大手回転寿司チェーン「スシロー」の「まぐろ」をめぐり偽装疑惑が報じられ、スシローは否定コメントを発表したが、その内容に「偽装未遂ではないか」との疑問や、企業体質の問題を指摘する声が出ている。
事の発端は、8月31日付で「デイリー新潮」が配信した記事『スシローの悪質な「マグロ偽装」疑惑 DNA調査を行うと「喧伝されているのとは違うマグロが」』だった。
スシローといえば、テレビ番組などでもネタのマグロには味が濃厚とされるメバチマグロのみを使用していると紹介されていることから、一般の人々の間でもそのような認識が広まっているが、「新潮」によれば、スシローで鉄火巻を食べた客が、メバチマグロより価格が安いキハダマグロではないかと疑問に思い同社に問い合わせたところ、メバチマグロが使用されているとの回答を受領。そこで専門業者に委託してDNA調査を行ったところ、一部店舗でキハダマグロも使われていたため、再度「新潮」がスシローに問い合わせたところ、「鉄火巻」ではキハダマグロも使用されていることが「社内確認の結果、判明した」という回答を得たという。
この報道を受け、スシローは同日に反論コメント発表。最初に客からの問い合わせに対して「鉄火巻」にはメバチマグロのみを使用していると間違った回答をしてしまったと謝罪する一方、
<現在スシローにおいて100円(税抜)※でご提供している「まぐろ」につきましては、メバチマグロを使用しており、キハダマグロは使用しておりません>
<一部テレビ番組におけるご説明の対象商品は、現在100円(税抜)※でご提供している「まぐろ」についてであり、かつ、その100円(税抜き)の「まぐろ」のこだわりとして、“スシローの「まぐろ」はメバチマグロのみを使用”というご説明を番組内でなされております>
と釈明。さらに、報道について
<スシローの販売姿勢の中に、当該記事に記載されているような「悪意」や「悪質」といった意図や、「偽装」といった行為も全くございません。このような記事内容につきましては、この場をお借りして否定させていただきます>
と反論している。
偽装が成立してしまっていた可能性
飲食業界関係者はいう。
「要は、メバチマグロ100%と謳っているのは、あくまで“握り寿司”の『まぐろ』で、マグロの“巻き寿司”である鉄火巻は他の種類のマグロも使ってますよ、ということが言いたいのでしょう。
だが、最初の客からの問い合わせに対して、鉄火巻にはメバチマグロのみを使用していると虚偽の回答しており、もし問い合わせた人がこの客のように自ら改めて調査していなかったら、間違った認識のままでいたことになるし、世間的には、鉄火巻にもメバチマグロのみが使用されているという誤った情報が“事実”ということになっていた可能性もある。つまり偽装が成立してしまっていた可能性があり、偽装未遂ともいえる。これを『悪質ではない』と言い張るスシローの企業としての姿勢は問題だろう。
さらに、スシローは『新潮』の取材に対し、鉄火巻では『70%がキハダマグロ、30%がメバチマグロ』と回答しているが、今回発表されたコメントでは『キハダマグロやメバチマグロ、商品によってはインドマグロ、本マグロ』も使用されているとなっており、再び内容が食い違っている。『新潮』への回答内の『社内確認の結果、判明しました』という表現にも違和感があり、一連のスシローの対応からは、マグロを使うメニュー全体でメバチマグロ以外も使用しているという事実を知られたくないという姿勢が垣間見える」
業績悪化の背景
スシローをめぐっては最近、不祥事が続いていた。
スシローは昨年9~12月に「新物!濃厚うに包み」「冬の味覚!豪華かにづくし」といった広告をテレビなどに流してキャンペーンを展開していたが、実際には販売期間中に早期に完売して販売できなかったり、在庫不足を懸念して販売を一時停止していたにもかかわらず、広告は出し続けていたことが発覚。今年6月に景品表示法違反(おとり広告)で消費者庁から措置命令を受けた。
続けて7月には、同月13日から始まる予定だった「何杯飲んでもビール半額」のキャンペーンにおいて、キャンペーン開始時期が明示されていないポスターを、一部店舗でキャンペーン開始前から掲載し、ビールが半額になると勘違いした客との間でトラブルが発生する事例が起き、スシローは公式HP上で謝罪、返金対応をすると発表。一連の不祥事が客離れを招き、スシローの運営会社FOOD&LIFE COMPANIESの22年9月期連結純利益が前期比77%減の見通しになるなど、業績面にも影を落としつつある。
「不祥事の連発と業績悪化に、さらに偽装が重なれば、経営的に大打撃を受けるため、なんとしても否定する必要あった一方で、せっかくテレビなどを通じて築いた“スシローのマグロはメバチマグロ”というイメージが崩したくなかったというのが本音ではないか。
ただ、そもそも飲食チェーンが食材に関する客からの問い合わせに間違った回答をするというのは、あってはならないこと。もしそれがアレルギーなどに関するものだったら、客の健康にかかわる問題になる。また、週刊誌への回答と釈明コメントの内容も微妙にずれていたりと、会社としてのガバナンスに大きな問題を抱えているという懸念がぬぐえない」(前出と別の飲食業界関係者)