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食べログ敗訴の衝撃、特定の店を意図的に評点下げ…訴訟多発で巨額賠償金負担の懸念も

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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食べログのサイトより

 グルメサイト「食べログ」がチェーン店の評点が下がるようアルゴリズムを変更していた問題で、焼き肉チェーン「Kollabo」の運営会社・韓流村が食べログ運営元・カカクコムに起こしていた裁判。東京地裁は昨年6月、食べログによる独占禁止法違反を認め、カカクコムに3840万円の賠償を命じていたが、今年1月には判決の一部詳細が明らかとなり、食べログによる評点操作の実態がクローズアップされている。また、先月27日付「文春オンライン」記事によれば、食べログ側が、他のチェーンからも同様の訴訟を起こされることを回避するためにサイトの仕様を変更した可能性もあるといい、にわかに騒がしくなりつつある――。

 2019年に行われた食べログのアルゴリズム変更により、KollaBoの21店舗中19店舗で評点が下がり、食べログ経由の月間来客数が変更前と比較し平均6000人減少し、月間売上は約2500万円減ったというのが韓流村の主張だ。国内で最大の利用者数を持つ食べログが、チェーン店の評点が一律で下がるようアルゴリズムを変更することは、独占禁止法が禁止する「優越的地位の乱用」に当たるとして、損害賠償を求めて提訴していた。

 東京地裁は「飲食店の地位を継続することが困難になると、経営上大きな支障を来す。食べログが著しく不利益な要請を行っても、受け入れざるを得ない状況にある」として、食べログのアルゴリズム変更は「優越的な地位の乱用」にあたると認定。一方、韓流村が求めていた変更後のアルゴリズムの使用差し止めは認めなかった。

 1月に公開された判決(一部)によれば、ファミリーレストランは除外されるなど、すべてのチェーン店が評点下げの対象になったわけではない。また、前出の「文春オンライン」記事によれば、食べログ上の各店舗を紹介するページの店舗名の横に表示されていた「関連店舗」というボタンが2月に表示されなくなったが、このボタンはサイト上の「飲食チェーン一覧」に遷移するつくりになっており、一律評点下げの対象になったチェーン店はこの「飲食チェーン一覧」に掲載されているため、食べログ側は『どのチェーン店が評点下げの対象になったのか』がすぐには分からないようにしたのではないかという。

「食べログ側はアルゴリズム変更の理由について『認知度の調整』と説明しており、要はチェーン店は知名度が高いので個人営業の店などとの間で必然的に生じる知名度の差を埋めるため、チェーン店側の評点を一律で下げたというロジックだが、だとすればなぜファミレスが除外されているのかという疑問が残る。一方、食べログが、広告料を払う契約をしてくれない大手チェーンの評点を下げることで広告契約につなげようとしているという見方もあるが、公には『評価の公平性』を強く謳う食べログがそこまで露骨に詐欺まがいのことをするのかというのも疑問。結局、食べログ側がどういう意図で特定の店に絞って評点を下げるという、ある意味でリスキーなことをしていたのか、よくわからない。

 もっとも、今回の判決は食べログにとってはかなりインパクトが大きいだろう。4000万円近い賠償金支払いの判例ができれば、評点下げの対象になっている他のチェーンがこぞって食べログ側に訴訟を起こす事態も想定され、そうなればカカクコムが訴訟費用や賠償金の支払い面、訴訟対応の労力面で膨大な負担を強いられることになる。それゆえにカカクコムは即時に控訴したのだろうが、『食べログ憎し』の風潮は飲食業界に想像以上に強いので、これを機に食べログ潰しの動きが出てきてもおかしくはない」(外食業界関係者)

 自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に解説してもらう。

転機になった有料オプション開始

 食べログが特定の業態や店舗の評価が下がるようにアルゴリズムを設定しているという話は、以前から飲食業界のなかではいわれてきました。ただし、食べログに対して、あまり好意的でない飲食店のほうが多いので、「クレームを書きたがる素人さんやライバル店による書き込みをベースに不当な評価をしているのでは?」「お金を払って有料会員になれば点数が上がるのでは?」(=お金を払っていない店の評価は低くなる)といった感情的・憶測的なものが中心でした。

 私は食べログ初期の頃からその実態や、飲食店側の食べログ活用方法を調査研究してきましたが、食べログ側は商売の根幹となる点数付けをかなり慎重に行っていますし、改善もしてきたように思います。一例として、初期の頃は書き込みが数件しかなくても3.8くらいの点数がついていて、なぜそんなに高評価になるのか疑問を感じることもありましたが、最近はある程度の書き込み件数がないと高評価にならないようになっています。また、書き込みする人の、過去の他店への書き込み件数が少ない場合やフォロワーが少ない場合は評価に含めない、つまりあまり考慮しないことにより、ライバル店や単なるクレーマー、自店のスタッフなどによる書き込みの影響力を無効化したり、お金をもらって書き込みをしているグループを見つけると、その人たちの書き込みを無効化するといった巡回パトロールも行ってきました。これらによって、ある日突然、飲食店の評価点数が下がることもあります。

 そうはいっても、長年見ていると「グレーだな」と思うこともありました。評価基準が公表されていないアリゴリズムですので、今回のように特定のチェーン店の評価を「食べログの意思」で下がるような操作もできてしまいます。食べログからすると、手間暇かけている個人店や高級店を上位にしたかったのかもしれませんし、多くの人が利用するチェーン店や安いお店が手軽さや安いことを理由に評価が上がって上位にくることは、食べログの本意ではなかったのかもしれません。ただし、その場合は「食べた人・書き込み者・一般の人が決めた点数」ではなく、「これらの人々の評価を加味しながら食べログが決めた点数」となるでしょう。

 そして過去、一番グレーだなと思ったのが、食べログの有料オプションができたときです。当時、多くの店舗に「有料オプションをつけませんか? 有料になると食べログに広告打てますし、店舗の情報をより詳しく公開することができます」と営業担当者が回ってきました。有料オプションをつけたからといって店舗の点数が上がるわけではないということでしたが、成績を上げたい営業担当者や言葉足らずの営業担当者のせいで「お金で点数が上がる」と思い込んだ飲食店もありました。

 ちなみに営業担当者たちからは興味深い話を聞けました。「点数が低いお店に行くと怒られるんですよ。『お前のところのせいで客が来ないじゃないか! そんなところに金は払わない!』と帰されてしまう。逆に点数高いところに行くと、『食べログさん、ありがとう! あなたたちのおかげでお客さんがいっぱい来ています。だから有料版をやらなくても大丈夫です』と帰されてしまう」。このような話を聞くようになったあと、食べログの点数の幅が「無難」になってきた気がしました。点数が3.50付近に寄っているお店が増え、どんぐりの背比べ状態をつくり出すことによって『有料オプションを使って目立たせませんか』と言いやすくしているのではと疑うようにもなりました。こうした疑いも、食べログの評価基準(アリゴリズム)がブラックボックスがゆえに生まれるのだと思います。

 そう考えると、チェーン店は小さな個人店に比べて広告費を持っていることが多いので、点数をある程度のところで頭打ちにさせて『広告で目立たせませんか』と営業しやすいようにしているのではと勘繰られてもおかしくありません。

飲食店側に認められない「掲載されない権利」

 そうはいっても食べログによる点数や広告の効果は絶大です。今回のチェーン店もその効果が大きすぎるがゆえに訴訟を起こしています。ですので、飲食店は日ごろから食べログの有料オプションを活用したり、最近主流のネット予約サービスを活用したりしています。書き込みについては、飲食店側からすると、自分たちのことをネット上でけなされたりすることは気持ちいいものではありませんが、どうすることもできないので静観しています。ですが、目に余る書き込みについては食べログに通報、相談しています。昔に比べると食べログのほうも、書き込みの取り下げ・差し戻しなど柔軟な対応をしていると思います。半面、書き込んだ側の反感を買ったりもしていますが。

 また、飲食店側が「うちは載せてほしくない」となった場合、掲載を辞退する権利が飲食店側にあってもいいのになと個人的には思います。実際に「うちの店は食べログに掲載しないでくれ」と食べログに訴訟を起こしたお店もありますが、裁判では負けてしまい、掲載を取り下げてくれない状況です。この「強制的に掲載され、強制的に評価されてしまう」というのが、飲食店側からすれば問題なのでしょう。

 しかし、そうであるなら飲食店の原点に返って「目の前のお客さんに楽しんでもらう」ことに専念するしかないと思います。お客さんを楽しませるということは、美味しい料理やお酒、サービス、雰囲気トータルのものです。目の前のお客さんが食べログで書き込みをしている人かどうかは分かりませんので、まさに一人ひとりが勝負です。「たまたま」失敗した料理が出てしまった、「たまたま」待たせてしまったといっても、お客さんにとっては、その目の前の料理がすべてです。一定のスピードで一定のレベルの料理を出し続けることができるのがプロ。食べログのことは意識しすぎず、原点に立ち返る姿勢と行動が、食べログの点数が上がる結果になるのだと思います。

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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