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子どもが「任天堂とかゲーム会社に入りたい」→採用は東大など高偏差値大学ばかり

文=A4studio、協力=常見陽平/千葉商科大学准教授
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任天堂のHPより

 子どもが将来の夢を叶えるためには、やはり高学歴が必要なのだろうか。少し前、あるTwitterユーザーのつぶやきが話題を集めていた。自分の子どもが「任天堂などゲーム会社で働きたい」という夢を口にしたため、任天堂に新卒で採用された大学ランキングを見せる準備をしているというもの。そのランキングの上位には東京大学、京都大学、東京工業大学、同志社大学、大阪大学といった高偏差値の難関大学が並んでいる。このツイートに対して、「大手のゲーム会社に就職したいならとりあえず受験勉強を頑張れ」「現実を早く知ったほうが夢は叶う確率が高い」など、さまざまな意見が寄せられていた。

 やはり、子どもが憧れる会社に入るためには、高偏差値の大学に入らないと難しいのか――。働き方評論家で千葉商科大学准教授の常見陽平氏に聞いた。

若者の志望する業界・企業は多様化している

 まずは今の若者から人気のある業界や企業について聞いていこう。

「一言では言えないほど多様化しています。就職情報会社などが毎年発表している人気企業ランキングでは、媒体ごとにかなり異なった結果となっています。例えば、高偏差値大学の学生が多く登録しているといわれている就活サイト『ワンキャリア』の東大・京大人気企業ランキングでは、上位に外資系のコンサル、ITなどの企業が多くランクインしています。

 一方で、大学の偏差値にかかわらず大多数の就活生が登録する就活サイト『マイナビ』が調査した人気企業ランキングでは、総合商社や金融などの日系の大手企業がランクインしています。これらの状況から、高偏差値大学の就活生に絞った場合と就活生全般で見た場合とで、人気の業界や企業に違いが出てきていることがわかります」(常見氏)

 ワンキャリアが発表している23年卒対象の人気企業ランキングトップ10を見てみると、1位は三井物産、2位は野村総合研究所、3位は三菱商事が名を連ねているが、7位にKPMGコンサルティング、8位にアクセンチュアなど外資系のコンサル企業もランクインしている。

 一方で、マイナビの23年卒対象の文系人気企業ランキングトップ10では、外資系企業が1社もランクインしていない。1位は東京海上日動火災保険、2位はソニーグループ、3位はニトリ、4位は日本生命保険、5位は伊藤忠商事といった昔から人気のある日系企業が並んでいるのが特徴だ。

必ずしも高学歴が有利だというわけではない

 日系か外資系かの違いはあれど、当然ながら人気企業ランキングの上位に名を連ねるのは大企業ばかりだが、大企業に入るにはやはり高偏差値大学が有利なのだろうか。

「高偏差値大学の学生のほうがこれらの企業への内定実績は多いといえますが、一概に絶対的に有利だとも言い切れません。高偏差値大学が有利だという見方には、いわゆる学歴フィルターによって意図的に高偏差値大学の学生に絞って採用したパターンと、学歴フィルターはかけていないが結果として高偏差値大学の採用が多くなったというパターンがあります。

 そして大企業のなかでも、特に金融業界で多いのですが、総合職と一般職で採用基準が違うということがあるのです。総合職では、ある程度大学が絞られている一方で、一般職では広くいろいろな大学から採用している傾向などが見受けられます。大企業に入るためには必ず高偏差値大学でないといけないということはないのです」(同)

 学歴フィルターは以前より薄まったといわれているものの、一部の業界や企業ではいまだに所属大学の偏差値で就活生の足切りをしているという実情もあるのだろう。

「新卒の話に限ると、東洋経済新報社の出している『就職四季報』のデータを見れば、どの業界やどの企業が学校名を重視しているかどうかなどが、見えてくるでしょう。例えば高偏差値大学の採用に偏っている業界や企業がある一方で、多様な大学から広く採用実績のある業界や企業もあります。また、一部の地域で名のある伝統的な大学は、高偏差値ではなくてもその地域の有力企業から採用されやすい傾向にあるといったこともわかります」(同)

憧れの仕事に就くには中長期的プランも重要

 子どもが憧れる職業に就くためには何が重要なのか。

「前提として、志望していた大企業に入れたからといって、その子がやりたい仕事につけるという保証はありません。今回の話だと、受験勉強を頑張って高偏差値大学に受かり、新卒で任天堂に入社できたとしても、希望外の配属だった場合、夢だったゲーム開発には必ずしも携われないことになります。まずは、その子自身がゲーム制作のなかでもプログラミングをしたいのか、ゲームのデザインをしたいのかなど、やりたいことを具体的にするために、親がその職業や業界などの実情を子に教えてあげて、一緒に業界分析をしていくことが大切でしょう。

 また、キャリアの形成という点からすると、最初からやりたいことを明確にして、逆算して新卒入社するというパターンだけではありません。昨今では中途採用に力を入れている企業も多いので、さまざまな業界で経験を積んでから、行きたい企業に中途入社するという方法もあるわけです。自分が行きたい業界や企業に新卒で入ることだけではなく、中長期的な視点で志望する業界・企業へ進む道を探していくことも重要です。今の時代、キャリアの歩み方は本当に多種多様です。その子が頑張れる範囲で、いきいきと働くにはどうしたらいいのか、その都度考えるほうが夢は叶いやすいかもしれません」(同)

(文=A4studio、協力=常見陽平/千葉商科大学准教授)

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)後、株式会社リクルートに入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年より准教授。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。主な著書に『「就活」と日本社会』(NHK出版)や『「意識高い系」という病』などがある。
常見陽平公式サイト

Twitter:@yoheitsunemi

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