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日揮のLNGプラント建設技術、世界で需要高まる…注目増す小型原子炉事業でも先行

文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授
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日揮ホールディングスのHPより

 4月に入り国内エンジニアリング大手、日揮ホールディングスが米国と台湾で液化天然ガス(LNG)関連施設の基本設計などを相次いで受注した。また、日揮は再生可能エネルギーや小型の原子炉(SMR)などの新しい取り組みも強化している。同社のビジネスチャンスが拡大し始めたように見える。

 その背景には複合的な要因がある。まず、世界全体でエネルギーの需給はひっ迫している。ウクライナ危機の発生によって世界経済はグローバル化からブロック化に向かい始めた。欧州各国がロシアからのエネルギー資源の輸入を減らし始めた。米国は欧州などに天然ガスの輸出を増やそうとしている。それは、西側諸国のエネルギー安全保障体制の安定に加えて、米国経済の成長にプラスに働くだろう。

 また、ウクライナやロシアからの穀物の供給も減少傾向となるだろう。中国では感染の再拡大が深刻だ。世界全体で供給の制約は鮮明化し、エネルギー資源、化成品、農産物などのモノの価格が上昇している。供給制約の解消のために、日米欧、およびアジア新興国などでLNGや化成品、再生可能エネルギー関連のプラント建設は増える可能性が高い。世界経済の構造変化を日揮がどのように成長の実現につなげるかが注目される。

高まるLNG関連事業の成長期待

 日揮にとって、LNG関連のプラント事業は成長を支える収益の柱のひとつに位置付けられる。ただ、2010年代半ばごろから同社の業績は伸び悩んだ。まず、徐々に中国経済の成長率が鈍化した。その状況下、共産党政権は国有企業の経営統合を進め、世界的な価格競争力を持つ企業を増やした。プラント業界では中国五砿集団と中国冶金科工集団の合併が行われ、日揮を取り巻く競争環境は激化したと考えられる。さらに米中の通商摩擦によって、世界のサプライチェーンが混乱した。その上にコロナショックが発生し、日揮の事業環境は不安定化した。

 しかし、ここにきて潮目が徐々に変わりつつあるようだ。ウクライナ危機の発生を一つのきっかけにして、世界各国が天然ガスをはじめとするエネルギー資源の確保を急ぎ始めた。日揮は世界の生産量の30%以上を占めるLNGプラントを設計、建設した実績を持つ。米国と、台湾でのLNG関連施設案件の受注は、同社のプラントや施設の設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)(3つの頭文字をとってEPCと呼ばれる)の力への需要が高まっていることを示唆する。

 当面、世界的にLNGの輸出入、運搬、貯蔵のための施設の建設は増えるだろう。特に、天然ガスの4割をロシアからのパイプライン輸入などに頼ってきたEUにとって、LNG受け入れ体制の強化は喫緊の課題だ。近年、世界的な脱炭素を背景に、米国ではシェールガス産業界のリグの増加ペースが鈍化してきたが、ダラス連銀の調査によると3月に入りテキサス州、ルイジアナ州北部、ニューメキシコ州南部で事業を展開するエネルギー企業の活動状況は急速に回復し始めた。

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