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授業料500万円、突然閉鎖の港区スクールの実態…インターナショナルスクールの盲点

文=Business Journal編集部、協力=いとうゆりこ/お受験コンシェルジュ・戦略プランナー
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インターナショナルスクール・Aの創設者、リナ・ローズ氏(「Wikipedia」より/Yuma Yoshitsugu

 東京・港区の高額インターナショナルスクール・A(編注:イニシャルではない)が突然閉鎖。主に0~6歳の児童が約100名通っていたとみられ、なかには年額約500万円もの授業料などを納めていた保護者もいるという。5月30日放送の情報番組『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)によれば、家賃の滞納が原因でスクール側と建物オーナー側が裁判で争い、スクールが2017年11月までに立ち退く旨で和解が成立したが、スクール側はこれを守らず、今年3月に明け渡し強制執行が完了。スクール側は強制執行が決まった後も保護者にその事実を説明せず、授業料を振り込ませていたという。『グッド!モーニング』の取材に対しスクール創立者であるリナ・ローズ氏は「こちらは本当に何も悪いことをやっていない」と語っている。

 Aは、世界外交教育の提供を謳い、1年間で130カ国以上の国の歴史や文化を実際に体験しながら学ぶというカリキュラムがメイン。英語・フランス語・スペイン語が必修で、生徒は「外交官」、先生は「大使」と呼び、オリジナルの世界外交プログラムに沿って学んでいくのが特徴だ。

 ユニークなカリキュラムだけに、費用も高額だ。スクールとクラブがセットになったコースの授業料は年間約400万円。さらにオプションとして、オーガニックの昼食や夕食がそれぞれ約20万円、自然環境での学びを提供するカリキュラムとみられるものが約50万円で用意されており、それらを合計すると500万円近くになる。

 特徴的なのはグッズビジネスにも注力している点だ。スクールのサイト上ではオリジナルグッズとして、2万円以上する「ぬいぐるみ」やスクールバッグ、1万円の鉛筆セットなどが販売されているのだ。受験塾関係者はいう。

「Aは自治体や学校法人などの運営ではなく、企業が運営している形態の無認可校であるとみられ、法律の縛りを受けずに独自の教育を行っているのだろう。こうしたスクールでは国の指導などに縛られないユニークな理念やカリキュラムに則った教育を受けられる半面、国や自治体の管理・監視が行き届きにくいため、問題がない施設がどうかを利用者自ら入念に調べてから子どもを通わせる必要がある。ただ、まさか保育施設でもあるスクールが建物のオーナーから立ち退きを迫られているとは誰も考えないだろうから、そうした事実を隠して高額の授業料を要求していたというのは、かなり悪質。

 また、いくら経営の自由度が高いインターナショナルスクールといえども、大々的にサイト上で高額なオリジナルグッズを販売しているという例は聞いたことがない。乳幼児向けの保育・教育事業にしてはビジネス色が強すぎるという印象」

富裕層を中心に人気が高まるプレスクール

 別の受験塾関係者はいう。

「Aのように、義務教育課程に上がる前の児童を対象に日常会話で英語を使って保育するプレスクールは増えており、富裕層を中心に人気が高まっている。こうしたスクールは外国人が子どもと接することでネイティブの英語を身に付けられるという点を大きくPRするが、認可・認証保育園とは異なり、認可外なので自治体などによる監視が行き届かなくなりがちだという点は注意すべき。

 また、もし将来的に公立小学校に通わせる予定なら、プレスクール卒業後に、いわゆる普通の保育園・幼稚園に通っていた子どもたちばかりの環境にいきなり入れられることになり、文化の違いから慣れるのに苦労する可能性もある。なので、華やかな宣伝文句につられて安易に通わせるのは禁物だろう。小学校から先の大学まで、子どもをどのような学校に通わせてどのような教育を受けさせるのか、しっかりと長い目でみたビジョンをまず立てるべきだろう」

 プレスクールやインターナショナルスクールに入学する上での注意点について、お受験コンシェルジュ・戦略プランナー、いとうゆりこ氏はいう。

「プレスクールは、保育園入園の基準を満たさない専業主婦世帯などに近年人気で、0歳から受け入れてくれるため、比較的高収入の親御さんが、幼稚園入園が可能となる4歳になるまで預けるといったケースがみられます。首都圏では、ジャックのベビークラス、キンダーガーデンクラスやキッズガーデンのプレップスクール、波多野ファミリースクールなどが人気ですが、これらに英語教育をプラスしたいと考える保護者が選ぶのが、インターナショナルスクール型のプレスクールとなります。生徒も在留外国人がメインのスクールとなると、一般日本人に対する入園の間口は狭くなりますので、それらを模したインターナショナル教育を謳ったスクールが乱立しているのが現状です。もちろん、しっかりとカリキュラムを組まれているスクールもありますので、入念に情報を収集してお選びください。

 また、3~5歳くらいから入学するのが一般的なインターナショナルスクールは、基本的にはアメリカなど外国籍の親の子どもを対象としており、日本人が子どもを入学させるためには、在校生や卒業生からの推薦状に加えて、両親の英語力はマストとなります。外資系企業への勤務や、自営業の方が外国人を雇用したり、海外支店を展開して納税しているということで入学資格を得たというケースもあるようです。

 有名どころとしては、西町インターナショナルスクールやアメリカンスクール・イン・ジャパン、聖心インターナショナルスクール、セントメリーズ・インターナショナルスクールなどがあげられます。このほか、カナディアン・インターナショナルスクール、ブリティッシュ・スクール・イン・東京なども人気です。

 インターナショナルスクールを選ぶ際の注意点は、認定校であるかどうかという点です。インターナショナルスクールは日本の義務教育課程ではないため、卒業しても義務教育課程を修了したとみなされず、途中から公立の中学校や高校に入学することが難しくなり、大学進学でも制約が出てきますが、一部の認定校であるインターを卒業していれば帰国子女枠を設けている大学の入学資格を得ることができます。また、費用は年間300万〜500万円が平均的なので、経済的な面も検討すべきでしょう。

 今回問題となっているAは、位置づけとしては幼児教室や無認可の保育園といったところではないでしょうか」

 当サイトは2015年11月7日付記事『インターナショナルスクールに入ってはいけない?中途半端、卒業後の人生で苦労』でインターナショナルスクールの実態に迫っていたが、以下に再掲載する。

――以下、再掲載――

 インターナショナルスクール(以下、インター)と聞くと、「芸能人や富裕層が自身の子供を通わせるところ」といったセレブなイメージを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。

 そもそもインターとは、日本だけでなく世界中に存在しており、基本的には所在地における外国人の児童・生徒を対象に、英語による授業が行われる幼稚園から高校相当までの各教育機関のことを指す。日本においてもその前提は変わらないが、スクールごとに入学条件や優先順位はあるものの、日本国籍の人でも入学は認められている。

 子供を小学校から高校までインターに通わせた場合、数千万円の学費がかかる場合もあるといわれており、なかなか一般世帯には手が届かない存在であるといえよう。

 では、なぜそんな高い学費を払ってまで子供をインターへ通わせるのだろうか。その大きな理由として挙げられるのが、「子供のうちから英語力や国際感覚を養うため」というものだ。

 しかし、現実には一筋縄ではいかない現実があるようだ。日本のインターを卒業したAさんは、その実態をこう明かす。

「私はインター卒業後、運良くある大学のインター出身者対象の募集枠で進学することができましたが、インターの中には卒業しても日本の大学受験資格が得られないところは多いです。血を吐くつもりで一生懸命勉強して、かつ超高額な留学費用を払って海外の大学に行くのであれば問題はありませんが、そのためには莫大な経済力も必要です。そこまでの覚悟がない家庭の子供にとっては、インター卒業の経歴は足かせにしかなりません」

「帰国子女枠」を設けていても、国内にあるインター出身者を対象としない日本の大学は多い。つまり、日本人がこれらの学校を卒業しても、一般受験で日本の大学に通おうとするならば、大検を取得した上で、大学受験に臨まなくてならない。また、当然ながらインターの授業カリキュラムは日本の義務教育課程や一般的な学校のそれとはかけ離れているため、そういった点も大学を受験する上ではデメリットとなってくる。

「日本のインターでは、生徒の半分以上は日本人というケースもざらです。そのため、授業は英語で行われますが、友達との日常会話は日本語。先生たちは『英語を話すように』と注意しますが、結果として授業の時以外は日本語での会話が常態化してしまっているのが実情です」(同)

日本語も英語も中途半端?

 2008年のリーマン・ショックの影響もあって、日本で生活する経済的に恵まれた外国人家庭は減少傾向だという。そのあおりを受けて、インターによっては経営事情から日本人生徒の門戸を広げたため、このように日本人ばかりの環境になってしまうこともあるようだ。別のインター卒業生・Bさんは語る。

「そういった環境で育つとどういう生徒ができあがるかといえば、“日本語も英語も中途半端な人間”です。本当のバイリンガルというのは、自分の年齢に応じた思考をそれぞれの言語でアウトプットできることだと思います。その意味では、インターに通うことで国際感覚が育つなど幻想にすぎません。あくまで私の感覚ですが、子供をインターに通わせる親の中には国際感覚を履き違えている人も多い。中途半端な環境で学んでも『日本語力と英語力を足しても“1”にならないレベルの語学力』となってしまう可能性は高いです」

 それでは、高い学費を払ってインターに通わせることは無駄なのだろうか。

「もちろん最初からアメリカの大学に進学させることを視野に入れていたり、日本の学校のカリキュラムに対し具体的な問題意識を持っている親なら大丈夫なのかもしれません。最悪なのは、ファッション感覚で通わせるパターンです。当たり前すぎる話ですが、日本人の大部分は一般の小中学校で同じ義務教育課程を経て、一般の高校を卒業しています。その意味では、日本でインター出身者は特殊ともいえます。私の周囲のインター卒業生でも、大学進学後や社会に出た後に言語面、文化面で苦労したり、環境に適応できずに悩んでいる人は多いです。はっきり言って、私はインターに通ったことを後悔しているし、自分の子供を絶対にインターに通わせたくはありません」(同)

 もちろん、今回紹介した意見は、あくまで一部のインター出身者のものであり、インターに通うことで大きなメリットを得たと感じている人もいるだろう。しかし、以上のような体験談も実際に存在するという事実は、子供をインターに進学させることを検討している人は考慮したほうがよさそうだ。

(取材/文=A4studio)

いとうゆりこ/お受験コンシェルジュ・戦略プランナー:取材協力

いとうゆりこ/お受験コンシェルジュ・戦略プランナー:取材協力

お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。
いとうゆりこ お受験情報サイト

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