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日本企業社長、半数が60〜80代…経済界・テレビ界の老人支配で潰される若者

文=長谷十三
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田原総一朗氏とたかまつなな氏(たかまつなな氏の公式Twitterアカウントより)

「だったらこの国から出ていけ!」
「この国に絶望的だったら、出ていきゃいい」

 2023年になって早々、御歳88歳の男性が29歳の女性に向かって怒鳴り散らした。1月1日に放送された『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)のなかで、司会の田原総一朗氏がジャーナリストのたかまつなな氏と「日本を立て直せるか?」と激論を交わしているうち激高してしまったのである。

 田原氏が頭にカッと血がのぼったのは、「本当は日本が良くなると思ってるの? 思ってないの?」と質問をしたところ、たかまつ氏が「思ってないです、だって……」と自分の意見を言おうとした瞬間だった。このやりとりを受けてSNSでは「相手の発言に激高して『出ていけ』じゃ議論にならない」などの批判が溢れた。一方で「TVショー」ならではの演出なので、そこまで目くじらを立てるほどのことではないという意見もある。実際、テレビ関係者からは“田原氏擁護”の声が圧倒的に多い。

「『朝生』は深夜に視聴者を飽きさせないよう、ときに討論相手を挑発して一触即発ムードを演出する“お約束”がある。もともとTVディレクターの田原さんはそれを誰よりもよく理解していて、わざと激高したフリをする。そういう田原氏のプロレス的な“キレ芸”を理解できない視聴者が増えたということでしょうね」(テレビ朝日ディレクター)

「老人支配」

 ただ、実はこういうところが今のマスコミが「世間ズレ」しているところだ。田原氏とたかまつ氏のやりとりが多くの視聴者の琴線に触れたのは、今の衰退著しい日本社会の縮図となっているからだ。

 それは一言で言い表すと「老人支配」である。日本は先進国のなかで世界一のスピードで少子高齢化が進んでいることに加えて、医療の進歩によって平均寿命が飛躍的に長くなったことで、政治・経済・文化などあらゆる分野で「老人」が既得権益を握って離さない、という問題が起きている。

 例えば、政治の世界がわかりやすい。日本国のリーダーである岸田文雄首相は65歳だが、派閥力学的にも顔色を伺わなければいけない麻生太郎副総理は82歳、元自民党幹事長の二階俊博氏は83歳だ。永田町では返り咲きを望む声も多い菅義偉前首相も74歳である。「これからの日本は若い人たちがつくっていく」なんて綺麗事を並べながら、実は“ご長寿”の人たちがすべてを仕切っているのが、日本の現実なのだ。

 経済の世界も同じだ。日本を代表するグローバル企業、トヨタ自動車のトップ、豊田章男社長は66歳だが、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正社長は73歳、ニトリの似鳥昭雄会長は78歳など、「老経営者」がゴロゴロしている。それもそのはずだ。帝国データバンクの調べでは、21年12月時点の全国の企業の社長の平均年齢は60.3歳なのだが、なんと60〜80代以上が半数で、70〜80代以上も4分の1を占めている。ちなみに、PwCストラテジー&が世界の主要企業を対象に調べた「2018年CEO承継調査」によれば、新任CEOの中央年齢は53歳だ。

 もちろん、「老経営者」がすべて悪いわけではない。しかし、高齢者が企業トップの座にいつまでも居座り続けると「後進」が育たないという問題がある。社会全体が権威主義と年功序列に支配されるので、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズのように、既存のシステムを破壊するような「生意気な若手経営者」が現れにくくなる。そうなると若者は二極化する。ひとつは「安定志向」が強まり大企業や公務員を目指す。そしてもうひとつが、「国外脱出」だ。英語などを身につけて、日本よりも高収入が期待できる外資系企業や海外で働くのだ。今回、田原氏が激高したことを受けて、実業家のひろゆき氏もSNSで以下のように指摘をしている。

<日本の問題点を指摘する若い人が出て来ると『だったらこの国から出て行け!』という人達。それを見た金持ちや海外でも稼げる頭脳労働者が静かに日本から出て行っているので、海外在住日本人が増え続けてます(コロナ禍除く)>

高齢者を守るためにつくられたシステム

「老人支配」が強まることで、若者がどんどん去って「空洞化」が進行するという構造は、テレビ業界を見ればわかりやすい。特番などで「大御所」としてもてはやされる、ビートたけしさんは75歳、和田アキ子さんは72歳、明石家さんまさんは67歳、上沼恵美子さんは67歳だ。一方、「TVスター」として第一線で活躍しているダウンタウンの2人は59歳、木村拓哉さんやマツコデラックスさんは50歳、有吉弘行さんは48歳である。しかし、30代や20代の国民的スターは不在だ。

 今の10〜20代の芸能人は、YouTubeやTikTokなどテレビ以外に活路を見いだしている人も多い。なかには、King & Princeを脱退する3人のように海外市場を目指している人もいる。まさしくテレビという“国”から若い世代が続々と出ていっている状態だ。

 ただ、これは何も不思議なことではない。フランスの歴史人口学者のエマニュエル・トッドは日本の現状についてこう述べている。

<新型コロナは「老人支配」が依然として続いていることも明らかにしました。「死者数」は膨大でも、その大部分は高齢者。現役世代の死者はわずかで、コロナ以前に想定されていた高齢者の寿命を縮めはしたものの、人口動態全体に与えるインパクトは大きくありません。要するに「老人」の「健康」を守るために「若者」と「現役世代」の「生活」に犠牲を強いたわけです>(「文藝春秋」<22年2月号>より)

 これには納得する人も多いはずだ。今の日本は、年金、税金なども、高齢者を守るためにシステムがつくられており、若者や現役世代はそのシステムを支えるために犠牲になっている。そして、膝をついてしまった者から「貧困」へ転落していく。そういう理不尽さに対して文句を言うと、「最近の若者は」と顔をしかめられて、「そんなに嫌ならこの国から出ていけ」と叱り飛ばされる。そう、まさしく『朝生』での田原氏とたかまつ氏の間のやりとりは、日本社会のいたるところで起きているのだ。だから、多くの視聴者は不快になった。「あんなもん演出でしょ」と笑ってやり過ごすことができなかったのだ。

 こういう日本の醜悪な現実は2023年も改善されないだろう。未来のある若者たちは、そろそろ真剣に「国外脱出」を考えたほうがいい。

(文=長谷十三)

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