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サム・アルトマンのWorldが重大発表…World Cardが金融に革命か

2025.05.01 2025.05.22 21:14 企業
「At Last」で講演するサム・アルトマン氏
「At Last」で講演するサム・アルトマン氏

●この記事のポイント
・サム・アルトマン氏らが共同設立者に名を連ね、Worldcoinなどを手掛けるWorldが、イベント「At Last」を開催中。
・そのなかで「Orb Mini」のリリース、Visaなど他社との連携強化、スーパーアプリ化などが発表された。
・新プロダクト「World Card」はWeb3とリアル経済の融合を象徴か

 サム・アルトマン氏(OpenAIのCEO)とアレックス・ブラニア氏(Tools for HumanityのCEO)ら、注目のスタートアップ・Worldの共同設立者が、米国で2025年4月30日(日本時間5月1日)にイベント「At Last」に出演。Worldcoin (ワールドコイン:WLD)、World ID、World Appなどの新たな取り組みについて語り、新機能「World Chat」の導入や、新たなグローバルパートナーシップ「Razer」といった重大な発表を行った。イベントにはBBCやワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルなど世界から約25のメディアが来ているなか、在米支局を持たない日本のメディアとしては唯一、BUSINESS JOURNALが現地取材に入っている。会場には約1000人のゲストが出席して熱気に包まれた。現地からのレポートを交え、イベントの内容をお伝えする。

●目次

オープニングは熱気に包まれた
オープニングは熱気に包まれた
質疑応答も活発に行われた
質疑応答も活発に行われた

新プロダクト「World Card」を発表

 イベントではサム・アルトマン氏が「人間の本人確認や価値の交換について明確なニーズがあった。そしてクレイジーな方法を考えついた」と語った。

 続けて、米国でWorld関連のサービスを5月1日から開始することを発表し、ついに米国でも展開することが明かされた。虹彩認証システム「Orb」については「Orb Mini」を2026年にリリースする。初のモバイルバージョンで、どこでも認証が可能になる。

orb miniが発表された
orb miniが発表された
発表会会場の手前には大きなスペースがあり、レセプションイベントが開かれており、そこでは新しいオーブの体験もできた
発表会会場の手前には大きなスペースがあり、レセプションイベントが開かれており、そこではorbの体験もできた

サム・アルトマンのWorldが重大発表…World Cardが金融に革命かの画像1

orb miniが発表された

 他社との連携を強化していく方針も明確にした。アレックス・ブラニア氏は「World IDのゲーム、デーティング、ソーシャル利用に注力し、本人確認などに役立てたい」と述べ、マッチングアプリ・Tinderを運営するMatch Groupとの提携を発表。

tinder運営会社との提携開始が発表された
tinder運営会社との提携開始が発表された

 World Appのサービスも拡充していく。決済大手Visaと連携しWorldカードを発行。Circleとの連携でステーブルコインの提供も拡大していく。Stripeとも提携するなど、使えるサービスが増えて決済がより便利になる。アレックス・ブラニア氏は「成功すれば個人や行政、企業など誰にとっても重大なインフラになる。だからオープンプロトコルにする必要がある」と力強く述べた。Worldは「人類のためのスーパーアプリ」になることを目指していくとも宣言した。

スーパーアプリ構想
スーパーアプリ構想

 今回のイベントで注目すべきは、新プロダクト「World Card」の発表だ。決済大手Visaと連携しWorld Cardを発行。ポストAGI(汎用人工知能)ワールドの金融のビジョンを実現すべく、世界中の1億以上の店舗で利用を可能にする。

発表会会場の手前に大きなスペースがあり、レセプションイベントが開かれ、新しいorbを体験できた
発表会会場の手前に大きなスペースがあり、レセプションイベントが開かれ、新しいorbを体験できた

World Networkとは

 Worldは、Worldcoinなど一連のWorldプロジェクトを展開する。2024年10月にリブランディングを行い「リアルな人々のネットワーク」を標榜する。2019年に設立され、米サンフランシスコと独ミュンヘンに拠点を置くTools for Humanityが開発しており、創業者にはChatGPTで時代の寵児となったOpenAIのCEO、サム・アルトマン氏も名を連ねる。World Networkは「すべての人にIDを。金融インフラ、そしてコミュニティを。」というキャッチコピーのもとにサービスを展開する。AIボットなどの進歩により、今後はインターネット上でAIと人間の識別がますます難しくなってくることが見込まれる。このデジタル・アイデンティティの問題を解決し、ゆくゆくはユニバーサル・ベーシック・インカムを提供するシステムに発展させることを意図しているといわれている。

 イーサリアムといった既存のブロックチェーン技術を有効活用する一方で、AIの視点が色濃く入っているのが特徴だ。「World」(世界)というブランディングからして野心的だ。世界中でテクノロジーのインフラになることを目指しており、既存の金融システムの恩恵を受けられない層が多く残る開発途上国などで積極的にプロモーションを行っている。World Appは、25万以上ダウンロードされており、ネットワークアクセスをタイ、インドネシア、フィリピンにも拡大。

 テクノロジーを開発する一方で、人間中心主義を推し進めているのが興味深い点だ。AIサービスを次々とリリースしてAIを熟知しているからこそ、その先々で人々や社会が直面する問題を察知し、先回りしてソリューションを開発しているようだ。自分たちのサービスで世界を変えることで、また新たなニーズを生み出している。

 これまでにリリースされた主な機能には次のようなものがあり、相互に関連しあってサービスを充実化させている。

・Worldcoin
 ブロックチェーン技術を用いた分散型のデジタルトークン。

・World ID
 生体認証デバイス「Orb」で虹彩をスキャンして本人確認を行い、AI時代の「本物の人間」を匿名で証明する。

・World App
 World IDやウォレットへアクセスできる独自アプリ。

・World Chain
 既存のブロックチェーン技術(イーサリアムなど)を活用し、高速で低コストな取引を可能にする人間のためのブロックチェーン。

(文=Takuya Nagata/作家、社会開発家、テクノロジー・エキスパート)

会見会場には世界中から主要メディアが集まった
会見会場には世界中から主要メディアが集まった

Takuya Nagata/作家、社会開発家、テクノロジー・エキスパート

Takuya Nagata/作家、社会開発家、テクノロジー・エキスパート

小説、絵本、学術書などを執筆。テクノロジー、モビリティ、宇宙、社会開発、文化、フットボールが主な研究分野。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football (PROBALL)を発表。宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』を企画。単身渡欧し英国立大学UCAの選手兼監督やスペインクラブのコーチを歴任。かつてブラジルCFZ do Rioに留学し、浦和レッズで欧州遠征。“捨て身”のスライディングタックルを必殺技とし、ついたあだ名がナガタックル。イングランドでラグビーもプレー。
著書: https://www.amazon.co.jp/-/e/B08Q4JPWRN
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