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アイリスオーヤマのシーリングライトが黒焦げ…安物家電の品質が微妙な当然の理由

取材・文=文月/A4studio
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アイリスオーヤマのHPより

 家電製品を購入する際、できるだけ安価なものを買っているという方も少なくないだろう。しかし、リーズナブルに購入した製品がトラブルを引き起こすケースもある。たとえば、昨年11月にTwitterに投稿されたあるツイートでは、アイリスオーヤマの製品であるLEDシーリングライトの回路部分が黒く焦げ付いた写真がアップされ、1万「いいね」以上を獲得して大きな話題となった。

 異臭がしていたことを不審に感じていたツイート主が、シーリングライトのカバーを外したところ、回路部分が真っ黒に焦げ付いていたという。その後、消防署に連絡し、メーカー側にも製品トラブルが起きたことを報告。アイリスオーヤマは、真摯な謝罪とともに、再発防止のための対策を行うとツイート主に告げたという。

 アイリスオーヤマは、生活用品、家具の企画、製造を行うイメージが強い企業だが、近年は新興の家電メーカーとしても注目を集めている。お手頃な価格帯で揃えられた家電類は家族世帯、単身世帯どちらからも人気である。だが、安価な製品は消費者の味方には違いないものの、そのスペック、安全性について疑問視する声も少なくない。現に今回のツイートにも、「安物は信用できない」「性能がよろしくないとよく聞く」という意見が散見された。またホームセンター「コーナン」が販売するLEDシーリングライトでも過去に似たような事例があり、安価な家電商品全体に対する信用性に疑問が広がっている。

 はたして安価な家電メーカーの商品は性能的に安全なのか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏に解説してもらう。

黒く焦げた回路は搭載部品の不備が原因か

 今回の一件は部品の不備が原因だと安蔵氏は指摘する。

「おそらくシーリングライトに搭載されている部品が正しく動作せずに通電してしまい、焦げ付いてしまったのだと考えられます。照明器具では、ほこりなどに引火して火災が発生するケースは多いですが、今回ツイートされた写真を確認したところ、がっつり回路部分に焦げ付きが見られたので、確かにメーカー側に責任が求められる事案でしょう。幸い火事にはならなかったそうですが、部品そのものに問題があると思われるので、同時期に製造した製品の回路部分にも同様の焦げ付きが発生する可能性はあります」(安蔵氏)

 ネット上の口コミを参照すると、アイリスオーヤマのエアコン、ノートPCでも、その動作性、安全性について不満の声も一部では見受けられる。しかし、同社はそこまで信頼度の低いメーカーではないという。

「アイリスオーヤマは、安価家電ブランドのなかでは、自社内で企画、製造をしており、ほかのプライベートブランド(PB)とは異なりメーカー名を打ち出して販売しているため、信用度は高いほうです。それに同社は大手家電メーカーで設計、品質管理を担当していた人材を積極的に中途採用し、ジェネリック家電(一世代前の技術を用いて安価に製造した家電製品)をつくって発展してきた企業ですので、大手ほどではないですが人材は豊富。もともと生活用品、家具を製造するメーカーでもあるので、製造の品質管理には長けている面があります。

 ですが今回の一件は、単純に不良部品を搭載してしまった結果なので、アイリスオーヤマには本件を重く受け止め、厳重に対処してほしいですね。アイリスオーヤマは、LEDライトの製造により、家電業界に参入した企業です。ですから同社からすれば家電業界への足掛かりとした製品に問題が見られたことを意味しますので、再発防止のため対策はきっちりと行うと考えられます」(同)

丸投げの新興メーカーには特に要注意

 アイリスオーヤマに限らず、安価家電メーカーといえど、価格のみを参考にして製品を「安かろう悪かろう」とは断言できない。だが、注意すべき点はあるという。

「安価家電メーカーは、家電業界に参入して日が浅い新興メーカーが多いです。そのため歴史のある大手メーカーに比べて、部品の納入元の確保や工場での品質管理のノウハウが十分なものではないことが大半だと考えられます。

 長年、製造している大手メーカーだと、信頼できる取引先があって部品の納入もスムーズにいくでしょう。けれど新興メーカーだとどうしても見劣りしてしまう場合が多く、悪質な取引先から不良部品を仕入れてしまうこともあり得ます。

 また当然ですが、設計、製造した製品が本来の意図通りにつくられるとは限らないので、メーカーは生産ラインの品質管理を行うことが必須になります。そこで大手では現地工場で視察、検品するなどして品質管理に努め、内部に生産、品質管理のノウハウが蓄積されやすいのですが、新興メーカーとなるとそれが難しい。そもそも自社工場ではなく、海外にある工場に製造を委託しているところが少なくなく、かつ現地に社員を駐在させて監督させるほどの余裕もないことから、大手ほどの品質管理ができるかどうかについては微妙なんです。そして、従来のメーカーとは異なる製造体制であることが珍しくありません。

 製品の設計から製造まで、すべて外部の取引先に委託している新興メーカーもあります。丸投げしているわけですから、その中身はもはやメーカーではなく、実質的には出来上がった製品を輸入するだけの商社のような存在です。ですから生産管理、品質管理は統制をとりづらくなるでしょうし、製品自体のクオリティを担保することは難しくなるでしょう。

 そういった意味では、品質管理のノウハウがある大手や長年活動しているメーカーは、自社、関係企業で設計、製造している場合が多いので製品に対する信頼度は高いです。その点、アイリスオーヤマも国内に自社工場を構えているので、品質管理には一定以上の信頼性はあると言えるでしょう。ただそのほかの安価メーカーにおいて自社管轄下で製造をしきれていない企業は怪しいですね」(同)

 自社工場を持っているとはいえ、アイリスオーヤマは家電業界ではまだまだ新興メーカーといえる企業だ。安価メーカーのなかでは信用できる企業だとしてもパナソニック、ソニーといった歴史の長い大手と比較してみると、発展途上というイメージを持つ方も多いだろう。

 では最後に、もし使用しているライトに火災の恐れがあることを発見した場合、どのように対処すべきなのか。

「メーカーに連絡する前に消防署や消費生活センターに連絡して、対応を急いだほうがいいでしょう。どうしても製品は動作不良を起こすなどして経年劣化するものなので、メーカーではなく第三者機関に問い合わせて事故発生の原因を突き止めるべきです。こうした事故を防ぐためにも、日々自分の手で掃除するなど、メンテナンスを施してみてもいいかもしれませんね」(同)

 火災の恐れがある製品を個別に見極めることは難しいが、メーカーの内情をある程度把握しておけば購入時の判断材料にはなるはずだ。製品の設計や回路図がわからずとも、メーカーの歴史や取引先との関係を知れば、視点を変えた有意義な家電選びができるのではないだろうか。

(取材・文=文月/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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