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マクドナルドが過去最高益へ…史上最悪の赤字から5年、奇跡の復活劇と緻密な経営戦略

文=編集部
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「マクドナルド HP」より

 日本マクドナルドは4月26日、サイドメニューセット「おもいっきりポテナゲ+選べる2品」をフードデリバリーサービス限定で発売した。コロナ禍を背景に「おうち時間が増えた。家族みんなでシェアしながら楽しめる充実のセット」として展開する。

 セットの内容は「マックフライポテト」Lサイズ2個、「チキンマックナゲット」20ピースに加え、サイドメニュー「サイドサラダ」「えだまめコーン」「シャカチキ」「プチパンケーキ」から2品選べる。デリバリーの単品単価との比較で最大1000円お得とアピールしている。デリバリーサービスごとに設定されたデリバリー料、手数料は別途かかり、デリバリーサービスごとに最低注文料金の設定はある。

 発売に合わせて流れているテレビCMは「おもいっきり、おうち時間」をコンセプトに、家族の会話から生まれる「おうち時間あるある」と訴求。食事シーンを彩る「マックデリバリーサービス」を前面に押し出している。2021年、宅配サービスを全国に広げた。自社で対応できない地域は料理宅配のウーバーイーツジャパン(東京・港区)や出前館(ジャスダック上場)などを活用する。

 自社の従業員によるマックデリバリーサービスが始まったのは10年12月だった。郊外に立地する7店を皮切りに早くから宅配を強化してきた。新型コロナウイルスの感染拡大で宅配や持ち帰り需要が高まった。店内での飲食は前年比で減少したが、テイクアウト・ドライブスルー・デリバリーの売り上げは大きく伸長した。

 現在は、週末ともなると多くの店舗でドライブスルーの列ができるほど人気だ。モバイルで注文した商品を車に乗ったまま店舗の駐車場で受け取れるパーク&ゴーを、800店で実施中である。自社で宅配を対応するマックデリバリーは、コロナ禍前の19年12月期の250店から20年12月期は730店へと2.9倍に増加した。ウーバーイーツ対応店舗は1303店、出前館は20年10月からサービスを開始し、887店まで増えた。

 47都道府県のうちデリバリーサービスを導入できていないのは、青森、岩手など東北4県と福井と山梨県を合わせて6県のみとなった(20年12月末日)。ウーバーや出前館は21年に、対応できる地域を拡大する予定で、これによりマクドナルドは全都道府県で宅配に対応できるようになる見通しだ。

日本マクドナルド社長は日色保氏に交代

 3月26日に開いた定時株主総会後の取締役会で、日色保(ひいろ・たもつ)社長(55)が日本マクドナルドホールディングス(HD)の社長に昇格し、サラ・カサノバ社長(55)は会長になった。

 カサノバ氏は13年8月、日本マクドナルド社長に就任し、14年3月にHD社長に昇格した。就任早々、鶏肉偽装問題が発覚し、客離れが進んだ。15年12月期の最終損益は01年の株式上場以来最悪の349億円の赤字に転落した。「日本のマックは終わった」と囁かれたほどだ。

 15年、マーケティングのプロを多数輩出しているプロクター・アンド・ギャンブル日本法人出身の足立光氏を迎え入れた。ここからマックの復活が始まる。商品名を消費者が決める「名前募集バーガー」、100円追加するとパティ(肉)が2倍になる「夜マック」など話題性のあるキャンペーンを次々と打ち出し集客につなげた。

 家族客を中心に客足が戻り、既存店売上高は新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する20年2月まで51カ月連続で前年実績を上回る記録を達成した。コロナ禍の20年12月期の連結決算の売上高は前期比2%増の2883億円、営業利益は12%増の312億円。売り上げ、営業利益とも過去最高となった。好業績を花道に、カサノバ氏は社長を退いた。

 日色氏はジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人社長から18年、マクドナルドに転じ、19年3月、カサノバ氏の後任としてマクドナルド社長の椅子に座った。スマホアプリで注文や決済を済ませるモバイルオーダーや宅配対応を積極的に進めてきた。

 20年12月期に営業増益になったのは、巣ごもり需要の取り込みに成功したからである。昨年11月からコロナ第3波が襲った。21年1~3月期の既存店の客数は前年同期比4.6%減となったが、客単価は14.2%増と2ケタの伸びを続けた。売上高は9.0%増だった。

 21年12月の連結営業利益は前期比2%増の320億円と、2期連続の最高益を見込んでいる。日色社長は「業績を伸ばす施策には短期的なものと中長期的なものがある」とはっきり区別している。短期はドライブスルーのオペレーションの改善やモバイルオーダー機能の充実、キャッシュレス対応の拡大など利便性を高めていく。中長期では店舗開発に力を注ぐ。新店の出店だけではない。既存店は敷地を広げて建て替え、キャパシティを向上させる。既存店の建て替えは20年に20店で実施し、売り上げが3割伸びた店も出たと日色社長は語る。

 店舗の建て替え、厨房の能力アップ、ITシステムへの投資を加速する。新型コロナ下で宅配の利用が急増したが“コロナ特需”の色彩が濃い。コロナ収束後にものをいうのは店舗の絶対数である。店舗数のピークは02年の3891店だ。業績が悪化したことにより店舗網の縮小を余儀なくされ、3000店を下回る状況が続く。3月末現在で2921店である。3000店の確保を急ぐ考えだ。

 4月、日本マクドナルドは、読売新聞の販売店スタッフがマックデリバリーサービスを担う取り組みを開始すると発表した。日本マクドナルドは、「デリバリーをご利用のお客様が増えている中で、地域を知り尽くしたYCのスタッフの皆さまにマクドナルドの商品を届けていただけることになりました。この協業により、より多くのお客様にできたての商品をお届けしてまいります」としている。

(文=編集部)

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