
森友文書改ざん当時の元近財局長、日本郵便専務に就任
「政府は、面倒はなんでも日本郵政に押し付ければいいと思ってるんだよ」
学校法人森友学園をめぐる公文書改ざん事件の発生当時、財務省近畿財務局長だった美並義人氏が1日付で日本郵政傘下の日本郵便の専務執行役員に就任したことを受け、所管する総務省キャリアはこう吐き捨てた。美並氏は元財務官僚であり、本来なら民間金融機関など同省の縄張りに天下るのが普通だが、「森友問題の社会的関心は高く、スネ傷の元幹部の引き受け手がいなかった」(同)ことが背景にある。
自殺した近畿財務局職員の遺書に「美並氏が改ざん指示を後押し」の記述
美並氏は1984年に旧大蔵省に入省。2016年から近畿財務局長を務め、文書改ざん問題の監督責任を問われた。この問題に関与し自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんの遺書の中に、美並氏が財務本省からの改ざん指示に「全責任を負う」と発言し部下の後押しをした旨の記述があったが、美並氏は否定。同省の調査でも改ざんの認識はなかったと結論付けられた。18年6月に戒告の懲戒処分を受けたものの、東京国税局長などを経て、今年7月に定年退職したが、「あまりに身内に甘いのではないか」との批判が少なくなかった。
日本郵政の増田寛也社長は美並氏が受けた戒告処分を承知しているとした上で、「マイナス面もあるが、トータルでプラス」「処分を一生背負っていくのではなく、当社で挽回してほしい」と採用理由を説明した。しかし、「グループ内の金融機関のゆうちょ銀行ならまだしも、畑違いの郵便事業で採用するのは違和感しかない」(前出キャリア)。
日本郵便幹部の財務省出身者としては、6月まで米澤友宏氏が副社長を務めていたが、「06年に日本郵政グループが発足した当時に財務省と総務省との主導権争いで親会社の日本郵政に送りこまれた人材で、今回の美並氏とは事情がまったく異なる」(財務省筋)こともそれを裏付ける。日本郵政は政府が筆頭株主であり、「ワケあり人材でもねじ込むことができた」(同)とみられる。
加計学園問題で国会に参考人招致された元経済産業省幹部の柳瀬唯夫氏が、昨年6月にNTT執行役員に就任し事業企画室長という中枢ポストに納まるなど、「モリカケ問題でミソが付いた人材は旧公社系で受け入れる流れができている」(ベテラン自民議員)。
日本郵政、16年の都知事選で落選した増田氏の受け皿になった
日本郵政は門外漢である美並氏を政府から押し付けられた格好だが、日本郵政グループが政治の都合のいいように利用されるのは今回に始まったことではない。日本郵政社長の増田寛也氏にしても、16年の東京都知事選で自民党と公明党の推薦を受けたにもかかわらず、小池百合子現都知事に敗北し、日本郵政が増田氏の「受け皿」になったという見方が少なくない。