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SBI、新生銀行の上場廃止→公的資金返済案は「株主平等の原則に反する」恐れ

文=編集部
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新生銀行(「Wikipedia」より)

 2021年12月、ネット金融大手SBIホールディングス(HD)とSBI地銀ホールディングスが新生銀行に実施した株式公開買い付け(TOB)が成立した。議決権比率は47.77%に達し、SBIは新生銀行を連結子会社にした。

 新生銀行を傘下に収めたSBIHDの北尾吉孝社長は12月22日、記者会見を開き、「新生銀行を地域金融機関の新たなプラットフォーマーと位置付ける」と表明した。SBIHDの地域連合構想は島根銀行、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行、東和銀行、仙台銀行、きらやか銀行、筑波銀行の8行に拡大した。新生銀行を地域連合の中核銀行に衣替えする。

「究極的には新生銀行とSBIHDがシームレスに結びつく体制を築く」。かねてからの持論である「第4のメガバンク」の実現を目指すと宣言したと、金融業界は受け止めた。SBIHDは複数の地銀と資本提携してきたが、地域ごとにバラバラな地銀を取りまとめて「第4のメガバンク」として十全に機能させるには、どうしても中核銀行が必要になる。

 信用金庫には信金中央金庫(信金中金)という中央銀行があり、各信金が経営危機に陥った際の“安全ネット”の役割を担っている。JAバンクには農林中央金庫(農林中金)があり、各地のJAバンクから集めた資金をまとめて運用する巨大ファンドとしての機能をもつ。

 SBIHDはネット証券が母体で、銀行としての機能はなきに等しい。資本参加した地銀は、いずれも規模が小さく、どれもが中核銀行としての機能は期待できない。1998(平成10)年10月23日に一時国有化された日本長期信用銀行を前身とする新生銀行がグループに加われば、同行を中心に地銀をネットワーク化し、地銀再編の口火を切ることができる。

 2019年に始めた資本提携はすでに8行まで拡大したが、それ以外にも「SBI地域銀行価値創造ファンド」を設立し、出資先を増やしている。これら出資先が、今後の地銀再編のカードとなる。新生銀行が信金中金や農林中金のような“中央銀行”となる構想が具体的に動き出すかどうかが焦点となる。

 新生銀行は2月8日に開催する臨時株主総会で経営陣を刷新。SBIHDが選んだ元金融庁長官の五味廣文氏が会長に就任する。五味氏は金融庁の前身である金融監督庁の設立を主導したことで知られており、金融監督庁の検査部長として、新生銀行の前身にあたる日本長期信用銀行の国有化の実務を取り仕切った。旧長銀に引導を渡した当事者なのだ。五味氏は大蔵省から金融庁を分離して以降、日本の金融行政の中心にいたといっても過言ではない。

 現在、金融庁は地銀の競争力の強化と再編を促しており、地銀再編論者である五味氏が「第4のメガバンク」の中央銀行と位置付けられることになる新生銀行のトップに就任すれば、地銀再編の動きが加速する可能性が高い。地銀再編の第2幕の幕開けである。新生銀行の社長にはSBIHDの川島克哉副社長が就く。川島氏は野村證券の出身だ。

新生銀は上場廃止か

 公的資金の完済が最大の課題だ。旧日本長期信用銀行に政府から注入された公的資金のうち3500億円が返済できていない。国は保有する新生銀行株を売って公的資金を回収する必要がある。追加の国民負担を生じさせないためには新生銀行の株価を現在の3倍以上の7450円まで引き上げなければならない。

 北尾氏は昨年12月の記者会見で「7450円と3500億円をいつまでも結びつけて考えるのはおかしい」と指摘し、この返済方法を事実上、否定した。その上で新たな返済方法について「非上場化(上場廃止)の後に新しい優先株を発行する手もある」とした。金融庁などと協議し、詳細を詰めていく考えを示した。

 SBIHDが新生銀行に提示していた公的資金返済案は、SBIHDが新生銀行株を最大48%まで取得した後、新生銀行が自社株買いを実施し、市場価格(時価)で一般株主から株式を取得。SBIHDと国の議決権比率が合計9割となったところで、残る少数株主の株式を強制的に買い取った上で、国の保有株を公的資金が返済できる価格で買い戻すというものだった。

 TOBに反対の姿勢を続けていた当時の新生銀行の経営陣は「あとから高い価格で国の保有株を買い取ることを想定しているのであれば、株主平等の原則に反する」として提案を拒否した。北尾氏は公的資金の返済方法について、新たに「優先株の発行」を持ち出した。北尾氏は、この手法について、政府機関として新生銀行株を持つ預金保険機構の三井秀範理事長の発言がヒントになったと言っている。

 三井氏は昨年12月、報道各社の取材で、「非上場化による公的資金の返済」に関する質問を受けた。「コメントできない」としながらも、一般論としてどうかと問われ、「企業価値を向上させて返済するのが正攻法だ。制度上認められているので(上場廃止の)可能性はゼロではない」と答えた。

 この三井氏の発言を資料として引用し、北尾氏が非上場化を検討する考えを示したことについて、三井氏は「心外だ」と否定した。1株7450円の価値がある優先株を政府が引き受ければ、TOBで1株2000円で新生銀行株を売った株主との不平等を、きちんと理論立てて説明するのは困難だ。2000円で売った株主から7450円での買い取りを求めて新生銀行が集団訴訟を起こされる可能性もある。

 SBIHDが新生銀行を非上場化した後、優先株を発行して公的資金を返済するというウルトラCは「すぐにやるのは不可能なのだ」(関係者)とされる。SBI傘下に組み込まれた新生銀行が、公的資金のくびきから脱け出す妙案はないに等しいのだ。北尾氏は公的資金の完済に「時間をかけるつもりはない」と言い切った。数年のうちに公的資金返済の道筋をつけることができるのだろうか。

(文=編集部)

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