部分がコンパクトにまとまっている。実際に食べてみると、具材の多さに対して、ご飯がやや少ない感じは否めない。

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 そして、ネット上で最も話題となったのが「厚焼たまごミックスサンド」(税込334円)だ。極太カットの厚焼きたまごがインパクト抜群で、いかにも食べ応えがありそうだが、パンを開いて中身をチェックしてみると、隅々まで広がって挟まれていると思われた厚焼きたまごが2つに分割されていて、隙間ができている。さらに、もう片方のサンドイッチ(レタス、トマト、ハム)も開いてみると、想像より小ぶりな具材が断面に沿って配置されており、中の“余白”が目立つ。

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 ネット上では「中身がスカスカ」「ハリボテ」だという声が上がり、そうした消費者の指摘に対して、セブンの上総一宮店がツイッターで「せこくてゴメンなさい」と異例のお詫びをしたことでも話題になった。

セブンが食品容器に込めた狙い

 ネットユーザーや消費者からは評判が悪いセブンの「上げ底食品」だが、企業側はどのような狙いを込めて容器開発に臨んでいるのだろうか。

 他のコンビニ各社に比べて、セブン食品容器に対するこだわりは強いといわれている。1988年には、コンビニ業界で初めてレンジで温め可能な耐熱弁当容器を導入した。商品開発の現場には容器をつくるメーカーの人間が常駐し、場合によっては、商品のコンセプトやアイデアを容器メーカー側から提案することもあるという。

 こだわりのある容器づくりでコンビニ業界をリードするセブンが、シュリンクフレーション(価格は据え置きで容量が減少)といったセコい目的のために食品容器のコンパクト化を進めているとは、にわかに信じがたい。そこで考えられるのが、そもそもコンビニ利用客のニーズが「内容量を増やす」よりも「コンパクトで食べ切りやすいサイズの食品」に移っているということだ。

 近年の調査によると、20年前におけるコンビニの利用客の8割は男性であったが、現在は約半分を女性客が占めている。また、一昔前に比べ、男性でも健康に気を遣う人は増えており、かつてのような“お弁当一点買い”ではなく、おにぎりやスープ、サラダ、スイーツといった3~4品を組み合わせて購入する“ビュッフェ買い”がトレンドとなっている。

 セブンの食品容器がコンパクトになった背景には、お弁当だけではなく、サラダやスイーツを一緒に買う客が増えたことが影響していると考えられる。

 さらに、コロナ禍で外食を控え、家で食事をする世帯が増加したことがコンビニの食品容器に与えている影響も無視できない。コンビニで食品を買って、すぐに食べるのではなく、冷蔵庫に保管して後で食べるという人が増えているため、コンビニ各社は、自宅で使われる一般的な500ワットの電子レンジでも早く温めることが可能な容器の開発を進めている。

 早く温めるために、底に凹凸をつけたり、絞り底にして食品の中に熱を通りやすくすることは有効で、容器の熱伝導率を上げてレンジアップの時間を短縮しようという、開発側の創意工夫と考えることもできるのだ。

 多様化する消費者のニーズにフレキシブルに対応することで、日々進化を遂げているセブンの弁当容器。もちろん、「上げ底ではないか」という声も消費者のリアルな意見には違いないが、その裏側も意識すると、少し見方が変わってくるかもしれない。
(文=清談社)

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せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
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