なぜ目薬のロート製薬は、痔治療薬「ボラギノール」の天藤製薬を買収したのか?の画像1
ロート製薬 HP」より

 一般用目薬で世界首位のロート製薬(大阪市)は、痔治療薬ボラギノールで知られる天藤製薬(大阪府豊中市、非上場)を買収する。8月末に創業家などから議決権ベースで67.19%の株式を取得する。買収額は非公表だが90億円程度とみられている。

 天藤製薬の創業は江戸時代後期の1813年。初代天津屋藤助が丹波福知山城下にあった元伊勢神社の門前で雑貨商を始めたのが始まり。この神社には100キロメートル離れた京都からの参拝客が多く、参拝客向けの和漢薬を取り扱う薬種商天藤を立ち上げた。

 1921(大正10)年10月に転機が訪れた。8代目天津屋藤助の大槻欽三が天藤薬化学研究所を設立。日本で痔治療薬の新薬製剤第1号となったボラギノール坐薬・軟膏coeaを発売した。大槻氏は京都帝国大学病院に薬剤師として勤務しており、ボラギノールは大学病院の院内製剤として開発した。今日でいう大学発のベンチャーだ。

 商品名のボラギノールは当時の製品の有効成分だった紫根エキスから名付けられた。紫根エキスは染料として使うムラサキの根から抽出した成分で、ムラサキ科のラテン名「Boraginaceae」からとったという。天藤薬化学研究所は京都帝大病院の要請を受け、院内製剤を内務省承認医薬品として開発した。ボラギノールは当初は軟膏として販売されたが、昭和初期には現在のような注入容器に充填した製品をつくり、使い勝手が向上。痔薬メーカーとして全国的に知られるようになる。

 天藤製薬は100年間、痔の治療薬一筋。2021年3月期の売上高は58億円。医療用、一般用ともに高いシェアを持つ。買収された後も天藤は存続し、ボラギノールの製造販売を続ける。

 天藤製薬は武田薬品工業のグループ企業だ。ロートの子会社になった後も武田は引き続き天藤製薬株の約30%を所有する方針である。ロート、武田薬品、天藤製薬の3社が協力してボラギノールの一段上のステージを目指す。

目薬の国内シェアは4割

 ロート製薬は1899(明治32)年に大阪で信天堂山田安民薬房を創業し、胃腸薬「胃活」を発売したのがはじまり。1909年には点眼液「ロート目薬」を発売した。当時の眼科医界の権威であった井上豊太郎博士が処方し、商品名は井上博士の恩師であるロートムンド博士にちなんで命名したという。1961年、大証2部に上場。翌年、胃腸薬「パンシロン」を売り出した。64年、東証・大証1部に昇格する。88年、米メンソレータム社を買収し、経営権を取得した。

 ロートは2019年2月、創業120年を迎えたのを機に、「ロートグループ総合経営ビジョン2030」を制定。その後の10年間で注力する事業領域を明確にした。主力のOTC(一般用)医薬品領域では、「日本におけるOTC医薬品のリーディングカンパニーを目指す」と定めた。

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