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新築3500万円時代の横須賀、不動産市場の再編…大手撤退と地元企業の勝ち筋

2026.03.03 06:00 2026.03.03 00:42 企業
取材・文=山口伸
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株式会社ドリームプランニング社長・持田浩司氏

●この記事のポイント
横須賀の不動産市場は、テレワーク移住や建築費高騰を背景に新築戸建価格が3000〜3500万円へ上昇し、中古再販(仕入れ2000万円→販売2500万円)需要も拡大している。一方で採用難や収益性の問題から大手不動産会社が撤退し、地域市場は再編局面に入った。地元企業ドリームプランニングはハウスドゥ加盟によるノウハウ活用と人材戦略で件数重視の営業モデルを確立。米軍関係者需要や駅前再開発(横須賀中央)も追い風に、人口減少下での「残存者利益」を取り込む構えだ。

 都心から約80分。海沿いの街・横須賀の住宅市場が、ここ数年で静かに変わり始めている。テレワーク普及による移住や二拠点需要、建築費の上昇による価格の押し上げなどが重なり、郊外の不動産市況にも“じわりとした熱”が入りつつある。

 一方で、仲介・売買の現場では人手不足が深刻化し、不動産会社の店舗統廃合も全国的に進む。採用競争が激しくなる中、湘南・横浜といった高単価エリアへ経営資源を寄せる動きも見られ、横須賀では大手の撤退が相次いだ。

 こうした環境変化の中で、横須賀市を中心に不動産事業を展開する株式会社ドリームプランニングは、地元で拠点を固めながら事業を拡大している。不動産チェーン「ハウスドゥ」に加盟し、そのノウハウを活用する。同社が見据える横須賀の市場性と戦略について、社長の持田浩司氏に取材した。

●目次

ハウスドゥ加盟によるメリット

 ドリームプランニングは現在、横須賀市で横須賀中央店・横須賀衣笠店の2店舗を「ハウスドゥ」加盟店として運営する。ハウスドゥは東証プライム市場上場のAnd Doホールディングスが運営する不動産業のフランチャイズチェーンで、全国に700店舗超を展開している。

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 持田社長は前職でマンションの販売をしており、不動産業として独立した当初は鎌倉・大船を中心に法人向けの物件を手がけていた。後に、個人向けの居住用物件を扱う横須賀へシフトし、10年前にハウスドゥに加盟した。

 FC加盟のメリットについて、持田社長は次のように話す。

「加盟してすぐに売上が増えるということはありませんでしたが、同じFCオーナーと交流する機会が増え、彼らから仲介や人材採用のノウハウを吸収しました。他のFCからの紹介もあり、じわじわと売上が伸びた感じです。加盟時に10人程度だった社員数は現在、30人超まで増えました」(同)

 持田社長は以前、不動産情報サイトや人材採用サイトに広告費をかけるべきではないと認識していたが、他のオーナーが広告費をかけて売上を確保していることを知り、方針を改めたという。

新築の相場は3000万円超、価格上昇が中古需要を押し上げる

 ドリームプランニングは三浦半島で事業を展開している。立地柄、マンションは横須賀中央など一部に限られるため、取り扱う物件の7割は戸建だ。売上の3割は仲介、残りは新築の建売や中古物件の再販が占める。

 横須賀の不動産事情について、持田社長は次のように話す。

「新築戸建の相場は3000~3500万円です。コロナ禍以降、テレワークの普及で都心に住む方が二拠点目に横須賀を選ぶ動きが増え、23年まで不動産価格は2割上昇しました。建築費の上昇も影響しています」(同)

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 東京—横須賀間の所要時間は80分以内。海沿いにありながら通勤圏としても成立する距離感が注目されているという。もっとも、価格上昇が進むと、新築一択だった層が中古へシフトする動きも出てくる。

「新築に手が届かないということで、中古物件を選ぶ人も増えました。弊社では戸建で2000万円、マンションで1500万円の物件を購入し、リフォームして再販しています。例えばリフォームした戸建の販売価格はおよそ2500万円です。ただ、中古の2500万円を購入できる方は、新築物件に手が届く場合もあるので、新築を検討して頂く営業も行っています」(同)

 新築3000~3500万円、中古仕入れ2000万円前後、再販2500万円程度――。価格のレンジが明確になりつつあることは、買い手にとっても「現実的な選択肢」を広げていると言える。

米軍関係者の需要もある「特殊性」――安定需要の一方で取引条件に差も

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 横須賀は米海軍基地がある立地柄、米軍関係者の需要もある。ドリームプランニングも米軍関係者向けに賃貸物件の仲介や住宅の販売を手がけている。

「米軍関係者は駅からの立地を気にせず、比較的広い物件を好む傾向にあります。とにかく庭が広い方が良いようで、5000万円前後の物件を購入されます」(同)

 こうした需要は、横須賀の住宅市場に一定の厚みを与える。一方で、与信や契約条件の違いなど、取引を進める上で一定のハードルが生じるケースもあるという。地域に根を張る事業者として、個々の事情に合わせた対応力が問われる領域だ。

大手が去ったあとの横須賀で事業を強化する

 横須賀では昨年、大手の不動産業者が撤退した。背景には、採用難の深刻化、店舗運営コストの増加など、不動産仲介を取り巻く事業環境の変化がある。加えて、湘南・横浜など比較的高単価なエリアへ経営資源を集約する動きも見られる。

 こうした中、ドリームプランニングは横須賀で地盤を固め、事業を強化する狙いだ。

「今は衣笠で拠点を構えていますが、京急・横須賀中央駅前の再開発に乗じてビルを建て替え、拠点を横須賀中央に動かす予定です。『ハウスドゥ』のブランド力もある意味大手のような存在です。採用を増やし、組織を大きくしたいと考えております」(同)

 横須賀中央駅前では京急などが再開発事業「若松町1丁目地区第一種市街地再開発事業」を進めており、1月21日に着工式が行われた。30年春の開業を目途に、ホテル・住居・商業店舗から成る地上33階建ての高層ビルが建てられる予定だ。中層ビルが中心だった市街地の雰囲気も、大きく変わる可能性がある。

 再開発は、街の回遊性や人の流れ、駅前の賃貸需要などにも影響する。人口減少局面にある都市ほど、限られたエリアへ機能が集約されていく傾向もあるため、駅前の変化をどう取り込むかが事業上の論点になりやすい。

「仲介料」より「件数」を意識する――地域で選ばれる人材づくり

 ドリームプランニングは事業強化にあたって、人材教育に注力する方針だ。持田社長は、社内の指標として“売上効率”だけを追わない姿勢を重視している。

「社員には『仲介料』ではなく、『件数』を意識するように伝えています。両手仲介で売上をあげるよりも、片手の件数を増やした方が良い。他社と一緒に仕事をすることで学べる点も多いからです。住宅の引き渡し後もプレゼントを送る、挨拶するなど、地域と顧客に好かれる人材になるよう教育に注力しています」(同)

 仲介手数料の最大化ではなく、取引の回転と顧客接点を増やす。縮小市場でも一定の取引が残る以上、地元で信頼を積み上げた事業者ほど選ばれやすいという考え方とも言える。

人口減の街でも「残存者利益」はある。問われるのは組織の持続力

 横須賀市の人口は1992年の43万人をピークとして減少し続けており、現在では約36.5万人となった。

 人口減は市場縮小を意味する一方、競合が撤退する局面では、既存の需要を残った事業者が取り込む余地も生まれる。いわゆる「残存者利益」を確保できるかどうかは、地域内での信用、そして採用・教育による組織の持続力に左右される。

 ドリームプランニングは、横須賀での顧客対応力を強みに、拠点の再配置と人材育成を進めながら、地元での存在感を高めようとしている。

(取材・文=山口伸)

山口伸

山口伸/ライター

化学メーカーに勤めながら副業でライターをしている。本業は理系だが趣味で経済関係の本や 決算書を読み漁っており、得た知識を参考に経済関連の記事を執筆する。取得した資格は簿記 、ファイナンシャルプランナー。

X:@shin_yamaguchi_

公開:2026.03.03 06:00