サッカー日本代表に学ぶ、イヤな上司を虜にして自らトップの座に就く術!
『2010 FIFA ワールドカップ』(キングレコード)
数年前、あるメーカー系商社の営業部長を務めるA君から相談を受けた。その内容は次のようなものであった。
「自分の会社には入れ替わり立ち替わり、社長が親会社から出向でやってくるのです。そのたびに、経営方針はガラッと変わります。このこと自体は、我慢できないわけではありません。でも、今度のB社長は、親会社の方針とは思えない、売り上げの荒稼ぎのために正規の販売ルートではなく現金問屋やブローカーに大量に安売りするといった、商品の横流しを社員に押しつけたり、少しでも違う意見を言うと無視するようにして脅すのです。それに、公私混同と思わせるようなこともあります」
「正論と思うことは言う私の立場が危うくなり、これまで会社のために尽くしてきた人生はなんだったのか……とガックリ落ち込んでいます。私はこのようなB社長に、どのように接したらよいのでしょうか?」
話しながら目に涙があふれ出てきたA君に対し私は、まず「ムダな抵抗はしないほうがよい」と告げ、次のように話した。
「正しいと思う意見は言うべきだよ。しかし、B社長がいったん決めたことには人一倍忠実に従って、がんばるべきだ。組織の最終責任はトップにあるのだからね。それで成果が上がらなかったら、社長が解任される。成果が上がれば栄転して去っていく。『金と天下は回りもの』なのだ。そうすることによって、B社長の心を虜にできるかもしれない」
少し意外な顔を見せたA君に、続けてこう言った。
「その社長がかなり悪漢のようだが、まさか『売り上げを落とせ』とは言っていないはずだ。毛嫌いせずに、彼が言うことのなかで何かいい方向を見つけてやって、それに向かって努力をしようじゃないか。それに上司の悪い面から学ぶことも大事だよ」
そして、私はサッカーの例を引き合いに出した。
1990年代後半、Jリーグチーム「ベルディ川崎」は、三浦カズ、ラモス瑠偉、北沢豪、柱谷哲二、井原正巳などそうそうたるサムライを擁して全盛期だった。ところが、当時の松木安太郎監督や続くネルシー二ョ監督の戦術などに対する批判発言も実に盛んだった。特にラモス選手は、監督を監督と思っていなかった。当時、ガンバ大阪設立準備をしていた私が、「ベルディ川崎」の運営会社も手を焼いていたところに目をつけて、ラモス獲得の交渉権を得て一本釣りを仕掛けたことがあるくらいだ。