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化学メーカー最大手の名門企業・三菱ケミカルHDが重視する「ゆでガエル理論」

文=編集部
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三菱ケミカルHDが所在する東京・パレスビル(「Wikipedia」より)

 三菱ケミカルホールディングス(HD)は同社初の外国人社長、ジョンマーク・ギルソン氏(57)が誕生して2カ月あまりが経過した。株主総会でのギルソン氏の賛成比率は98.53%。同氏は株主総会で「低炭素経済は化学企業が直面する最大の課題であると同時に、大きな機会だ」と語った。自身のリーダーとしての役割について「事業ポートフォリオのなかに、常に成長産業と、その資金源となる大規模な高収益事業をうまく組み合わせていくことだ」と説明。30もの市場や製品セグメントに分かれる事業の「選択と集中」を進めると述べた。

 指名委員会の橋本孝之委員長(日本IBM元会長)はギルソン氏を社長に選んだ理由を問われ、「事業環境の変化が加速している。過去の延長に未来はない」と指摘。「これまでの延長線上ではない経営が必要になると考えてトップを選定し、その条件に合致したのがギルソン氏だった」と答えた。

初の外国人社長は社外取締役が主導した

 国内最大手の総合化学メーカーである三菱ケミカルHDは異例ともいえる人事に踏み切った。21年4月1日付で越智仁社長が退任し、ベルギー出身のギルソン氏が後任に就くという人事を発表したのは2020年の秋だった。社外から外国人のトップを招聘するのは初めて。三菱ケミカルHDは90年近い歴史を持つ名門。三菱重工業など三菱系企業が集まる「金曜会」でも中核企業である。経営状態に大きな問題があるわけではない。だから今回の人事は産業界で大きな話題を呼んだ。

 新社長の選考を主導したのは社外取締役だ。指名委員会5人のうち4人は社外取締役である。三菱ケミカルHDは2015年、指名委員会等設置会社に移行した。最高実力者の小林喜光会長が「社内の人間だけでは従来の会社の姿に固執してしまう」との思いを強めたのがきっかけだった。「日本の社会に忍び寄る危機への対応が遅れると“ゆでガエル”になってしまう」というのが小林氏の持論だ。

 ギルソン氏は欧米の化学メーカーで事業責任者や経営トップを歴任してきた。直近までフランスの化学メーカー、ロケット社でCEO(最高経営責任者)を務めていた。三菱ケミカルHDのトップとなったギルソン氏の初仕事は1000億円強を投じ、米国に自動車や塗料に使う樹脂原料の工場を建てることだ。4割の世界シェアを持つアクリル樹脂原料「MMA」を米国で増産する。車のランプカバーや看板、住宅建材などに使われる汎用性の高い樹脂である。バイデン政権が打ち出した「バイ・アメリカン」の強化策をにらみ、米国市場へのシフトを強めた。

外国人社長の光と影

 外国人社長は日本の上場企業ではほんの一握りだ。日本的慣行や社内のしがらみにとらわれない大胆な経営改革が実行できると、期待されることが多い。だが、外国人社長には光と影がつきまとう。日産自動車の再建に辣腕をふるい、カリスマ経営者として名を馳せたカルロス・ゴーン元会長は、会社法違反(特別背任罪)などで起訴され、保釈中にレバノンに逃亡した。

 武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEOは19年1月、日本企業のM&Aとして過去最大の約6.2兆円を投じアイルランド製薬大手シャイアーを買収し、世界トップ10入りを果たした。医療用医薬品事業に経営資源を集中する一方、大衆薬事業を米ファンドに売却するなど、事業の入れ替えを積極的に進めている。三菱ケミカルHDのギルソン氏も事業の「選択と集中」を進めると明言している。

(文=編集部)

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