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「宅配便の箱はトイレの床並みの汚さ」は本当?リビングやテーブルに置くなどNG?

取材・文=A4studio、坂田良平/物流ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 昨年10月、ヤマト運輸と思われる配送業者の元配達員を名乗る投稿主がネット掲示板に立てたスレッドがネット上で話題になった。この投稿主は宅配業者が配送している荷物の汚さについて言及しており、いわく「荷物は想像の倍汚い」とのこと。その汚さの度合いというのは、あくまで投稿主の所感ではあるが「便所の床に相当する」そうだ。配達員から荷物を受け取った後、箱をリビングに持ち運んだり、テーブルの上に置いたりする方もいるだろうが、投稿主からすると、玄関でそのまま開封するか、比較的きれいとされる伝票側を床にするほうがいいという。

 この指摘を受けて、「前々から思っていた」「薄い荷物だと靴の跡が付くこともある」といった反応が続出。ほかにも投稿主は、「トラックは50km制限を課せられているからスピードを出せない」「ヤマト支店への荷物の持ち込みだと手数料割引となる」などと元配達員ならではの興味深い豆知識を投稿。ちなみにヤマト運輸では「持込割」といい、荷物を営業所や取扱店などへ持ち込んだ場合、荷物1個につき100円引きされるので宅配を頻繁に利用する方は要チェックである。

 では実際に宅配業者が運ぶ荷物の衛生面はどうなっているのだろうか。今回は元トラックドライバーで物流ジャーナリストの坂田良平氏に話を聞いた。

日本の荷物の衛生面は世界トップクラス

「日本の宅配業界は、世界的に見ても荷物の取り扱いが非常に丁寧で衛生的です。宅配業界のみならず日本の産業界では、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を徹底しています。その基準は世界トップクラスでして、海外の視察が来たときも日本の工場、倉庫はきれいだと称賛されることは珍しくはありません」(坂田氏)

 ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社で国内市場の95%近く(※航空貨物を除く)を占めているといわれる日本の宅配業界だが、宅配物配送の流れはどのようになっているのだろうか。

「一般的に宅配で運ばれる荷物は、コンビニや営業所で受付し、地域別に仕分けされた後にトラック、軽貨物車に積まれ、全国各地に届けるためのターミナルという規模の大きい仕分け施設に届けられます。ヤマト運輸では『ベース』、佐川急便では『ハブセンター』と呼ばれていますね。ここでベルトコンベアによって荷物を仕分けし、再度地域ごとに編成後、全国各地の営業所まで届けられ、トラックで配達します」(同)

 この一連の工程を踏まえたうえで、肝心の衛生面がどうなっているのかを改めて聞いた。

「基本的にトラックの荷台には、土足で上がって荷物の積み下ろしをします。しかし、それで荷物が汚れることはめったにありません。実際問題として、荷物は地べた、床に直接置くと作業がしづらく、身体への負荷もかかってしまうからです。ですから、荷物が汚れてしまう確率は低いですし、汚れるとしても極端に汚くなることは考えづらいです。

 また、コンテナにも土足で踏み入るとはいえ、私が知る限り定期的にコンテナを掃除し、できるだけ清潔に保つ配達員の方が多いです。あまりにもコンテナ内が不衛生だと汚れが荷物に付き、それでクレームが発生してしまうことも考えられますよね。会社としても、配達員個人としてもクレームは避けたいところなので、できるだけきれいにしようという心掛けは徹底しているはず。これも私が知る範囲の話ではありますが、宅配業界の現場の方々の努力を見てきましたので、宅配便の箱の多くがスレッドで言われているような汚さだとは思えません」(同)

しかし荷物が汚いケースもゼロではない

 坂田氏の見聞きした範囲では不衛生な扱いを受ける荷物はほとんどないとのこと。よく宅配サービスを利用する方々は、ほっと胸を撫でおろしたことだろう。

「ただ一部の配達員のなかには、コンテナ内を清掃しなかったり、荷物を運ぶのが下手で汚してしまう人もいるでしょうから、荷物が不衛生な状態になっている可能性も否定はできません。そういった配達員は少数だと思うので確率は低いですが、スレッドで言われていたように汚れているケースがゼロだと断言することもできません」(同)

 また、配達員に落ち度はなくとも、まれに荷物が汚いまま届けられてしまう可能性もあるのだという。

「もっとも考えられるのは、営業所に届けられた段階で荷物が汚かった場合。通常、極端に汚れた荷物は営業所側が受け取りを拒否することも多いです。というのも、営業所のベルトコンベアの表面に汚れやほこりが蓄積されてしまうと、機械の故障につながってしまいかねませんから、基本的にはあきらかに汚れている荷物は受け入れないようにしているんです。ですが、なかには営業所の判断で集荷されてしまう可能性もあるので、結果汚れた荷物が届くこともゼロではありません。たとえば、泥を被った野菜の段ボールや倉庫の片隅で保管されていた部品・部材系の荷物は、そういうケースもありますね。

 それと、業界全体の再配達の数を減らすために国がコンビニでの荷物受け取りを推奨していますが、荷物を保管できるスペースが限られているコンビニでは床に直置きすることもあるでしょう。お店の床が清潔でなければ、当然荷物も汚れてしまう可能性はあります」(同)

配達員の努力と苦労を知ってもらいたい

 衛生面に気を付けている営業所や配達員が大半だというのを踏まえたうえで、配達員の苦労を慮ってほしいという。

「1人の配達員が1日で担当する荷物の量は、おおよそ160~200個ほどといわれています。仮に160個だったとしても、8時間勤務として考えると1時間に20個配達しなくてはいけないわけです。3分に1個ペースで届けるという過酷なタイムスケジュールで働いており、配達員はまさに体力と時間との勝負。そのうえで衛生面にも気を配っている配達員が多いということですから、一般の方々も彼らの努力を少しでも知ってもらえれば幸いですね」(同)

 最後に坂田氏はお得にヤマト運輸を利用する方法について教えてくれた。

「会員サービスである『クロネコメンバーズ』を使えば、年会費無料で荷物の受け取り情報がスマホに届いたり、送り状もデータ上に保存できたりするなど、さまざまなサービスを利用できるのでお得です。あとは自宅ポストに直接投函してくれる『ネコポス』も対面接触の必要がなくなるのでジワジワと人気が出てきていますね。頻繁に利用する方は、ぜひ検討してみてください」(同)

(取材・文=A4studio、坂田良平/物流ジャーナリスト)

坂田良平/物流ジャーナリスト、Pavism代表:取材協力

坂田良平/物流ジャーナリスト、Pavism代表:取材協力

「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、ライティングや、ITを活用した営業支援などを行っている。物流ジャーナリストとしては、連載『日本の物流現場から』(ビジネス+IT)他、物流メディア、企業オウンドメディアなど多方面で執筆を続けている。
Pavism

Twitter:@Pavism_jp

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