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大阪市内は坪400万超、近畿新築マンション5.7%高騰…大手独占で地場業者が悲鳴

2026.07.24 05:55 2026.07.23 19:10 経済
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=伊藤健吾/不動産アナリスト

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●この記事のポイント
不動産経済研究所によると、2026年上半期の近畿圏新築マンション平均価格は5453万円で前年比5.7%上昇、㎡単価は6年連続で過去最高値を更新した。一方大阪市は供給増で平均価格が2.9%下落するも、梅田・中之島は坪400万円超で高止まり。建築費高騰と大手寡占が地場業者を圧迫する市場構造の変化を解説する。

 不動産経済研究所が2026年7月21日に発表した2026年上半期(1〜6月)の近畿圏(大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、和歌山の2府4県)新築分譲マンション市場動向によると、1戸当たりの平均価格は5453万円となり、前年同期比5.7%の上昇となった。㎡単価は98万円で前年同期比2.1%上昇し、1973年の調査開始以来、上半期としては6年連続で過去最高値を更新している。

 同日発表された首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)のデータでは、1戸当たり平均価格が初めて1億円の大台を突破し、1億135万円(前年同期比13.1%上昇)となったことも話題になった。東京23区の平均価格は1億4249万円に達している。近畿圏の上昇率は首都圏ほど極端ではないものの、「もはや一部の富裕層しか新築マンションに手が届かない」という構図は、大阪・京都・神戸にも着実に広がりつつある。

 ただし、今回の統計を仔細に見ると、単純な「全域一律の高騰」ではなく、エリアごとにかなり異なる動きを見せている点が興味深い。まずはこの実態から見ていきたい。

●目次

「都心は下落、郊外・近隣都市は急騰」という逆転現象

 近畿圏全体の平均価格は5.7%上昇したが、内訳を見ると意外な事実が浮かび上がる。中心部である大阪市の平均価格はむしろ4813万円と、前年同期比2.9%の下落となっているのだ。一方で平米単価は115.9万円と0.2%の微増にとどまっており、大阪市は「発売戸数が2773戸(前年同期比15.5%増)と大幅に増えたことで、平均価格を押し下げた」という構造変化が起きていると見られる。契約率は79.2%と好調で、需要そのものが減っているわけではない。

 これに対し、神戸市の平均価格は6593万円(前年同期比28.7%上昇)、京都市は6559万円(同14.9%上昇)と、大阪市を上回るペースで値上がりしている。ただし両市とも発売戸数は神戸市が396戸(同31.1%減)、京都市が924戸(同30.4%減)と大きく減少しており、供給戸数が絞られる中で高価格帯の物件に販売が偏った可能性がある。大阪府下(大阪市を除くエリア)も発売戸数1976戸(同33.1%増)、平均価格5501万円(同11.1%上昇)と、供給・価格とも伸びている。

 つまり実態は、「大阪市中心部が坪単価で突出した高値圏を形成する一方、これまで比較的手頃だった神戸・京都・大阪府下・滋賀(平均4356万円、発売戸数227戸で同14.6%増)にも価格上昇が波及している」という二段構えの構図だ。都心部を諦めた実需層が郊外・近隣都市に流れ込み、そこでも価格上昇圧力が強まっている──これが今回のデータから読み取れる、より正確な実像である。

「年収1000万円でも大阪市内は厳しい」高額エリアの実勢

 もっとも、大阪市の平均価格が下がったからといって、都心のタワーマンションが値下がりしているわけではない点には注意が必要だ。梅田・堂島・中之島エリアの再開発マンションは、依然として坪単価500万円前後という水準で取引されている。中之島エリアで販売中の定期借地権付きタワーマンションは平均坪単価が500万円前後とされ、周辺の中古タワーマンションでも坪単価400万円台での成約事例が目立つ。

 大阪市全体の平均価格が下落したのは、こうした超高額の都心タワー物件だけでなく、周辺区や中規模物件の供給が増えたことで「ミックス効果」が働いたためだと考えられる。都心の一等地に限れば、価格水準そのものは高止まりしているとみるのが実態に近いだろう。

「大阪市の平均価格だけを見て『値下がりした』と判断するのは早計です。実際には供給された住戸の立地・規模の構成が変わっただけで、梅田・中之島など駅近の再開発エリアは依然として坪400万〜500万円クラスの高値圏にあります。実需層にとって『大阪市内で新築を買う』というハードルは、この1年でむしろ上がったと見るべきでしょう」(不動産アナリストの伊藤健吾氏)

なぜ高騰は止まらないのか…土地代と建築費のダブルパンチ

 価格上昇の背景には、複合的な要因がある。第一に、駅近・再開発エリアなど供給が限られる好立地をめぐる用地取得競争の激化がある。大手デベロッパー同士が同じ土地を奪い合う構図が続き、仕入れコストそのものが高止まりしている。

 第二に、建築費の高騰だ。建設物価調査会の指数によれば、木造住宅(東京)の建築費指数は2026年4月時点で前年同月比5.9%上昇しており、公共工事設計労務単価も2021年から2024年にかけて約15%上昇するなど、人手不足と資材価格上昇が構造的に続いている。共同通信の報道でも、首都圏マンションの平均価格上昇について「人手不足や資材価格の上昇による建設費の高騰が影響した」と分析されている。円安による輸入建材コストの上昇、2024年問題に伴う建設業の労務費上昇、省エネ基準適合義務化によるコスト増なども重なり、デベロッパー側からすれば「価格を下げたくても下げられない」状況が続いているのが実情だ。

「建築費の高騰は一時的なものではなく、構造的な要因が積み重なった結果です。木材・鋼材の輸入コスト、人件費、省エネ基準対応など、どれも短期間で解消する見込みは薄い。デベロッパー各社は『高くても売れるエリア』に供給を集中させざるを得ず、それが結果的に価格の二極化を加速させています」(同)

地場業者は生き残れるか…進む「大手一強」構造

 こうした環境変化の中で、深刻な影響を受けているのが中小・地場の不動産デベロッパーだ。住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスの7社(通称「メジャーセブン」)は、それだけで全国の新築分譲マンション供給戸数の約3分の1を占めるとされる。用地の仕入れ合戦が激化するほど、資金力に勝る大手が有利になる構図は今後も強まりやすい。

 業界では、新築マンション事業から撤退したり、他社に吸収合併されたりする中堅デベロッパーの動きも報じられている。用地取得コストと建築費がともに上昇する中で、10〜20戸規模の小型マンション開発では採算が合わなくなりやすく、規模の経済を働かせられる大手・準大手でなければ利益を確保しづらいというのが業界関係者の見立てだ。結果として、複合的な大規模再開発やタワーマンション開発に対応できる大手デベロッパーと、それ以外の事業者との差が広がりやすい環境になっている。

 こうした状況を受け、地場の中小デベロッパーの中には、新築分譲事業から中古リノベーション再販、収益不動産(賃貸マンション)開発、戸建て分譲へと軸足を移す動きも見られる。新築マンション用地の獲得競争から距離を置き、大手が手を出しにくいニッチな領域で生き残りを図る戦略だ。

 関西地方のデベロッパー幹部は、「正直なところ、大阪市内や京都市内の一等地で大手と同じ土俵で用地を取り合うのは、もう現実的ではありません。私たちのような規模の会社は、大手が採算に合わないと判断する中古再生や小規模の収益物件、戸建てのほうに活路を見いださざるを得ないのが実情です」と嘆く。

「売れる郊外」と「取り残される郊外」

 今後の焦点は、この高騰局面がいつまで続くかである。不動産経済研究所は2026年7月から12月の発売戸数を約8700戸、通年では約1万6000戸と、2025年(1万6922戸)をやや下回る水準になると見込んでいる。契約率は上半期平均で71.7%と前年同期の77.1%から低下し、6月単月では62.8%まで落ち込んだ。販売在庫も6月末時点で3245戸と、前年同月末より697戸積み上がっており、需要の伸びが価格上昇のペースに追いついていない兆候も見え始めている。

 住宅ローン金利の動向も無視できない変数だ。金利がさらに上昇局面に入れば、都心を諦めて郊外に流れた実需層のうち、ギリギリの返済計画で購入した層への影響は小さくない。同時に、「郊外なら安心」という単純な図式も成り立たなくなりつつある。同じ郊外でも、再開発が進み駅からのアクセスが良いエリアと、そうでないエリアとでは、将来の資産価値に大きな差がつく可能性が高い。

 実際、今回のデータでも神戸市や大阪府下のように発売戸数・価格とも上昇したエリアがある一方、京都市や神戸市のように発売戸数を大きく減らしながら価格だけが上がったエリアもあり、供給の絞り込みと価格上昇が同時に進む「選別的な市場」への移行がうかがえる。

 近畿の新築マンション市場は今後、「一等地の高額物件」と「大手が手掛ける郊外・近隣都市の大規模物件」という二つの軸を中心に再編されていく可能性が高い。一般の実需層にとっては、価格だけでなく「誰が、どこに、どのような規模で開発しているか」という供給側の構造まで理解した上で、購入エリアと物件を見極める視点がこれまで以上に求められる局面に入ったといえるだろう。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=伊藤健吾/不動産アナリスト)

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公開:2026.07.24 05:55