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スシローでスプレー噴射の客、傷害罪で15年以下の懲役の可能性も…値上げに直結

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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ネット上に投稿された動画(一部、編集部で加工)

 回転寿司チェーン「スシロー」で、客がレーン上に流れる寿司に業務用のスプレー式手指消毒剤(エタノール配合)を噴射する動画をInstagram上に投稿。他の客が手指消毒剤がかかった食品を食べると健康被害を被る恐れもあり、物議を醸している。店側でこうした迷惑行為への対策にコストがかかれば値上がりつながるとも指摘されているが、行為を行った当事者は傷害罪や威力業務妨害罪に問われる可能性もある。

 今年に入り、回転寿司チェーンなど外食店舗での客による迷惑行為が相次いで発覚している。発端となったのは、1月に起きた、スシローで少年が醤油ボトルや湯呑をなめて元に戻す様子を収めた動画がネット上に投稿されるという事件だ。当該少年と親はスシローに謝罪したものの、一時的にスシローの株価下落し客離れなど業績に大きな影響がおよぶ懸念が出たため、運営会社は民事・刑事で法的措置をとる考えを表明している。

 また、「はま寿司」では男性客が他人の注文を横取りしたり、レーン上を移動する寿司にわさびを乗せたり、少年が卓上に置かれたガリの容器に直接箸を入れて食べる動画などが投稿され拡散。「吉野家」でも客が紅生姜を直接箸で取って食べる動画が投稿されるという被害が発生。「マクドナルド」では、店舗が入ったフードコートの店内と思われる場所で、男性が飛沫防止用のアクリル板をなめる様子を撮影した動画が拡散されるなどし、各チェーンの運営会社は法的措置を取る考えを示すなど厳しい姿勢を見せている。

 今回問題となっている動画は、映り込んでいる期間限定商品のポップなどから昨年11月に撮影したものとみられ、男性はレーン上を通過する複数の寿司にスプレー式手指消毒剤を何度も吹きかけている。レーンの向こう側の席で飲食中の客の顔も確認でき、消毒剤がその客にかかっている可能性もある。動画に表示されたインスタのアカウントなどから加害者は中学生ではないかという情報もあり、ネット上ではその所属学校や部活動などを特定する動きも広まっているが、真偽は定かではない。

 スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESの広報部は、「動画は確認し把握しております。それ以上につきましては現在、調査中です。詳細がわかりましたら民事・刑事ともに厳正に対応してまいります」としている。

しわ寄せは「値上がり」という、よろしくない結果につながる

 もしこの客による行為が原因で他のお客に健康被害が起これば、店舗側が風評被害などで大きな損害を被る可能性もあるが、こうした迷惑行為を防ぐために店側は何らかの対策を取ることはできるのだろうか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「衛生的に問題のある料理を食べたいと思う人はいないので、迷惑行為が行われている可能性があるお店からはお客さんの足が遠のき、売上の損失が発生します。実際にお客さんに健康被害が発生してしまうと、お店側の衛生管理体制も疑われてしまいます。スシローでは『応援』の名のもと、売上貢献のためにお客さんが来店してくれるという想定外のことも起きていますが、ずっとは続きませんし、店もそれに甘えてはいられません。

 今回の動画のような、客席に置いてある手指除菌のための消毒用エタノールは飲用ではないため、飲んだり舐めたりしないよう注意喚起されています。アルコールアレルギーの方もいますし、健康被害が起こる可能性は充分にあり得ます。このような迷惑行為を防ぐ店側の対策ですが、『なぜ迷惑行為が可能なのか?』を考えると、店の従業員の目が届かない死角があるからなので、店のレイアウトの変更、従業員の巡回頻度の増加、店内カメラの増設など、死角をできるだけなくす対策が必要になります。

 また、性善説に基づいている『共有のモノはみんな綺麗に使うはず』という発想も変えなくてはならないかもしれません。箸やスプーン、調味料など、お客さんが利用するものは、すべて個包装にしたり、卓上に備え付けるかたちではなく従業員が手渡し・セッティングをしたり、一カ所からお客さんが自分で持っていくスタイルにすれば、従業員が監視できるようになり衛生管理がより徹底されるかもしれません。ただし、これらの対策には追加のコストがかかってくるので、そのしわ寄せは値上がりという、店にとってもお客さんにとっても、よろしくない結果となってしまいます」

 では迷惑行為に対し、店側がどのような対応を取るべきだろうか。

「毅然とした対応も必要になると思います。迷惑行為を行うと法的にどのような罰則を受けるのかという具体的なイメージがより多くの人に認識されれば、それが抑止力につながります。そういう意味でも、店側のコメントによく出てくる『刑事・民事両面で厳正に対処します』という姿勢は重要です。『見せしめ』という言葉は、あまりいい言葉ではありませんが、『こんなことをするとこんな罰を受け、これだけ大変なことになる』という事例があることで、抑止効果につながるでしょう。

 最近はネット社会となり『悪名は無名に勝る』『バズったもん勝ち』という風潮もあります。スシローで迷惑行為を行った人にも『目立ちたい』『バズりたい』という気持ちがあったと思われますが、やっていいことといけないことの区別はきちんとつけておく必要があります。許すことも大事ですが、今後のためにも店側には毅然とした対応が求められると思います」(江間氏)

回転寿司という業態が成立しなくなる

 また、外食チェーン関係者はいう。

「こうした迷惑行為が続出すると、レーンを回る商品をお客が選んで取って食べる回転寿司という業態が成立しなくなる。影響がスシローにとどまらず回転寿司業界全体におよぶことになり、業界全体が被る被害は計り知れないし、消費者にとっても回転寿司店に行くという楽しみ、利便性を奪われることになる」

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「たとえ、実際に誰が食べるかはわからないような状況(スプレーした寿司を誰が食べるかはわからない)であったとしても、『エタノール使用の手指消毒剤』は健康に被害を及ぼすことは明らかなので、実際に、誰かがこの寿司を食べて健康被害が発生すれば傷害罪(15年以下の懲役など)が成立する可能性が高いと考えられます。また、商品である寿司を悪質な行為によって食べられなくするという点において、お店を被害者とする威力業務妨害罪(3年以下の懲役など)が成立します」

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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