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連載「おもちゃの国からこんにちは」第1回

プリキュア、スーパー戦隊が不調?…「日曜朝子ども枠」の異変とTVアニメビジネスの現在

文=kasumi/「プリキュアの数字ブログ」管理人
プリキュア、スーパー戦隊が不調?…「日曜朝子ども枠」の異変とTVアニメビジネスの現在の画像1
テレビ朝日系の日曜朝の伝統枠、「ニチアサ」。テレビ東京系、フジテレビ系も子ども向けのコンテンツをこの時間帯に放送しており、まさに激戦枠だ。

「テレビ放送だけやればうまくいく時代ではない」

 バンダイ代表取締役社長(当時)・川口勝氏は玩具業界誌「トイジャーナル」の2021年新春インタビューでそう語りました。

ニチアサ」コンテンツに今、何が起きているのか? 現状を見ていきたいと思います。

 プリキュア、仮面ライダー、スーパー戦隊。日曜日の朝に放送されているいわゆる「ニチアサキッズタイム」。こっそり楽しみにしているオトナの方も多いと思います。(今は「ニチアサ」の名称は公式では使われていませんが、テレビ朝日系列のものをここでは便宜上そう呼びます)

 2021年8月現在であれば……
・8時30分〜『トロピカル〜ジュ!プリキュア』
・9時〜『仮面ライダーセイバー』
・9時30分〜『機界戦隊ゼンカイジャー』

という編成となっている、日曜日朝8時30分からのこの枠は、2021年現在ですでに事実上37年以上も続いており、「日曜日の朝にアニメや特撮が放送される」のは、もはや「日本の文化」といっても過言ではないでしょう。

 しかしこのニチアサでは昨今、そのメインスポンサーであるバンダイのおもちゃなどの関連商品の売り上げが下降ぎみなのです。

 いったいニチアサコンテンツには今、何が起きているのか?

 バンダイナムコグループの決算数字を読み解きながら、ニチアサ3作品の置かれた状況を見ていきたいと思います。

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テレビ朝日系「ニチアサ枠」の代表格といえば、やはりスーパー戦隊シリーズか。スーパー戦隊シリーズは、1975年に放送開始された『秘密戦隊ゴレンジャー』を祖とする見方が一般的だが、同作が放送されていたのは土曜19時半からであった。(画像は、東映より2021年6月に発売の『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021 コレクターズパック キラメイジャー&リュウソウジャー&ゼンカイジャー 3本セット』DVD版ジャケット)

バンダイナムコの売り上げにおける「ニチアサ」3作品の立ち位置とは?

 まず、バンダイナムコ全体の傾向を見てみます。

 株式会社バンダイナムコホールディングスの2021年3月期の決算短信より、「IP別売上高」の数字が発表されているコンテンツのグループ全体売り上げを見てみましょう。(「IP」とはIntellectual Property、要は知的財産を指します。またアイドルマスターやラブライブ等、大きな売り上げがありながらも「IP別売上高」が出されていない主要コンテンツもバンダイには存在します)

 以下のグラフは、「国内トイホビー」と「国内トイホビー以外」に分けています。

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国内トイホビー:国内で展開している玩具やプラモデルなどのほか、食玩、ガチャポン、文具、生活用品など/ 国内トイホビー以外:家庭用ゲームやスマホアプリ等、映像音楽コンテンツやIP事業、イベント催事やアミューズメント施設、海外展開など

 この内訳を見ると、たとえば一番売り上げの大きい「DRAGON BALL」は2020年度の売上高は1274億円ですが、内訳的には「国内トイホビー」が154億(12.1%)、「国内トイホビー以外」が1120億(87.9%)。つまり「DRAGON BALL」というコンテンツは、「国内でおもちゃを売る」商売がメインではないことわかります。では何を売っているのかというと、決算短信を見ると、ワールドワイドに展開しているゲームアプリや家庭用ゲームが大きな売り上げを占めているようです。

 一方、売り上げ的には2番手の「機動戦士ガンダム」は、ガンプラやハイターゲット層のおもちゃなどが好調に推移した国内トイホビーが410億(43.2%)に対し、「国内トイホビー以外」が540億(56.8%)と、約半々となっています。短信を読むと、「ガンプラやホビー以外」とは、家庭用ゲーム、スマホアプリのほか、主力となるのはアニメ作品や、海外展開等の収入のようです。

 売上高で見てしまうと割合がわかりにくいので、「国内トイホビー」と「それ以外」をコンテンツ別に百分率で示し、どのIPがどの程度「おもちゃ等の販売に依存しているのか?」をグラフにしました。

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子ども向けジャンルは「国内トイホビー」の割合が高く、逆に大人向けにも展開されているジャンルは「国内トイホビー以外」の割合が高いことがわかる。

 プリキュア、アンパンマン、スーパー戦隊、仮面ライダーなどいわゆる「子ども向けジャンル」は「国内トイホビー」の割合が高く「おもちゃ等の関連商品」に依存していることがわかります。

 一方、DRAGON BALL、ワンピースなど、比較的中高生から大人向けに展開されることの多いジャンルでは「トイホビー以外」の割合が高く、物理的なおもちゃを売る商売ではなく、非物理的なデータや映像、体験などを売る商売であることがわかります。「機動戦士ガンダム」「ウルトラマン」「アイカツ!」などは、それらが約半々とバランスがよいですね。

 プリキュアにいたっては、100%「国内のトイホビー売り上げ」となっています。(これはプリキュアの場合、アニメ制作は東映アニメーションが担い、バンダイ側にはカウントされていないことが大きな理由なのですが)

 仮面ライダーやスーパー戦隊も、80%以上を「国内トイホビー」が占め、「国内でおもちゃなどの関連商品を売るビジネス」であることがうかがえますね。

 というわけで、仮面ライダー、スーパー戦隊、プリキュアのニチアサ3作品は、バンダイにおいては「テレビ放送と連動し、日本のなかでおもちゃを売る」ビジネスを主軸としていることが、数字からも見て取れたかと思います。

 ちなみに、全部で9つの各コンテンツのここ13年の売り上げの推移については、以下の別記事で簡単に分析してみましたので、ご興味のある方はそちらもご覧ください。

【関連記事「バンダイナムコの“苦悩”…ドラゴンボールからアイカツまでコンテンツビジネスの今を分析」】

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