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藤和彦「日本と世界の先を読む」

中国、粗悪品コロナワクチンを途上国へ援助の真の狙い…低い有効率、強い副反応の懸念

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
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「Getty images」より

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)による全世界の死者数が1月15日、累計で200万人を超えた。変異種の出現が感染拡大を加速させるとの警戒感から、「新型コロナウイルス用のワクチンを一刻も早く手に入れたい」との声が各国で高まっているが、このような状況下で「ワクチン外交」を大々的に展開しているのが中国である。

 フィリピンを訪問中の中国の王毅外相は16日、「中国製のコロナワクチンを50万回分寄付する」ことを表明した。中国がワクチンを提供したのはフィリピンだけではない。ミャンマーに対しても30万回分、カンボジアに対しても100万回分のワクチン提供を申し出ている。

 インドネシアでは13日、中国製のコロナワクチン接種が始まった。ジョコ大統領が最初に接種を受け、国民に安全性を強調した。マレーシアやタイ、香港、ブラジルも中国製のコロナワクチンの購入契約を結んでいる。東南アジア以外ではトルコで14日、中国製コロナワクチン接種が医療従事者らを対象に始まった。中国はアフリカ諸国に対してもコロナワクチンの提供をアピールしている。

 中国のワクチン外交には「健康のシルクロード」という呼び名がある。中国は「一帯一路」のスローガンを掲げ、国際的なインフラ投資計画を繰り広げているが、資金力の弱い国が建設費の返済ができなくなると、中国がインフラそのものを差し押さえるという事例が相次いでいる。ワクチンの提供についてもその見返りとして、中国が今後受け入れ国に対して外交的な圧力を強める狙いがあると懸念の声が上がっている。

 中国側の狙いはわかるものの、こんなにもワクチンを大盤振る舞いできる余裕があるのだろうか。中国でもコロナワクチン接種が始まっているが、国民全員に行き渡らせるためには28億回分のワクチンが必要である。

中国シノバック製のコロナワクチン

 中国政府が外交カードに利用しているワクチンを提供しているのは、中国製薬大手のシノバックである。シノバックは13日、「コロナワクチンの生産能力を2月までに2倍へ拡大し、年間10億回分にすることが可能である」との見方を示したが、現在に至るまで中国政府はこのワクチンを正式に承認していない。

 シノバックが提供するワクチンの有効性についても疑義が生じている。約1万3000人が参加したブラジルの後期臨床試験での有効率が50.38%にとどまったからである。世界保健機関(WHO)が定める50%以上の基準を満たしているものの、米ファイザーや米モデルナが開発したメッセンジャーRNA型のワクチンの有効率(90%を大きく上回る)と比べると、明らかに見劣りする。

 シノバックが開発したワクチンは、不活化ワクチンである。熱や化学物質(アンモニアなど)で不活化したウイルスを体内に投与して抗体をつくるという従来の製造方法である。この手法はインフルエンザワクチンなどで使用されていることから信頼性が高いとされている半面、効果が弱いとの指摘がある。インフルエンザウイルスに比べて新型コロナウイルスの増殖のスピードが遅いことから、体内で発生する抗原が少なく、抗体ができにくいとされているからである。

 中国では多くの人々がワクチン接種の臨床試験に参加しているが、「接種後に深刻な副反応に苦しみ、病院で治療を受けている」との噂が後を絶たない。ワクチン接種後の副反応で最も懸念されているのは「ADE(抗体依存性感染増強現象)」である。ワクチン接種によりつくられた抗体がウイルスの細胞への侵入を防ぐのではなく、逆に細胞への侵入を助長する現象のことである。ADEが生じれば重症化するリスクが高くなる。

 新型コロナウイルスと遺伝子情報がほぼ同じであるSARSウイルスの不活化ワクチン開発の際にADEが生じたことから、「コロナの不活化ワクチンでも同様の問題が起きる」ことを懸念する専門家は少なくない。

 中国製ワクチンを購入する国々にとっての期待は「感染防止」だが、ワクチンは「重症化防止」には効果があっても、「感染防止」にはつながらないとの見解が一般的である。中国産ワクチンの接種は、「感染防止」に役立たないばかりか、ADEのリスクに曝されるという極めて危険なものであり、「百害あって一利なし」である。

ファイザーからコロナワクチン1億回分購入

 ワクチン供給大国を自負する中国に目を転じると、意外な動きが生じていることに気づかされる。中国医薬品大手の上海復星医薬集団が昨年12月中旬、「政府からの使用許可を条件に独ビオンテックからコロナワクチンを少なくとも1億回分購入する契約を結んだ」と発表した。

 12月下旬には国営メディアは「人民解放軍の軍事科学院らがメッセンジャーRNA型のコロナワクチンの製造施設の建設を開始した」ことを報じた。臨床試験の初期段階にあるが、8カ月以内に利用可能になるとしている。製造施設の第1期の年間生産能力は1億2000万回分になる見通しとのことだが、中国はこの技術を自主開発したのだろうか。昨年7月30日付ロイターが「中国政府とつながりのあるハッカーらがコロナワクチンを開発している米モデルナを標的としていた」と報じていたことが気になるところである。

 ここから先は筆者の憶測にすぎないが、中国のワクチン外交の真の狙いは「国内でメッセンジャーRNA型のワクチン開発に目途が立ったことで、邪魔になった粗悪品(不活化ワクチン)を一掃するため」ではないだろうか。そうだとすれば、粗悪品と知らずにワクチン接種を行う国々からすればたまったものではないだろう。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員
2021年 現職
独立行政法人 経済産業研究所

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