ビジネスジャーナル > 企業ニュース > オカムラが脱オフィス家具メーカーへ

オカムラが脱・オフィス家具メーカーへ…2035年を見据えたリブランディングの真意

2026.06.04 05:55 2026.06.04 00:16 企業
取材・文=福永太郎

オカムラが脱・オフィス家具メーカーへ…2035年を見据えたリブランディングの真意の画像1

●この記事のポイント
オカムラは2026年6月、「オフィス家具メーカー」から「人を起点に場づくりを担う社会インフラ企業」への転換を掲げ、リブランディングを実施した。4事業を「HUMAN-ORIENTED COMPANY」の理念で統合し、2035年までに営業利益年平均成長率10%以上、営業利益率10%以上、ROE12%以上を目指す。成熟したオフィス家具市場で、空間設計や物流ソリューションを含む総合提案型企業への変革を進める。

 株式会社オカムラは2026年6月1日より、中長期の経営戦略の一環としてリブランディングを実施した。新しいコーポレートブランディングでは、社会のインフラとしてあらゆる環境づくりを手掛ける唯一無二の会社として「最も信頼あるブランド」を構築することを目指す。メディア向けのラウンドテーブルでは、「2035年までにオカムラが目指す姿とリブランディング」というテーマのもと、リブランディングの背景や今後の戦略が語られた。

●目次

事業ごとのバラバラな「オカムラ像」を束ね直す

オカムラが脱・オフィス家具メーカーへ…2035年を見据えたリブランディングの真意の画像2
当日、登壇した株式会社オカムラ代表取締役 社長執行役員 中村雅行氏

 今回のリブランディングの出発点として、まず事業ごとに見えている「オカムラ像」がバラバラになっている現状を確認した。オカムラはこれまで「オフィス環境」「商環境」「物流システム」「パワートレーン」という4つの事業を展開してきたが、オフィスの顧客は物流の仕事を、物流の顧客は店舗の仕事を十分に知らない。こうした状況を整理し直し、「オカムラは何者か」を一つの軸で示すことが、今回のリブランディングで掲げたテーマの一つだ。

 分散して見えがちだった事業群を、「場づくり全般を任せられる会社」という一つの像に束ね直すことで、ブランド価値を高めるとともに、既存顧客とのあいだで新たな取引機会を広げ、中長期的な収益機会の拡大を狙う試みともいえるだろう。

 オカムラのイメージを統一するために掲げられたのが、「HUMAN-ORIENTED COMPANY(ヒューマン オリエンテッド カンパニー)」(人を起点に考える企業)という2035年までのアンビションだ。人を想うことを出発点に「場づくり」という事業を通じて、すべての人が活き活きと働き暮らす社会を目指すこの長期ビジョンは、2018年から掲げてきた「人を想い、場を創る。」を具体化させたもので、4つの事業を貫く共通の軸として位置づけられている。

 そのうえで、2035年に向けて「営業利益の年平均成長率10%以上」「営業利益率10%以上」「ROE12%以上」という3つの数値目標を掲げた。2026〜2028年度を中期経営計画の期間とし、この3年間を収益性のばらつきが大きくなった事業の構造改革と生産性改善に充てたうえで、その先の持続的な成長につなげていく考えだ。

オカムラが脱・オフィス家具メーカーへ…2035年を見据えたリブランディングの真意の画像3
今回のリブランディングでは、目指す姿を象徴する新たなシンボルマークも制定された。

3つの新セグメントが示すオカムラの次の一手

 長期ビジョンと収益目標を掲げたうえで、オカムラは「HUMAN-ORIENTED COMPANY(ヒューマン オリエンテッド カンパニー)」(人を起点に考える企業)というコーポレートブランドを軸に、事業ポートフォリオを組み替えていく方針を示した。その一環として、「オフィス環境事業」「商環境事業」「物流システム事業」といったセグメントの名称を見直し、それぞれの目指す姿を打ち出している。

オカムラが脱・オフィス家具メーカーへ…2035年を見据えたリブランディングの真意の画像4
これまでのオカムラの事業のセグメント

 オフィス環境事業は「ワーク&ライフクリエイション事業」と名称を改め、働く場や暮らす場までを含む「人が活きる空間づくり」のリーディングカンパニーを目指す。とりわけ、世界No.1のタスクチェアメーカーを目標に、グローバル市場で競争力の高い製品づくりを進めていく考えだ。

 商環境事業は「コマースソリューション事業」となり、店舗設計に加えてデジタル技術を活用した運用支援までを担う総合ソリューションプロバイダーを志向する。体験価値を提供する商業施設の空間プロデューサーとしての役割も打ち出し、リアル店舗の価値向上に貢献していきたい考えだ。

 物流システム事業は「スマートロジテック事業」として、コンベヤや自動搬送機器といった個別機器の販売にとどまらず、物流センター全体を設計できる会社への転換を掲げる。業界内ではまだ規模が小さいことを踏まえ、成長が見込めるEC分野や医療機器領域に領域を絞って特化し、ソリューション提案と販売を強化していく方針だ。

 セグメント名称の見直しを通じて、製品単体ではなく「働く場」「商いの場」「物流の現場」といったシーンごとに、自社の強みをどう組み合わせて提供するかを明確にしようとしていることがうかがえる。

飽和市場でどう成長するか

 当日は記者との質疑の時間もあり、今後10年を支える成長ドライバーについて、株式会社オカムラ代表取締役の中村雅行氏が「飽和市場でどう成長するか」という視点を鍵として語った。

 オフィス家具市場では、従来型のデスクやスチールキャビネットはすでに広く行き渡っており、さらに出社率の低下やフリーアドレス化の浸透によって、一人一台の固定デスクを前提とした需要は伸びにくくなっている。その一方で、チームで使うテーブルやソファ席といった可動性の高いルースファニチャーや、リラックスしながら働けるラウンジ家具など、コミュニケーションや気分転換をしやすくするためのアイテムへのシフトが進んでいる。

 こうした前提のもと、成長の源泉として挙げたのが「買い替え需要をいかに生み出すか」だ。象徴的な例として紹介されたのが上下昇降デスクである。従来のデスクという身近なアイテムに昇降用のモーターを組み合わせることで、「健康」という付加価値を生み出した。

 中村氏は、この考え方を「ゼロから一ではなく、一を千にするイノベーション」と表現する。既存製品に新たなコンセプトを重ね、使い方や価値を再定義することで、同じカテゴリーの中に新しい選択肢と需要を生み出していく。それが、成熟市場で成長していくうえで重要だという認識だ。専業メーカーがひしめく市場においても、新たな提案を積み重ねることが成長につながるというスタンスを示したといえる。

 今回のリブランディングは、「人を起点にした場づくり」という言葉で4つの事業を束ね直し、オカムラが社会インフラ企業としてどんな役割を果たしていくのかをあらためて示そうとする試みだ。ロゴやスローガンの刷新にとどめず、自社の位置づけや事業の組み立て方までセットで問い直すことが、リブランディングを検討する企業にとっての重要な視点になりそうだ。

(取材・文=福永太郎)

福永太郎

福永太郎/フリーランス編集者・ライター

ライフスタイル系メディアの家電記事の担当を経て独立。現在は複数のWebメディアに寄稿。
福永太郎プロフィール

X:@fukunaga_taro

公開:2026.06.04 05:55