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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

マンションも一戸建ても「価格が下がる要因」が全く見当たらない…今が決断の時?

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
マンションも一戸建ても「価格が下がる要因」が全く見当たらない
「gettyimages」より

 住宅価格が一戸建て・マンション、新築・中古にかかわらず上がり続けています。首都圏や近畿圏などでは、平均的な会社員ではなかなか手が届かない高嶺の花になりつつありますが、不動産仲介会社では、今後も当面は上がり続けるとみているようです。ほんとうに、そうなのでしょうか。

中古マンションは6年間で34.7%も上がっている

 実際のところどれくらい上がっているのでしょうか。首都圏の新築マンション発売価格の平均と、中古マンションの成約価格の平均の推移を示したのが図表1です。

 青の折れ線グラスの新築マンションは2015年度の5617万円から、2021年度には6360万円に13.2%の上昇ですが、特に2020年度から2021年度にかけては7.7%の高い上昇率になっています。これはあくまでも首都圏平均ですから、東京23区、わけても都心部になると平均価格で1億円を超えてしまいます。

 そのため、相対的に割安感のある中古マンションが買われるようになっています。その結果、2015年度の2932万円が2021年度には3949万円に、6年間で34.7%も上がっています。それでも新築マンションに比べる62.1%の価格水準ですから、まだまだ割安感があります。

マンションも一戸建ても「価格が下がる要因」が全く見当たらない…今が決断の時?の画像1
(資料:新築は不動産経済研究所『首都圏新築分譲マンション市場動向』、中古は東日本不動産流通機構『首都圏不動産流通市場の動向』)

 

Microsoft Word – 首都圏発表資料2022年3月.docx (fudousankeizai.co.jp)

sf_202104-202203.pdf (reins.or.jp)

住宅価格が下がる要素はまったくない!

 こんなに高くなっている一方、私たちの収入はなかなか増えません。需要と供給のバランスを考えると、平均的な会社員が買えないような価格帯になれば、需給バランスが崩れて価格が下がるのではないかと期待されますが、どうもそんなことはなさそうです。というもの、住宅価格を構成するさまざまな要因を分析しても、下落要素はまったくといっていいほどなく、上がる要素に満ちています。

 たとえば、分譲住宅は土地代と建築費が4割ずつで、残りの2割が分譲会社の経費・利益といわれていますが、土地代のもとになる地価が上がっています。2022年1月1日現在の地価を示す「公示地価」は、全国の住宅地平均で0.6%の上昇率ですが、大都市部の実勢価格はもっと上がっています。野村不動産ソリューションズの『住宅地価格動向』の2022年4月調査では、首都圏の年間変動率は7.0%の上昇になっています。

 全国宅地建物取引業界連合会(全宅連)が加盟企業を対象にした調査でも、図表2にあるように、3か月前に比べての現在の地価は、「大きく上昇している」「やや上昇している」の合計が3割を超えており、3か月後の見通しでも4社に1社が上がるとしています。反対に、3か月後は下がるとする企業は1割程度にとどまっているのです。

マンションも一戸建ても「価格が下がる要因」が全く見当たらない…今が決断の時?の画像2
(資料:全国宅地建物取引業協会連合会『不動産価格と不動産取引に関する調査報告書』)

 

第25回 不動産市況DI調査 (zentaku.or.jp)

木材の仕入れ価格は2年前に比べて7割以上アップ

 建築費についても、資材価格の高騰が続いています。アメリカ発のウッドショックは収まりつつあるといわれるものの、まだまだ高い水準が続いています。日本銀行の国内企業物価指数の動向をみると、図表3にあるように、木材関連製品は2020年を100とした指数で2022年5月の速報値は174.7に達しています。2年間で7割以上も高くなっているわけです。このほか、鉄筋コンクリート造のマンションや一戸建ての基礎などで大量に使用する鉄鋼製品なども上がったままですし、これらが建築費を大きく押し上げています。

 しかも、建築現場では高齢化、人手不足が続いており、賃金を高くしないとなかなか人材を確保できません。それも建築費を高くしており、大手住宅メーカーの1棟当たりの平均価格は4000万円を超え、経営幹部によると「今後も1年間で100万円から200万円の上昇が見込まれる」としています。

マンションも一戸建ても「価格が下がる要因」が全く見当たらない…今が決断の時?の画像3
(資料:日本銀行『企業物価指数(2022年5月速報)』)

 

企業物価指数(2022年5月) (boj.or.jp)

新築では半数前後が「上昇している」と回答

 そのため、住宅販売の現場ではこのところの価格上昇を実感し、今後も上がり続ける可能性が高いとする見方が支配的です。全国の不動産仲介会社が会員の全宅連では、四半期に一度会員のモニター企業を対象に市場動向に関する調査を行っています。

 図表4はそのなかから、3か月前に比べての現在の価格動向に関する質問結果をグラフにしたものです。新築マンション中古マンション、新築一戸建て、中古一戸建てに分けて質問していますが、いずれも「大きく上昇している」「やや上昇している」の合計が、「やや下落している」「大きく下落している」の合計を上回っています。特に、新築マンション、新築一戸建てでは、「上昇している」の合計が5割前後に達しているのに対して、「下落している」の合計は5%前後にとどまっています。

マンションも一戸建ても「価格が下がる要因」が全く見当たらない…今が決断の時?の画像4
(資料:全国宅地建物取引業協会連合会『不動産価格と不動産取引に関する調査報告書』)

 

 

第25回 不動産市況DI調査 (zentaku.or.jp)

 3か月後の価格見通しについても、やはり現在のような上昇が続くだろうとする仲介会社が多数派を占めています。図表5にあるように、新築マンションでは「大きく上昇している」と「やや上昇している」の合計が44.7%で、「やや下落している」「大きく下落している」の合計は10.6%です。多くの仲介会社が3か月後も新築マンション価格は上がり続けるとみています。

 新築一戸建ても同じような傾向です。「上昇している」の合計が45.8%と新築マンションより若干少なくなるのですが、「大きく上昇している」だけをみると、新築マンションが4.5%に対して、新築一戸建ては11.1%に達しています。特に、大都市部では新築一戸建ての用地確保が極めて難しくなっており、今後も当分高くならざるを得ないとする仲介会社が多いようです。それに対して、新築一戸建ての価格が「下落している」の合計は8.9%と1割以下にとどまっています。

マンションも一戸建ても「価格が下がる要因」が全く見当たらない…今が決断の時?の画像5
(資料:全国宅地建物取引業協会連合会『不動産価格と不動産取引に関する調査報告書』)

 

 

第25回 不動産市況DI調査 (zentaku.or.jp)

そろそろ購入タイミングを見極める時期かも

 ただ、中古マンションでは、「上昇している」の合計が28.6%で、「下落している」の合計が13.0%と、現在の動向に比べると、「上昇している」が減って、「下落している」が増える傾向がみられます。これは、中古一戸建てについても同様の傾向です。

 依然として「上昇している」のほうが多いのは変わりませんが、これまでに比べると上昇ピッチが緩くなるのかもしれません。もちろん、すぐに頭打ちから下落に転じるという事態は考えにくいのですが、図表1にあったように、中古マンションは新築マンション以上の勢いで上がってきましたから、その勢いが一服するとみる不動産会社が多いのかもしれません。

 いずれにしても、物件形態によって若干の差があるとはいえ、現在も上がり続けており、3か月後も上がり続けているだろうことは間違いないようです。ですから、「そのうち下がるだろう」と様子見していると、いつまでも買えずに購入タイミングを逸してしまう可能性もあります。「いずれマイホームを」と考えている人であれば、市場動向を十分にチェックしながら、そろそろ決断するべき時期かもしれません。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2021~22


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