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スシロー・魚べい、店舗を訪問してわかった絶好調の秘密…止まらない「進化」

写真・文=重盛高雄/フードアナリスト
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スシロー

 日本フードサービス協会が発表した「外食産業市場動向調査11月度」(2021年)は、「営業制限がとれ概ね穏やかな回復基調の一か月」としており、久しぶりに明るいトーンとなった。約1年ぶりに営業時間や酒類提供に関する各種制限が撤廃され、通常モードによる営業が再開したためだ。

 一方、総務省統計局の「家計調査11月分」によれば、消費支出(二人以上の世帯)は前年同月比実質1.3%の減少で、実質増減率に寄与した減少項目には電気代、野菜海藻、魚介類に次いで外食とある。外食の実質寄与度は▲0.14で、主な品目は寿司(▲0.08)と洋食(▲0.05)となっている。

 家計調査の項目を順に追っていくと、面白いことが見えてくる。二人以上の世帯は勤労者世帯と無職世帯の2つの分類に分けられている。外食のうち一般外食の数値は勤労者世帯が1万3594円(▲5.9)であるのに対し、無職世帯は金額こそ7271円と低いが9.3%のプラスになっている。実収入は大きな開きはあるものの、食料に関する支出は勤労者世帯8万56円、無職世帯7万3954円とさほど差はない。

 また、日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査12月度」は「営業制限解除後も夜の需要戻らず、市場の勢いを取り戻せていない」としている。パブ・居酒屋業態が大きく数値を落としているゆえに全体が伸び悩んでいるように見える。しかし、ファストフード(FF)業態の売上高は前年同月比104.9%、ファミリーレストラン(FR)業態は同112.9%であり、コロナ禍でいっそう強化したテイクアウトやデリバリーなどのツールを駆使して実績を底支えしている。

 店内飲食・家族連れがメインであったFR業態も売上高前年同月比だけを見ると、昨年4、5月以外は100%を下回り苦戦を強いられてきた。すかいらーくグループIRレポートによると、4、5月を除いて売上高は前年を大幅に下回っている。10月から12月にかけてリモデルを実施したこともあり、マイナス幅はひとケタで留まっているが、21年累計では▲8.2%で、売上高は19年比で▲28.6%となっている。

家族連れの受け皿になった寿司店

 では、家族連れはどこに行ったのか。受け皿として候補にあがったのは寿司ではないだろうか。寿司業態においては「スシロー」が好調を博している。スシロー全店の売上高は前年同月対比で21年10月以降、100%を超え推移している。21年9月期においても全店売上高通期計は110.6%であった。コロナ禍においても感染予防と併せて積極的な戦略を展開したことが奏功した結果といえる。

 過日リサーチで訪問した学芸大学駅界隈に、寿司店が多く立地していた。21年12月にスシロー To Goが新規開店。斜め前に持ち帰りちよだ鮨、駅前に21年8月開店した魚べいなどが50メートル以内に立地している。ほかに個人営業の店舗も多く、食べログで同エリアの寿司店を検索すると21店舗が表示される。後発のスシロー To Goは保冷ケースを2台並べており、品揃えで勝負をかけているという印象を受ける。目の前に寿司がいっぱい並んでいる光景は、ワクワクした気持ちをそそられる。

魚べい、感染予防へのこだわり

 寿司業態ではスシローが一歩抜きんでた存在だが、魚べいも知られる存在である。元気寿司グループの3ブランドのひとつで、従来は郊外型店舗が多かったが、コロナ禍に伴う飲食店の休廃業により進出エリアを拡大している。消費者からすれば、利便性の良い立地に値ごろ感のある飲食店が営業するのは喜ばしいことである。

 元気寿司は1968年に宇都宮で創業。筆者が元気寿司の名前を知ったのは10年ほど前、日野にある有料老人ホームの管理者を務めていた時に、出張販売の相談を快く引き受けてくれた会社だからだ。元気寿司の担当者は、自衛隊や宇都宮の病院、高齢者施設などに出張した経験があり「お任せください」と快い返事をいただいた。もちろん衛生上の理由で厨房設備は使用しないという約束を交わしている。

 この日ばかりは外出できない利用者も含め、ほぼ全員で寿司ランチを楽しんでいただいた。寿司げたやロゴ入り湯呑も持参していただき、のぼりも立てて本格的な雰囲気のなかで握り寿司を楽しむことができた。今では同じようなことは叶わないかもしれないが、施設利用者の想いに応えてくれたことは今でも忘れることができない。

 そんな元気寿司チェーンの魚べいが学芸大学駅前に開店した。「回転しない回転すし」という看板が目印だ。日曜日に訪問したせいか、テーブル席には子供連れの姿が多く見られた。コロナ禍での開店ということもあり、パーテーションの設置など感染対策はしっかりと行われている。

 感染予防へのこだわりは「がり(しょうが)」にも表れる。タッチパネルで注文し、自分用の「がり」が(量は多くないが)皿に乗ってレーンで運ばれる。レーンは2段構成で上段が新幹線に乗り複数皿運べる仕様、下段は皿がレーンで運ばれる仕様となっている。自分の席でレーンが停止するため、子供も失敗せず手に取ることが可能なスタイルだ。これも客層に優しい着想と感じられる。

 病院や施設訪問などの経験が蓄積されているからこそ、社会的弱者の目線が店舗運営にも活かされているのだろう。元気寿司チェーンの売り上げ推移速報を見ると全店売上高は21年10月以降、前年同月比100%を超えて推移し、直近である22年1月は131.8%を達成している。

寿司業界を牽引するスシロー

 スシローもコロナ禍対応を進化させていた。1月中旬、スシロー有楽町店を訪問したところ、非接触がさらに進んでいた。従前は会計時にスタッフ呼び出しボタンを押し、皿を数え会計の確認を行っていた。この工程が省略され、自分で画面表示と皿の枚数を照合することにより会計確認が完結するように改修されていた。定期的なフェアメニューの実施やアプリの活用など、まだまだ進化は止まらない印象を受ける。

 また、この来店時はフェアメニューである「京都伊根生本鮪6貫盛り」をオーダーしたところ、店内アナウンスにより「ご注文いただきました」と御礼コールが流された。フェアメニューの存在を告知することと併せて、お客様へのお礼の気持ちを込めコールしているのだろう。大皿に盛られた6貫盛りは、店舗スタッフがテーブルに運んでくれる。ほどなくして別の御礼コールが流れた。恐らく先のコールを聞いて注文されたお客様がいたのだろう。一度も冷凍していないマグロをお試しください、と記載があり期待感も上がる。

 フェアメニューという期間限定の仕掛けに加えて、商品の付加価値を切り口として提案しているスシローの戦略は、消費者に驚きと感動を与えてくれる。価格競争に陥りがちな外食各社にあって寿司業態が好調なのは、スシローの戦略が同業他社を牽引しているからだという印象を受ける。

 明るい兆しが見えつつ22年を迎えたものの、1月には全国各地でまん延防止等重点措置が適用された。時短営業などによる販売機会の減少は、消費の滞りに直結する。前述の家計調査を見ても、消費活動が機能してこそ経済が回っていると実感できる証左ではないだろうか。

生き残る外食産業

 20年12月に筆者が日本フードアナリスト協会において「コロナ禍と生き残る外食産業」と題して行った特別講演のなかで、外食業界の生き残りの切り口として「揚げもの」「焼き肉」そして「寿司」の3業態を挙げた。手間がかかる、片付けが大変である、室内が煙くなるなど家庭における再現性の低い食べ物ゆえ、外食、中食に最適であるという理由だ。業態的には好調であるが、各社の動向をみると好不調の差は大きい。

 まだまだコロナ禍が続くなかで、外食産業のなかでも最高益が見込まれる企業も多くみられる。例えば日本マクドナルドは絶好調だ。「食欲」はいくつかある「欲」のなかで一番身近であり、かつ需要喚起しやすい欲のひとつではないだろうか。外食、中食問わず食べ物にはワクワクやドキドキが欲しいと思う消費者は少なくないだろう。筆者は、コロナ禍にかかわらず創意工夫し消費者に選ばれる価値を創出するために努力を重ねる飲食店を引き続き応援していきたい。

(写真・文=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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