東芝、車谷社長“電撃解任”、CVCとの関係に疑惑…問われる藤森・社外取締役の責任の画像1
東芝の事業所(「Wikipedia」より/Waka77)

 東芝は4月14日、車谷暢昭社長兼CEOが辞任し、後任社長兼CEOには前社長の綱川智会長が返り咲いた、と発表した。同日午後に開いたオンライン記者会見に出席したのは永山治取締役会議長(社外取締役、中外製薬名誉会長)と綱川氏。永山氏が「本人(車谷氏)から辞任の申し出があり、受理した」と説明。個人的な理由で辞任したで押し通した。

 車谷氏は取締役会を含めて全役職を辞任した。「事実上のクビ」(関係者)であることは明らかだ。車谷氏は会見を欠席した。永山取締役会議長などが英投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズの買収提案に至る経営姿勢を問題視し、14日の臨時取締役会で解任動議を提出するとの見方が急浮上していた。先手を打って車谷氏が辞任を表明したわけだが、異常事態であることに変わりはない。

 車谷氏が辞任に至る内幕を4月15日付毎日新聞(朝刊1面)が明らかにしている。

<関係者によると、3月ごろに取締役候補らを選定する指名委員会が車谷氏に対し、次回の定時株主総会では「再任しない」と通告。本人も受け入れ一旦は辞意を固めていた>

<指名委員会の通告は、今年に入って幹部社員を対象に実施された年1回の社内調査で、車谷氏への「不信任」が50%を超えたことを踏まえた。「(車谷氏から)頭ごなしに短期的な利益を求められた」といった声も寄せられ、(2015年に発覚した)不正会計問題の前の古い東芝に戻ったようだ」と危機感を募らせたという>

<指名委員会は4月7日に正式に委員会を開いて、車谷氏の解任を決議する予定だった。しかし、前日の6日にCVCから買収提案が届き、そこには買収後も「現体制の維持」が明記されていた。これを受けて車谷氏は態度を一変。辞意を撤回し、続投に意欲を示したという>

 東芝の幹部は言う。

「車谷氏の周辺からCVCは『ホワイトナイト』(友好的な買収者)との評価が出ていたことが、社内の混乱を一層、増幅した」

 足元が揺らいだ車谷氏が自らCVCを呼び込んだのではないのか、との疑惑だ。車谷氏にとって古巣(車谷氏はCVCの日本法人の会長を務めていたことがある)であるCVCの買収提案は実質的な助け船だった。社内の不信感はCVCからの買収提案で最高潮に達した。

策士、策に溺れる

 東芝社内は「車谷氏はCVC関係者と連絡を取り合っているのではないか」(幹部)と疑心暗鬼になった。英CVCによる2兆3000億円の買収提案は、「(車谷氏が)東芝を私物化した動き」で永山氏など他の取締役の認識が一致したということなのだろう。策士、策に溺れるとはこのことだ。だとしたら、もう1人辞表を出さなければならない人物がいる。社外取締役の藤森義明氏である。

 藤森氏といえばLIXILグループの当時のオーナーと手を結び巨額赤字に沈める無謀なM&Aを強行した張本人である。東京電力の社外取締役の時代に「東電の社長就任説」が出て、産経新聞が「社長内定」と大誤報したのは記憶に新しい。現在は東芝の社外取締役。武田薬品工業、資生堂の社外取締役でもあり、「CVCの日本での利益代理人」(M&A業界に詳しいアナリスト)との見方が株式市場で定着している。

 藤森氏は資生堂の魚谷雅彦社長とも親しく、資生堂の社外取締役に招かれた。CVCは2月、資生堂の日用品事業「TSUBAKI」を1600億円で買収した。「椿」は資生堂を象徴する花である。「TSUBAKIの売却は資生堂の心を売ったようなものだ」(関係者)との声が出たが、魚谷社長は封殺した。

 武田薬品工業の社外取締役にもC.ウェバー社長の推挙でなっている。「ここでも市販薬の武田コンシューマーヘルスケア(現アリナミン製薬)をCVCに売ろうと画策したが、うまくいかなかった」(関係者)と噂されていた。CVC日本法人社長の赤池敦史氏は藤森氏が東大在学中に所属したアメリカンフットボール部「ウォリアーズ」の後輩だという。

 車谷社長兼CEOは不可解な動きを見せた。「中2階」に追いやっていた綱川会長が4月7日付で執行役に復帰した。綱川氏は車谷氏の前社長で20年4月、執行役を外れ会長に棚上げされていた。アクティビスト(物言う株主)との対立を解消するメドが立たない車谷氏が、2017年の第三者割当増資時点で社長だった綱川氏にうるさ型の株主への対応を任せる仕事を丸投げしたと、この人事は受け止められた。というのも20年7月の定時株主総会で車谷氏の再任への賛成比率は57%だったのに対して綱川氏は約90%。「物言う株主」たちから信任された実績がある。

 だが、綱川氏の復帰はどうも“車谷解任”の布石だったようなのである。筆者は、人事が発令した時点では、これを見通すことができなかった。車谷氏のやってきたことに一貫性はない。その場その場で自分のための施策をひねり出すことに終始してきた、との辛辣な評価もある。フォア・ザ・カンパニーと対極にある行動に東芝社内から、どうして強い疑念の声が起きないのか不思議だった。組織は頭から腐るというが、上意下達の社風が強い東芝の組織の“再生”を望むのは、ないものねだりなのかもしれないと一時期、筆者は悲観したが、どっこい指名委員会で反乱が起きた。

車谷解任は用意されていた

 車谷解任に前段があったことが徐々に明らかになってきた。

 4月14日付毎日新聞(朝刊総合面)は次のように報じている。

<東芝が幹部社員を対象に実施した社内調査で、車谷氏に対する「不信任」が過半数に上ったことが13日、明らかになった>

<東芝は2016年以降、社外を除く取締役や主要子会社社長、本社の部長級社員ら計100人規模を対象に毎年1回、社長への信任を調査している。15年に発覚した不正会計問題(筆者注:粉飾決算だろうが。なんで不正会計なんだよ、と突っ込みを入れたくなった)に経営トップが関与していたことへの反省から、再発防止のため取り入れた企業風土改革の一環だ>

<関係者によると、車谷氏への「不信任」は21年1月の調査で初めて2割を超えた。2割を超えた場合は精査する規定があり、2~3月に対象をより上級の幹部に絞って再調査したところ、「不信任」が過半数に上ったという>

<この結果は社外取締役で構成する指名委員会が取締役などの候補を選定する際の参考にするが、「不信任が過半となるのは異例」(東芝幹部)という。指名委員会は6月の定時株主総会に向けて、車谷氏を会社側が提案する取締役選任議案に候補として含めるかどうかを慎重に判断するとみられる>

 取締役の選任議案を決める指名委員会は社外取締役5人で構成され、委員長は永山氏である。CVCは車谷氏が退任しても、買収提案を取り下げないとみられている。<CVCが米ベインキャピタルと連合を組み、詳細な東芝買収案を16日をメドに提出する見通し>(4月15日付日本経済新聞1面)との情報が駆けめぐる。東芝への買収提案をめぐっては、香港の投資ファンド運営会社、オアシス・マネジメントが「CVCの買収価格(1株5000円)は低すぎる」と主張。オアシスは「6200円以上が妥当」としている。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT、電子版)は4月13日、「米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が東芝に対して200億ドル(2兆2000億円)を上回る金額で買収提案を検討している」と報じた。「CVCキャピタル・パートナーズ(総額2兆3000億円)を上回る金額を視野に入れている」とした。カナダ系資産運用会社、ブルックフィールド・アセット・マネジメントや米アポロ・グローバル・マネジメントも買収の機会を窺っている。

 車谷氏に対する東芝幹部の強い反発は「厳しく計画達成を迫るくせに、自分では、まったく額に汗をかかない」ことに根差していた。率先垂範しないリーダーは平時でも信用されない。ましてや東芝は今、非常事態なのである。

 東芝に関する一連の報道で独自の視点を示している4月1日付毎日新聞(総合2面)は<独断が招いた「解任」劇>と“車谷解任”を総括した。