
ファッション小売業の世界大手3社の直近四半期の業績が出揃った。インディテックス、H&M、ファーストリテイリングは共に前年同期比で大幅な増収、損益も黒字となった。コロナ禍の影響で大幅減収となった前年同期の反動ともいえる。しかし2019年度と同じ水準までの業績回復はほど遠い。
さて、売上規模で世界4位の米ギャップはどうだろうか。同じく直近四半期の売上は大幅増収で、19年度比でも8%増収となった。既存店売上も増収となっている。不採算店舗閉鎖とEC(電子商取引)の成長効果が反映されている。厳しい業績不振が続いていたが、昨年10月に2023年までの経営プランを発表。今後3年間で北米店舗数の35%削減、店舗の8割をモール(日本のショッピングセンターに当たる)外店舗とすること、ECやオムニチャネルの強化などを発表した。
新しいプランは好感を呼び、終値が前日比13.64%増の21.15ドルとなった。2021年度に入っても株価は上昇を続け、5月には昨年末比約1.8倍の36.33ドルを記録した。7月後半も30ドル前後で推移している。この好調のいくつかの要因を探りながら、ギャップジャパンの現状と将来を考えてみたい。
1.ギャップ株価好調の理由

たかぎこういち/技術評論社)
米サンフランシスコに拠点を置くギャップは、2020年度決算では営業損益が8億6200万ドル(930億9600万円)の赤字、税引前損益が11億200万ドル(1190億1600万円)の赤字、当期純損益が6億6500万円(718億2000万円)の赤字となっている。
ここ数年、売上はファストリに抜かれ、米国を代表するファッションブランドの輝きをすっかり失い大苦戦が続く。日本においても現在では、アウトレットモールブランド、子供服ブランドとなっている。往年のモダンなアメリカンカジュアルスタイルの人気を知る著者としては、淋しい限りである。
昨年発表された23年までの経営戦略では、「GAP」と「バナナ・リパブリック」の北米店舗の削減だけでなく、1987年に進出したイギリス、アイルランドの81店舗の全店閉鎖を決定。同じくヨーロッパのフランス、イタリアの店舗は21年7月までに外部企業へのFC(フランチャイズ)移行を検討するとしている。北米も含め撤退に約2億ドル(約216億円)を計上し、年間最大4,500万ドル(約48億円6000万円)の賃料削減を見込んでいる。
その一方、日本市場から完全撤退した「オールドネイビー」は室内着などを中心に好調に推移し、売上増を計画。グループ内で最も成長しているアスレジャーブランド「アスレタ」の売上20億ドルへの倍増計画やカナダ進出も発表。さらにセレクトショップの「インターミックス」、子供服の「ジャニーアンドジャック」を売却。「アスレタ」のメンズ版「ヒルシティ」事業も中止した。