人生の終わりがうっすらと見えてくる60歳という年齢をすぎると「残された貴重な時間をどうすごすか」が大きなテーマになる。余計な仕事や人間関係に煩わされたくないし、トラブルは片づけておきたい。人それぞれ考え方は生き方は違えど、おおむね「身軽になりたい」という方向に考えが向かうものなのかもしれない。
60代以降の「身軽な生き方」何を捨てて何を残すか?
『課長 島耕作』シリーズの作者である漫画家・弘兼憲史氏もまた、そんな思いから老前整理を始めた一人だ。「島耕作」しかり「黄昏流星群」しかり、弘兼氏は作品を通して「中高年からの生き方」を提示してきた。
「身軽に生きる」とは、停滞しないということでもある。弘兼さんの著書『増補版-弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(弘兼憲史著、中央公論新社刊)では、持ち物や人だけでなく、人間関係、お金、生き方も整理し、身軽に人生を楽しもうという60歳からの自信の理想の生き方をつづっていく。
モノを捨て、物質的に身軽になる前に捨てなければいけないのが、つまらない「見栄」や「こだわり」だ。たとえば、サラリーマン時代の肩書きなど、仕事を引退した後は何の意味も持たない。そんなことはおそらく誰しもがわかっているのだが、それでも「昔の肩書」と縁を切れない人もいる。
引退してから知り合う人は、元部下でも取引先でもない。そういう人からすると、昔の肩書をことさら持ち出す人は煙たいにちがいない。使用期限切れの肩書きはさっさと捨て、60代からは「何者でもない自分」に戻ったほうがいい。自分が本当に必要なものだけがあればいいと考えれば、おのずと必要なものが見えてくる。
では、物質的な整理はどうか。実際にモノを捨てる際、処分する順番は捨てやすいモノから始めるのがいい。なるべく「本」や「写真」といった思い出が詰まっているものや、捨てたら二度と入手できないようなモノはハードルが高いので後回しにする。家の中を見回して目に飛び込んでくるものは、無意識のうちに「邪魔だな」「片付けなきゃ」と思っているもの。つまり、目障りだから目に飛び込んでくるということだ。なるべく捨てやすくて、スペースを占領しているモノから捨てるのがいい。
また、60代以降はつき合える人の数は限られてくる。人間関係を整理していく必要も弘兼氏は指摘している。
友だちが多いほど「幸せである」というのは、あくまでイメージに過ぎない。人生の「結」に突入した60歳からは、信頼できる友人がほんの少しいればいい。最低限のマナーを守るのは当然として、面倒なギブ・アンド・テイクなどを考えなくても関係が壊れない友人がいれば十分なのだ。
弘兼氏は老前整理のことを「持ち物を半分にしよう運動」と呼んでいる。60歳を迎えたら、その後の人生も身軽に楽しく生きるためにも「持ち物を半分にしよう運動」を実践してみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。