ミニストップといえば、コンビニでありながら過去には店内でオーダーを受けてからつくるハンバーガーなどの商品が充実していたり、早くから店内のイートインスペースの設置に力を入れたりと、コンビニとファストフード店の“良いとこ取り”をしたようなスタイルが魅力。特に店内加工のスイーツ類は高いクオリティを誇り、熱烈なファンも多い。
そのスイーツの看板商品といえば「ソフトクリーム」。1980年の創業と同時に登場し、40年にわたって愛されているロングセラー商品だ。
ソフトクリーム専門店「MINI SOF」の狙い
今年3月、ミニストップが新業態のソフトクリーム専門店「MINI SOF」をオープンした。同店は横浜と京都への出店を皮切りに、5月には東京都内(新宿、吉祥寺)、7月には名古屋、8月には大阪と、店舗数を増やしている。
そもそも、なぜミニストップはソフトクリームの専門店を出店したのか。ミニストップの総務・コミュニケーション部コミュニケーションチームの篠原淳一氏は、こう説明する。
「以前から、社内で『ソフトクリームの専門店を出してみたらどうか』という話は出ていました。お客様からも『ミニストップといえばソフトクリーム』という声をいただいていましたし、弊社としても長年の研究開発を続けていて自信があるメニューですからね」(篠原氏)
ミニストップには、ソフトクリーム以外にもコールドスイーツの「ハロハロ」や各種ホットスナックなど、オリジナル商品が多い。数あるメニューの中でソフトクリームが選ばれた理由は何だったのだろうか。
「ソフトクリームは衛生管理が難しい商品ですが、ミニストップには40年間培ってきたノウハウや技術があります。また、スイーツはブームやターゲットの性別に左右されやすい食品ですが、ソフトクリームにはそれがありません。季節商品と思われがちですが、氷を使用したハロハロに比べて、ソフトクリームの売り上げは冬場でも大きく落ち込まないのです」(同)
サーティワンアイスクリームやコールド・ストーン・クリーマリーなどアイスクリームの専門チェーンは数あるが、ソフトクリーム専門店は競合店が少ない。そこに、自他ともに「ソフトクリームが看板商品」と認めるミニストップが専門店を出店すれば、ブルーオーシャンが広がっているという戦略なのだ。
試験店でブランド力の強さを再認識
MINI SOFの出店は今年3月だが、実は前身の店舗は2年前に誕生していたという。
「2018年、埼玉・越谷のイオンレイクタウン内に『Softcream Time by MINISTOP』(以下、Softcream Time)という専門店を出店しました。MINI SOFの前身であり、いわゆる試験店のようなものです。このSoftcream Timeを運営していく中で、懸念点が見えたり思いがけない気づきが得られたりしました」(同)
そのうちのひとつがメニューの数だ。Softcream Timeは、現在のMINI SOFと比べて商品数が多い。コーヒーや紅茶などもある上、タピオカドリンクまで揃えている。
「『選択肢が多いほど、お客さまに喜んでもらえるのでは』と思ったのですが、多すぎるとかえって選びにくかったようで……。その教訓を踏まえ、MINI SOFではレギュラーメニューはソフトクリームに絞り、バリエーションも含めて20種程度に絞り込みました」(同)
他にも、Softcream Timeを運営していくうちに発見したことは多いと、篠原氏は語る。
「我々が思っている以上に『ミニストップのソフトクリーム』が持つブランド力が大きいことに驚きましたね。当初、Softcream Timeはあえてミニストップ色を出さずに展開していました。ミニストップはあくまでコンビニとしてのブランドなので、それを出さない方がスイーツ好きには訴求できると考えたのです。しかし、お客様に『あのミニストップのソフトクリームなんだ』と安心していただけることが多く、最終的には『ミニストップであることを出していった方が良い』という結論に至りました」(同)
そして、ミニストップは19年11月に正式にソフトクリーム事業本部を立ち上げ、MINI SOFの出店へと動き出した。現在、既存のSoftcream Timeも屋号をMINI SOFへと変えていっている。
「MINI SOFのオープンは今年の3月だったのでコロナの影響を受けてしまいましたが、それでも売り上げは好調です。特に、5月にオープンした吉祥寺サンロード店などは予想以上の売り上げを見せていますね。イオンモール名古屋茶屋店、名駅サンロード店、サカエチカ店といった名古屋地域の店舗と、8月にオープンした心斎橋筋南船場店も、多くのお客様にご来店していただいています」(同)
新感覚ドリンクの「のむソフトクリーム」
コロナ禍でも好調なMINI SOFだが、前述のように「ミニストップの系列店」であることを押し出したことがプラスに働いている面もあれば、デメリットになっている部分もあるそうだ。
SNSを見ると、「MINI SOFってミニストップの小型版?」「ハロハロとかもあるのかな?」という声も散見される。“ミニストップのスイーツ”のイメージが強いからこその弊害ともいえるだろう。
「MINI SOFはソフトクリーム専門店ですが、ミニストップよりも扱う食材が多く、オペレーションの幅も広い。ミニストップにはないメニューが味わえるのですが、その訴求がまだまだ不十分なのかもしれません。ミニストップとは異なるソフトクリーム体験ができるよう、MINI SOFの特長を知っていただけるようにしていきたいと考えています」(同)
そんなMINI SOFの中で、特に売れ筋のメニューを聞いてみた。
「『のむソフトクリーム』は価格も手頃(税込み390円)ですし、MINI SOFの看板商品になってきているのではないでしょうか。『飲むソフト』と聞いてシェイクに似た食感を想像するお客様も多いのですが、それとはまた違う、まさに『新感覚ドリンク』です。ぜひ一度試していただければ『のむソフトクリーム』というネーミングに納得していただけると思います」(同)
その他にも、果実やプリンなどの豊富なトッピングで満足感バツグンの「ワッフルソフトクリーム」(税込み490円)や、のむソフトクリームをグレードアップさせた「のむソフトクリームパフェ」(税込み540円)などがラインナップされている。MINI SOFでしか味わえないメニューがあることが広まれば、同社が掲げる「数年で100店舗出店」という目標の達成も近いかもしれない。
「これからどんどん寒くなりますが、あえて冬季限定メニューの提供も始めています。実は2013年頃から『冬アイス』の需要は高まっており、売り上げも好調です。MINI SOFでは、ベルギーチョコを使った濃厚なフレーバーを展開したり、パンケーキと一緒に楽しめるほんのりあったかいメニューをご用意したりしています。冬にしか味わえないソフトクリームを、ぜひ楽しんでください」(同)
10月19日からは「のむソフトクリーム」のホットメニュー、「HOTベルギーチョコ&HOT超ミルク」も登場した。寒い冬、ソフトクリームを飲んで暖を取るという、なんとも不思議な体験を味わってみてはいかがだろうか。
(文=ますだポム子/清談社)