中日ドラゴンズの低空飛行は、新監督が就任した今シーズンも続いている。
今季は、球団のレジェンドでありファン待望だった立浪和義氏が監督に就任。近年のドラゴンズは12球団のなかでも資金繰りに苦しむ球団だが、さしもの今季は新監督のための大型補強が行われると目されていた。ところが、即戦力と呼べる補強はゼロ。そんな影響もあってか、深刻な得点力不足にあえぎ、最下位を抜け出せないでいる。
「親会社の意向もあり、近年は運営費が大幅に削られています。ドラフトでも、即戦力より地元思考。これでは上位争いをするチームをつくるのは不可能です。それでも、名古屋が待ち望んだ立浪新監督の就任を受けて『さすがに今季は』と期待されたものの、蓋を開けてみれば例年通りでした。
さすがに現有戦力では、誰が監督をしてもAクラスは厳しいといわざるを得ません。シーズン序盤はまだチームがうまくいっていましたが、怪我人や離脱者が増えた夏以降は、雰囲気もどんよりと暗くなっていきました。チーム内でも『立浪監督がかわいそうだ。中日新聞は球団運営のやる気があるのか』という声すら上がっています」(ドラゴンズ番記者)
特に近年では、応援団問題や中村紀洋コーチの突如2軍への配置転換など、何かとネガティブな話題に注目が集まりがちだ。今季も球団で唯一、全国区の人気を持つ根尾昂の投手転向が物議を醸している。最大の問題は、弱小チーム事情や球団の計画性のなさに呆れてか、地元でも深刻なファン離れが起きていることだ。
「全盛期の落合博満監督時代(2004~2011年)から年々ファン離れが進んでおり、それは観客動員数にも表れています。ここ数年は、横浜DeNAベイスターズや東京ヤクルトスワローズの後塵を拝することも珍しくなくなりました。その最大の理由は、試合のつまらなさ。特に、とにかく打てないことでしょう。毎年お馴染みですが、他球団よりも圧倒的に本塁打数が少ないです。野球の華である本塁打数が出ないうえに弱いのは致命的です。ファン獲得のための球団努力も欠けています。これではお客さんが離れて当然でしょう。今季は特に、根尾選手が投手転向したあたりから、明らかにファンの熱量も下がっていますね」(同)
経営状況が深刻化、補強に回す金がない?
さらに、木下雄介投手の突然死についても、週刊誌を中心としたメディアを賑わせた。中日は「練習が直接の死因ではない」という理由で、統一契約書に基づいた死亡補償金の5000万円の支払いに応じていない、という話まで飛び出している。遺族も無念の意を伝えるコメントを発表したが、弔慰金としての500万円に値切っているというのだから驚きというほかないだろう。
「信じられないような話しかもしれませんが、それほど今のドラゴンズにはお金がないのです。年俸交渉の渋さ、外国人補強、設備投資、そして遺族対応。すべては球団の経営状況の悪化が根底にあります。度重なる不祥事において、“臭いものに蓋”の精神で説明をしない球団の体質、計画性のなさが表面化してしまった形です。
本家本元の中日新聞や中日スポーツですら、以前はほとんど見なかった球団批判やチーム批判が出るようになっています。結局、ドラゴンズは親会社の新聞社の派閥争いに利用され続けてきた部分が大きいんです。(明治時代に発生した)小山派と大島派の両派閥が、今なお互いの足を引っ張り、出世レースの道具にされてきた面があります。そういった体質が変わらない限り、強竜が戻ってくることはないと思いますよ」(同)
それでも、今季は高橋宏斗や岡林勇希、土田龍空ら高卒の若手が頭角を現し、石川昂弥、鵜飼航丞ら期待の若手も才能の片鱗を見せた。補強次第で来季は十分に戦えそうな戦力が整ってきたようにも感じるが、球団OBの見通しは暗い。
「今季4番を打つビシエドを、前後の打順(3番か5番)で使えるような大砲の補強できれば、十分に上位争いは可能でしょう。ただ、その可能性は極めて低いとみています。5000万円クラスの格安外国人を乱獲するのが近年でしたが、去年はほぼキューバからの育成選手のみ。5000万円すら出せない球団が、そんな大砲候補を獲得できるとは思えないんですよ。
それでも、おそらくコーチ陣の入れ替えはあるでしょう。PL学園出身の立浪監督の人脈を生かし、入閣が噂されている清原和博氏、宮本信也氏や黄金期を知る井端弘和氏らの入閣は十分にあるでしょう。正直、コーチ陣を変えてお茶を濁して終わり、という気がしています。
補強次第で来年はチャンスがあると思いますが、もし補強に乗り出さなければ、フロントはもう勝つ気がないと判断せざるを得ないですね」
球場内外での問題が山積みの立浪ドラゴンズ。来季は、これらの辛辣な声を跳ね返し、意地を見せてほしいものだが、果たしてどうなるか。
(文=中村俊明/スポーツジャーナリスト)