首都圏の都心やその周辺のマンション価格は高くなりすぎてとても手が届かないと、マイホーム取得を諦めている人もいるのではないでしょうか。でも、首都圏でも郊外のターミナル駅に注目すれば、まだまだ価格が安くて、将来性の高そうなエリアがあります。そんな場所に買っておき、将来のステップアップの土台にしてはどうでしょうか。
東京都港区の中古マンションは1億円超え
都心やその周辺のマンションは高くて、とても手が届かないという人が多いのではないでしょうか。不動産経済研究所の調査によると、2022年8月の首都圏新築マンションの発売価格の平均は6102万円で、東京23区に限ると7905万円です。都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)では、億ションが当たり前になっています。
それに釣られるかたちで中古マンション価格も上がり続けています。マンション情報のポータルサイト「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、全国市区町村別の70平方メートル換算価格の中古マンション価格ランキングを作成していますが、図表にあるように、2022年8月調査のトップは東京都港区の1億0162万円でした。2位の東京都千代田区も1億円近い水準で、3位の東京都渋谷区、4位の東京都中央区は8000万円台です。
「マンションレビュー」2022年8月 全国市区町村 中古マンション価格/騰落率ランキング100を発表|株式会社ワンノブアカインドのプレスリリース
いまは安くても将来性の高いエリアもある
仮に1億円のマンションを自己資金1000万円を用意して、9000万円の住宅ローンを組むとすれば、金利1.0%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は25万4057円です。より安全な範囲である、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)25%以内に抑えるとすれば,約1220万円の年収が必要です。平均的な会社員ではとても手が出ません。
でも諦める必要はありません。目のつけどころを変えれば、十分に手が届くマンションがあります。価格ランキング10位の東京都世田谷区は6129万円ですが、それより格段に安いエリアで、将来の値上がりが十分に期待できるエリアがあるのです。そこで買っておき、将来のステップアップの土台にしてはどうでしょうか。高すぎるからと手を拱いていると、一生マイホームを手にすることができなくなってしまいます。
都心やその周辺の上昇率は一桁台に
先のワンノブアカインドでは、価格のランキングだけではなく、1年前に比べての上昇率を意味する騰落率のランキングも作成しています。その騰落率、都心やその周辺のマンションは高くなりすぎているため、騰落率はさほど高くはありません。
70平方メートル換算価格がトップの東京都港区では、騰落率は+8.09%で、2位の東京都千代田区は+4.84%です。10位の東京都世田谷区は10.75%ですが、それ以外はすべて一桁台の上昇率です。なかには、東京都新宿区のように+1.82%にとどまる自治体もあります。十分高くなっているので、あまり大きな上昇は期待できません。それでも簡単には下がりませんから、資産価値が高い点は間違いないのですが、それよりは、今後の資産価値に注目してはどうでしょうか。
相模原市中央区の上昇率は41.00%
騰落率のランキングは、図表のようになっています。トップは神奈川県相模原市中央区の+41.00%で、2位が兵庫県神戸市垂水区の+29.24%、3位が神奈川県茅ヶ崎市の+26.61%などとなっています。トップの相模原市は政令指定都市ですが、同じ神奈川県の横浜市や川崎市に比べると、人気がさほど高いとはいえないのが現実です。そのため、70平方メートル換算価格は2359万円と、横浜市や川崎市に比べるとかなり安くなっています。
しかし、中心市街地である小田急小田原線の相模大野駅から新宿駅までは快速急行で35分と交通アクセスに恵まれています。しかも、駅周辺には大規模商業施設が充実し、各種の公共施設が揃い、生活しやすいエリアです。しかも、駅周辺の再開発が進んでおり、今後はますます便利になりそうですから、ここに購入する人が増え、価格も上がっているのでしょう。価格アップが期待できるのではないでしょうか。
「マンションレビュー」2022年8月 全国市区町村 中古マンション価格/騰落率ランキング100を発表|株式会社ワンノブアカインドのプレスリリース (prtimes.jp)
郊外のターミナル駅の上昇率が高い
首都圏で騰落率の高い市区町村をみると、埼玉県川越市、東京都八王子市、東京都府中市、千葉県松戸市のように、郊外のターミナル駅を持つ都市が上位にあがっています。たとえば、4位の埼玉県川越市は、古くから小江戸として人気が高く、多くの観光客を集めてきましたが、近年は住宅地としても注目されるようになっています。東武東上線、JR川越線などが乗り入れ、駅前では再開発が進み、超高層マンションも登場するようになっています。
それでいて、70平方メートル換算の価格が2500万円ですから、都心やその周辺に比べての割安感が強く、新たに購入する人が増えています。そのため、騰落率は+25.95%と高い上昇率を示しています。まだまだ都心やその周辺などに比べると価格水準は低いですから、これからも買われ、資産価値の上昇が期待できるのではないでしょうか。
コロナ禍で人気が高まっているエリアも
騰落率5位にあがった東京都八王子は、70平方メートル換算価格が2406万円です。4位の埼玉県川越市に比べて、少し安くなっていて、買いやすいエリアです。JR中央線、京王線で都心と直結していますから、交通アクセスの良さはいうまでもありません。JR中央線なら新宿駅まで30分強で、東京駅も50分ほどです。駅周辺には大規模商業施設が揃っています。
近年は少し手前の立川市に押され気味でしたが、その分価格が安く、再度注目度が高まっています。特に、コロナ禍で在宅勤務が増え、都心から遠くてもかまわないという人が増え、それが八王子市の人気を高めているといっていいでしょう。
都心まで20分台で出られるターミナル駅も
そのほか東京都府中市が騰落率+22.72%、千葉県松戸市が+22.69%など高い上昇率を記録しています。府中市には京王線とJR武蔵野線が走り、京王線なら府中駅から新宿駅まで特急で25分ですし、都営地下鉄新宿線に乗り入れているので、都心の各駅にダイレクトに出られるのも魅力です。府中駅には複合商業施設が揃い、周辺へのバス便も充実しています。それでいて、府中駅近くには緑豊かな大國魂神社があり、自然環境にも恵まれています。
また、千葉県松戸市には、JR常磐線、JR武蔵野線、新京成電鉄などが乗り入れています。常磐線なら松戸駅から上野駅までは23分ですし、上野駅で乗り換えれば東京駅も30分強です。松戸駅には大規模商業施設が集積し、周辺には地元の商店街が残り、独特の雰囲気を醸しだしています。
まずは2000万円台でマンション取得
これらの騰落率の高い市区町村のうち、東京都府中市は70平方メートル換算価格が4000万円台ですが、埼玉県川越市、東京都八王子市、千葉県松戸市などは2000万円台に手に入ります。まずは、こうしたエリアで中古マンションを取得、将来の資産価値上昇を受けて、段階的にステップアップしていくという考え方もできるのではないでしょうか。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)