新築・中古にかかわらず、マンション価格の高騰が続いています。ことに新築に比べて割安感のある中古マンションの人気が高まり、新築マンション以上のピッチで値上がりが続いているのです。しかし、値上がり率はエリアなどによってかなり異なっています。できるものなら、将来の資産価値の向上が期待できる場所で購入したいものですが、どうすればいいのでしょうか。
中古マンションは新築以上の上昇率に
いかに中古マンションの価格が上がり続けているのか、図表1をご覧ください。これは、首都圏の新築マンションの発売価格の平均と中古マンションの成約価格の平均の推移を示す線グラフです。どちらも右肩上がりでの上昇が続いているのですが、実は上昇ピッチにはかなりの差があります。
ブルーの折れ線グラフの新築は2012年の4540万円が、2021年には6260万円で、この間の値上がり率は37.9%です。それに対して、オレンジの折れ線グラフの中古マンションは2530万円から3869万円に上がっているので、その間の上昇率は52.9%に達しています。新築マンションが高くなりすぎているため、割安感のある中古マンションを買う人が増えて、新築以上のピッチで上がり続けているのです。
その結果、2012年には新築価格に対する中古価格の割合は55.7%だったのが、2021年には61.8%まで高まっています。新築の半値近くで買えたものが、6割以上出さないと買えなくなっているのです。新築に比べての割安感が徐々に乏しくなりつつあるわけで、割安感のあるうちに中古マンションを購入するためには、早めの行動が求められるのかもしれません。
Microsoft Word – 全国発表資料2021年.docx (fudousankeizai.co.jp)
sf_2021.pdf (reins.or.jp)
築古マンションは築浅の3分の1以下
ただ、一口に中古マンションといっても、築年数やエリアなどによって価格は大きく異なります。東日本不動産流通機構の調査によると、2022年4月~6月の首都圏の築5年以内のいわゆる築浅マンションの成約価格の平均は6866万円でした。上にあるように2021年の新築マンションの発売価格の平均は6260万円ですから、それを600万円ほど上回っています。最近は新築マンションの発売戸数が減少しているので、新築の発売が途絶えているエリアを中心に、築浅マンションの人気が高まり、新築の相場以上の価格で取引されるケースが増えているのです。
しかし、築年数が長くなると成約価格は低下します。築10年超で5000万円台、築20年超で4000万円台、築25年超で3000万円を切り、築35年超の平均は2192万円です。築年数の長い築古マンションは、築浅マンションの3分の1以下の値段で手に入るわけで、中古マンションの安さのメリットを最大限享受できます。
もちろん、その分リフォーム費用などがかかるケースが多いので、その点を差し引く必要があるでしょうが、それでもこの安さは魅力です。
全国市区町村で最も中古マンションが高いのは?
エリアによっても、中古マンションの価格は大きく異なります。いうまでもなく、都心やその周辺が高く、郊外にいくほどに安くなります。また、同じ駅でも徒歩数分程度までの駅近マンションとそうでないマンションでも大きな差があります。
マンション情報サイトの「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、「全国市区町村中古マンションランキング」を作成しています。それによると、全国の自治体のなかでも70平方メートル当たりの換算価格が最も高いのは、図表2にあるように東京都港区です。9783.06万円とほぼ1億円に近く、中古でも億ションが当たり前のようになっています。2位の東京都千代田区も9000万円台で、3位の東京都中央区、4位の東京都渋谷区は8000万円台です。
上位の顔ぶれをみると、10位まではすべて東京23区で、23区以外では16位に東京都武蔵野市が入り、東京都以外では19位に神奈川県川崎市中原区が入っています。さらに、首都圏以外では25位に大阪府大阪市北区が入ります。
エリアでみると、首都圏の都心部が格段に高く、それに東京23区の都心周辺部が続き、首都圏以外とは大きな差があります。
価格上昇率の上位は都心ではなく郊外の都市
利便性の高い都心部で買えればいいのでしょうが、新築だと東京23区平均でも8000万円台で、中古でも先にみたように人気の港区では1億円近くしますから、購入は決して簡単ではありません。そこで注目しておきたいのが、最近の価格上昇率が高いエリア。いまはさほど高くなくても、将来の値上がりが期待できます。
ワンノブアカインドでは、価格のランキングだけではなく、騰落率のランキングも作成しています。全国の市区町村別に、1年前の価格に比べていくら上がっているか、いくら下がっているかを調査、その結果をランキング化しています。そのベスト10が図表3です。
一見して分かるように、都心やその周辺のエリアはほとんどなく、郊外が中心で、なかには名古屋市南区のように東京圏以外の三大都市圏があれば、大分県大分市のように地方圏の都市もあります。
騰落率のトップは千葉県柏市の28.41%です。70平方メートル換算の中古マンション価格が、1年間で3割近くも上がっているわけです。次いで神奈川県茅ヶ崎市が27.80%で、神奈川県相模原市中央区が27.57%で続いています。相模原市は政令指定都市ではありますが、横浜市や川崎市などに比較すると価格水準が低く、首都圏でも郊外部に属するといってもいいでしょう。
2000万円以下で買える上昇率の高いエリアもある
価格的にも都心やその周辺に比べるとかなり買いやすい値段です。騰落率トップの千葉県柏市の70平方メートル換算価格の平均は2500万円台。2位の神奈川県茅ヶ崎市は人気の湘南エリアですから若干高いのですが、それでも3300万円台です。4位の春日部市は1700万円台で、5位の埼玉県入間市に至っては1500万円台です。首都圏のなかでも、こうしたエリアに買っておけば、将来的な値上がりが期待できるかもしれません。
郊外といっても、春日部市の春日部駅からは、東武スカイツリーライン・東京メトロ日比谷線直結で秋葉原駅が49分、銀座駅62分です。また入間市の入間市駅は、西武池袋線の急行で池袋駅まで40分です。ともに乗換えなしですから、比較的ゆったりとした気分で通勤や通学が可能です。
1500万円のローンを組んでも、金利1%とすれば、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は4万円台ですから、無理のない資金計画でゆとりをもって返済できそうです。その上で、価格の上昇を待ってステップアップというのもいいのではないでしょうか。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)