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IOCバッハ会長、来日中の異常な特別待遇は“首相官邸マター”だった…外務省「接遇行っていない」

文・構成=編集部
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東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会公式サイトより

 東京オリンピック(五輪)のために来日し、その動向が注目されていた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が23日にも再び来日するために調整中であることが明らかになった。複数の報道によると、24日の東京パラリンピックの開会式に合わせて来日する方針で、今回は隔離期間を経ずに開会式に出席するのだという。

 前回、バッハ氏は7月8日に来日。プレーブックに則り3日間の隔離期間を経て、各五輪関連行事に出席し、16日には被爆地の広島市中区の平和記念公園を訪問。22日には皇居・宮殿で、IOC関係者らとともに天皇陛下に面会した。各社報道によるとその際、陛下はバッハ氏に「アスリートの皆さんが健康な状態で安心して競技に打ち込み、その姿を通じて、新しい未来へと希望の灯火がつながれる大会となることを願います」とのお言葉を述べられたという。

バッハ氏に対し「外務省は接遇していない」

 日本政府によるバッハ氏への接遇は、他国の国家元首を迎えるかのような有様だ。日本の外交上、最も重要なパートナーとされる米国のジョー・バイデン大統領が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で来日すらしていない状況下で異例の待遇だろう。

 他国の国家元首とほぼ同様の待遇にも見えるが、日本政府はバッハ氏をどのような存在と位置づけているのだろうか。日本政府の対外関係窓口である外務省に、当編集部は次のような質問をしてみた。

「一般的に我が国の国内法や外交儀礼上、各国元首や首脳・閣僚、外交官、駐日大使、全権大使及び国連などの国際機関などの実務関係者を『外国要人』として接遇されていることと存じます。

 そのうえでお伺いしたいのですが、今般の東京オリンピックで来日されていた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長ら同委員会の幹部は、国家としての接遇が求められている、上記のような『外国要人』のカテゴリーに入るのでしょうか」

 これに対し、外務省報道課は次のように回答した。

「外務省は、東京オリンピックに際し、バッハ会長等のIOC幹部への接遇を行っておりません」

バッハ氏の厚遇は「組織委・官邸マター」?

 バッハ氏は外務省にとっての要人ではないということなのか。本省や在外公館などで勤務した経験のある元外務省職員は次のように話す。

「簡単に言えば今回の件は東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会が全責任を負うマターだということです。組織委は独立した組織ですが、組織委自体にバッハ氏の来日に伴う入国手続きや警察の警備、接遇などを実施できる許認可権や法的根拠はありません。実務上は組織委が首相官邸に上げ、官邸の承認の上、バッハ氏へのさまざまな対応が行われているというのが実情だと思います。

 天皇陛下との面会に関しては、あくまでIOC内での会合との位置づけのようですね。例えば、皇后陛下は日本赤十字社の名誉総裁なので、国際赤十字の幹部と面会されることもあります。ただ米大統領が訪日できないような状況下です。通常時であれば、問題のないことでも、現状では異例とも厚遇とも言われてしまうのは仕方がないことなのかもしれません。一部報道で言われている通り、バッハ氏の行動は官邸や組織委ですら完全に掌握できていたとは言えないようですから、もはや、日本政府の管轄外の存在となっているのかもしれません」

 やはりバッハ氏は国際的な特権を持っているということなのだろうか。

「平和の祭典」とタリバンのアフガニスタン制圧

 五輪は国際的な「平和の祭典」として尊重されている。バッハ氏自身も、開会式、閉会式で繰り返し各国や各武装勢力間の紛争休止に対する五輪開催の重要性を訴えていた。国連関係機関職員は次のように話す。

「単なるスポーツ大会ではないからこそ、またIOCが国際的な協調と平和を呼び掛ける組織だからこそ、その会長はそれなりに国際的な発言力や権威を有しているのです。ただ、東京五輪でのバッハ会長の動向はそのIOCのトップとしてふさわしいものだったのか疑問なところは多々あるかと思います」

 五輪閉会式翌日の今月9日、バッハ氏がSPや大会関係者らを引き連れ、商業施設「GINZA SIX」など銀座界隈を散策していたころ、アフガニスタンでは反政府武装勢力タリバンによる同国主要都市への電撃戦が佳境に入っていた。時事通信などによると、タリバンは五輪期間中の6日からアフガニスタン全土で攻勢を強めた。そして15日には首都カブールに至った。タリバンによるアフガニスタン全土の掌握は国際社会に深刻な衝撃をもたらし、米英をはじめ各国は大混乱に陥っている。

 前出の国連関係機関職員は話す。

「世界の安全保障に影響が及ぶような紛争が、五輪期間中に進行していたのに、閉会式でそれに対する懸念を表明したり、注意喚起をしたりするようなことはできなかったのでしょうか。世界が注視するイベントで、人道危機を多くの人々に認識してもらう最後のチャンスでした。

 大会期間中に具体的な国名をあげるなど政治的な発言ができないのであれば、水面下で平和実現への働きかけを行うための努力もできたでしょう。少なくとも閉会式の翌日に、銀座界隈をぶらぶらしている場合ではなかったのではないでしょうか。

 それにIOCには1980年のモスクワ五輪は旧ソ連のアフガニスタン侵攻で、米国などがボイコットした苦い記憶があるはずです」

 特権を振りかざすためには相応の義務が伴う。バッハ氏は“高貴なる義務”をしっかり果たせているのだろうか。

(文・構成=編集部)

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